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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『将軍宣下』 正長二年/永享元年(1429)

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第二十五話 空が高すぎる:西岡稲刈

第二十五話 空が高すぎる:西岡稲刈


 西岡にも尼寺はあり、何人かの孤児を預けている。俺とパパ園君は、いつぞやの約束を果たすべく、京から舟に乗り西岡へとやってきた。帰りは……馬かな。


「見事なものですな」

「……想像以上だな……」


 足踏み揚水器は時期的に外されているが、春の田植えの時期にでもまた訪れたいものだと思う。施肥のおかげで、道行に見かけた田よりも随分と豊かに実っているように見られる。


「しかし、公方様の仰ることの意味が、ようやく腑に落ちました」


 え、今まで府に陥ちていなかったの。ショックです。


「いえいえ、その『やって見せ』のくだりを思い出したのでございます」


 そだね。西岡の集落が他の所以上に豊作である事を周りは見知ったことだろう。そして、揚水器と施肥の件も分かっているはずだ。


「どうされるのですか」

「将軍家に従うなら、教えても良いと伝えてある。文書を交わす事になるだろうな」

「……さようでございますか……」


 当り前だよ、一所懸命。土地が増えるのと同じ効果があるのに、対価がないとかあり得ないよね。




 この時代の米は知らないけれど、一粒から何粒増えるかって言うと、コメは百二十粒らしい。小麦はその何分の一かで、中世だと十分の一くらいにしかならない。だから、人口は増えた後、食わせることができずに十字軍したり、肉食が制限されたり、疫病が流行したりしたようだ。


 西岡米……なんかブランド化できそうな気がする。




 農具もチートできればいいんだけど、難しいよね。なんで元坊主の将軍がそんな提案するんだって話になる。庫裏で読んだとか適当なこと言えばいいかな……良いわけがない。




竹製の扱き箸(こきはし)が最初は使われているそうだ。竹を箸のようにした道具で、一日に扱く籾の量は男性が十二束、女性が九束くらいの処理能力。千歯扱きは本来元禄年間に発明された画期的な農具で、当初は竹製の歯であったが鉄の扱き歯に改良され、稲の脱穀用として普及ししている。

一時間当たりの作業能率は約四十五束……おい!!


「あのな、櫛のデカいのを竹で作るんだよ。その間を稲束を通すだろ、米粒だけ落ちるんじゃないか?」

「……試してみましょう」


 その手の細工物が得意な男が、大きな櫛のような「千歯扱き」を一日で作った☆ まあ、ほら、櫛は存在するんだから、難しくないよね。





 暫く干してからの使用になるだろうが……


「よくできたカラクリでございますな」

「このような物をどこでお知りに!!」


 はい、そうですね、元坊主が考えつくわけないですもんね。


「どこで読んだのかは覚えていないが、寺で見かけた書物にそのような

物を作ったからの話があったのを思い出したのよ」

「なるほど。流石でございますな」


 俺の記憶力や知識を褒めているのか、中国四千年の歴史を褒めているのか微妙だな。両方ということにしておこう。


「これはどのように致しましょうか」

「揚水器とこれには『二つ引』の焼き印を入れるようにするか」


 つまり、これは足利家の知財であるという証明である。勝手に複製するなら、処罰するということでOK!


「将軍家の奉公衆になるなら、教えることを許可するとしようか」

「ならば、我らも話しようがございます。山城国の中だけでございましょうか」

「丹波も構わない。揉める前に一言話を通してもらえるか」

「承知いたしました」


 ということで、同じ話を愛宕山にも持ち込んで、大いに喜んでもらえる事になった。


 そのうち全国に広めるつもりだが、今の段階では試行錯誤中ということで俺の身内だけに使わせることにしておく。そうじゃないと、俺の味方になるメリットが今のところないからな。


 やがて、街道を整備し自由に商人が行き来して、物が手に入るようになれば、西岡産の脱穀機や水車が畿内を席巻するかもしれないな。二つ引の焼き印と共にな。



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― 新着の感想 ―
[一言] この時代の大唐米だと叩けば落ちるのでは。千把扱きの普及も市場が質を求め落ち難い品種に代わって来て一々扱箸で落としていられない事情も有ったのでは? 千把扱きは地域によっては「脱穀?穂を叩き付け…
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