第二十九話 あなたを見つめて:永享二年正月
第二十九話 あなたを見つめて:永享二年正月
赤松満祐は、まあ置いておくとして、他に斯波義淳かーこいつもなー俺と同世代なんだけど、畠山満家が管領職辞めちゃった後、世代交代でこいつに話を持って行ったんだけどさ、何度言っても「お断り」されちゃうんだよね。確かに、一度管領やってるけど、実際は爺さんが仕事してて、お前何もしてねぇだろ名目だけでさ。何「いやー一回やってるんで」だよ馬鹿か。
まあ、歴史的には満家と同じ年に若くしてお亡くなりになるので、体調とか精神とか悪いのかもしれない。でもな、三管領でローテで回してるんだから、お前か細川しかいないんだけど、満家が辞める直前に細川持元が死んでるんだよね。だから、消去法でお前しかいないんだよ!!
細川持之がその後で何年かやって……俺と同じタイミングで暗殺に巻き込まれちゃうんだけどね。ごめんねほんと。え、死んでないよ☆持っちーの息子が勝元君です。 満済さんたちが説得して何とか斯波っちにやらせてるんだけどさ……ほんと頼りないんだよなー 生きる力が足りていない気がする。
「某には荷が重く……」
「正月に相応しい話ではないと思うがな、武衛殿」
「左様、上様に目出度きことが今年が続きましょうぞ。何より、御嫡子がお生まれになる事を我ら一同願っております」
うん、だから、俺に仕事を回さずに、子作りに専念させてくれよ。大体、メンタルに左右されるんだからさ。プレッシャー良くないね。子作り諦めた途端に、長年不妊治療をしていた夫婦が自然妊娠とかあるあるだからね。
どうやら、宗子さんと重子さんは妊娠したようです。ちょっと重子さんは前倒しな気がするね。
山名時熙は最年長であるが、まだ矍鑠としてもの……でもない。ほら、年寄りってイライラしがちじゃない? トッキーも永享五年に二人が亡くなるタイミングで息子の持豊に家督を譲るのだが、この持豊が山名宗全だな。
「上様、京を出歩くのはおやめください」
「金吾殿、正月からそのようなお話は如何かと」
金吾ってのはトッキーの官職の唐名だな。
「構わぬ。将軍が京を守るために目を光らせるのは当然だろう。さて、最近、京の様子が良くなったのは……誰のおかげなのだろうな。答えてみよ」
「……」
へっ、ざまあ。爺どもは義満親父や兄貴担いでパリピしてただけだろうが。南朝を追い落として「俺たちの天下だ」って騒いでたって、九州も関東も同じ穴の狢が湧いて揉めてるだろ? まずは帝のお膝元から襟を正してだな……誰ですか、襟なのか膝なのか分からないとか言ってる人は!
「京が落ち着いておりますのも、上様と番衆の方々のおかげでございましょう。如何でしょうか大膳太夫殿」
もっちー最高! だって、パリピ満祐君の部下が所司代やってたときはほら、なんだかわけわからない状態だったじゃんね。江戸時代のやくざの親分が仕切っている宿場町みたいなドヨンとした空気でさ、死体は転がり放題だし、ガリガリに痩せた死にかけの子供が河原にいっぱいいてさ……どこが京なんだっつーの。
「……畏れ多くも、帝と公方様のお力あってのことでございましょう。我ら地下人ごときには叶わぬことでございましょう」
「確かにな。帝から預かりし将軍の座、責任を持って努める所存じゃ。満祐もこれまで通り(でかまわねぇから、汚れ仕事だけ)よろしく頼むぞ」
「ははっ」
てな感じで、思ってもいないことを言ってみたりする。この面子で、年寄りの中で一番長生きなのこのパグだからな。侮れんよ。
あー 京を退去して播磨で蜂起でもしてくんねぇかな、三年後くらいに。
さて、実は細川持之こともっちーとは結構仲良くやっている。一つは、俺が仕掛けている大和は俺が守護計画に賛同させつつ、丹波に関しては西岡と愛宕聖で行っている計画の影響が出るので、家督を継いだ後に会って話をしてあるのだ。
もっちーは兄貴が死んで急に家督を継ぐことになったという不安もあり、また、領国が摂津・丹波・讃岐・土佐ととびとびなのでとりあえず、俺と仲良く畿内の二国を治めようと優先順位を示してみた。
摂津と丹波の街道整備も「いいっすね兄貴」と了解しており、経済感覚はパリピ管領とは一線を画しているようだ。まあ、阿諛追従しているだけかもしれん。嘉吉の乱では立ち向かいもせずに一人生き残ったし、満祐君から挑戦状まで貰って挑発されたらしい。いやいや、馬鹿だろ赤松満祐。
俺は長いものに巻かれる奴は嫌いじゃない。俺が絶対的な存在なら、完全に言う事聞くからね。中途半端に自分の意見とか主張されても困るだろ。足して二で割った折衷案とか出す程度の側近ならいらんがね。
というわけで、そろそろ街道の話を勧めて行こうかなと思う。最初に反対するのは……誰だろうね?




