第四十六話 愛羅武悠:正親町三条豊子と相婿
第四十六話 愛羅武悠:正親町三条豊子と相婿
今日も姉に会いに、正親町三条の妹姫が我が家にやってきています。まあ、良いけどね。尹子も十一歳だし、豊子も七歳? 姉が恋しい年齢だからね。
歴史の流れ……ちょっと変わったね。俺と花園君とパパ園の関係を考えて、正親町三条の家礼である近衛家の思惑もあるのだろう。
家礼ってのは、関連会社の事業部わけみたいなもんだ。ホールディングス配下の事業会社が近衛で、その下に何十かの公家が関連子会社宜しくぶら下がっている。
俺は、表面的にも実際の政治行動的にも朝廷を利用……敬う気でいる。
――― 俺に楯突く奴は帝に弓引くのと同じだぞ☆ と言いたいがためにな。
そこで、尹子は俺の正室、豊子は後花園帝の女御辺りになり相婿となることで、年若い帝を義兄が補佐するって形にする思惑なわけよ。
勿論、朝廷の事は朝廷に、武家社会の事は征夷大将軍にとすみ分けは当然だけどな。あれだ、関係が良くないと、その隙間に入り込む山犬や赤牛がちょろちょろするからな。
室町の幕末、応仁の乱以降の横領三昧で、朝廷も将軍家も超貧乏になっていたから、醜い争いがあったわけじゃない。足利将軍の手数料分、朝廷は実入りが減るから、「これからは直で☆」となったわけだよね。
今の段階で、室町幕府はそれほど困っていないはず。なんなら、赤松と山名を討伐し、横領された関東の御料を持氏討伐にかこつけて回復させ、ついでに幾つかの氏族を根切すると……あーら不思議、世の中安定したって事になるじゃない。朝廷と将軍で山分けって寸法よ。
――― 山名とか、新田の氏族だから、因縁つけて消してもいいよね?
力こそパワーだからね。先ずは、四職から削っていこうじゃないか。
駆虎呑狼 の計がピッタリ。夷を以て夷を制すともいう。赤松君は袁術、山名君は呂布ってところか。守護代たちに「いまなら将軍が守護に赴任するよ☆ さあ、山名をぶっ殺そう!!」期間は年末までとかキャンペーンをすると、あっという間に討滅できる気もする。
え、勿論、錦の御旗を掲げて「山名の横領した御料を帝の為に回復する」「山名は朝敵」キャンペーンとセットですよ。息子を代理で送り出したい。関東の仕置きをして、赤松処分、その後数年の後、鎮守府将軍帰りの征西大将軍の我が息子が山名討伐に向かいます。神輿は軽い方がいいだろ?
それが終わったら、俺は大御所、息子に表向き譲って隠居する。でも、花園君と息子は何年か後見しないとだろうな。思い切って、九州まで行くかな。秀吉にできて、足利義教にできないわけが無い。だろ?
「くぼう様、きょうもおもちをありがとうございまする」
豊子さん、あなたは帝の女御になるのですから、餅もちと口にしてはいけません。貴人という者は、自分が何を好きか口にする事で、人に容易に懐に入られてはならないのですよ。
「……懐にもちははいりませぬ……?」
比喩だよ!! 人間だって入らないわ!!
「豊子、そうではありませぬ。そなたの顔色を窺い好かれることで、そなたに取り入り、そなたを通して帝や私を操ろうとするものが現れることを恐れているのです」
おう、俺はそこには含まれていないわけだね。確かに、身内の意見ですら聴かない『悪御所』だから。というか、雌鶏が時を告げるは亡国の兆しとかいうじゃんね。家の者が政治に口を出すのは縁故で政治が左右されるって知らしめるようだからだけです。
「できぬと、上様が湯起請をそなたにさせますよ」
「……こわい……ゆきしょうこわい……」
なんか、「悪ぃ子がいねぇがぁ」って現れるナマハゲ扱いされてないか世間の俺。嘘つくと悪御所が湯起請するって……何一つ間違ってないがね。
「豊子様が悪いこと、嘘をつかねばその必要はありませんぞ。それに、悪い子には餅を差し上げません」
「と、とよこは悪い子ではござりませぬ!!」
湯起請よりは餅の方が平和でいいだろ?
その後、パパ園君から「御所で餅が食べられるようにするには如何したら良いだろうか」と真剣に相談されたのは言うまでもない。帝もさすがに、周りの者に「豊子が公方を好いておるのは餅をくれるからだと言っていた」と相談するわけには行かないもんね。
まあ、豊子様が御所に上がる際には、台所の普請をして餅を作りやすい竈や蒸籠を備えるようにするから安心しろと帝に伝えてもらう事にした。泣かずとも、餅くらい幾らでも食べさせてやる。それが、征夷大将軍の仕事……の一つかね。
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