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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『将軍宣下』 正長二年/永享元年(1429)

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第二十四話 時に愛は:尼寺と孤児

第二十四話 時に愛は:尼寺と孤児


 最近、出家した武家の尼僧たちに、俸禄とバーターで孤児の世話をさせている。下働き兼未来の俺の供回り候補だな。


 侍が喧嘩強いのは、血筋じゃないから。子供の頃から飯食って暴れているからってだけ。栄養事情の悪い庶民より侍が強いのは当然だよね。だから、その辺りを変えるために、よさげな孤児を選抜して預けているというわけ。え、誰でもじゃないよ、よさげな見目の子だけ。


「これは、上様」

「おお、庵主様、子供たちはどうかな。困った事はないか」

「お陰様で特に困っていることはございませぬ」


 若ければ後妻ということもあるのだが、ある程度年齢がいっていて子が産めない場合、出家するしかないのが実情だ。とは言え、経を読むだけの人生も詰まらないのではないかと思い、孤児の世話をお願いしているわけだ。


 それに、孤児も「庵主様」と慕ってくれてだな、十年もすれば立派に働ける若者になる。その時にだ、「公方様のおかげであなたたちは……」と一言言って貰えれば、そりゃ忠誠心の高い者たちになるわけです。御恩と奉公って大事だよね。


 京で上手くいけば、将軍の直轄領で拡大する予定。大和とか伊賀取って、更に近江まで行けると良いね。畿内は将軍家で抑えたいが、泉河内は難しいかもしれません。でも、代官地とか直轄の街は作ってもいい気がする。街道警備の為とか理由を付けて。


「上様、いらっしゃいませ」

「おお、そなたも元気そうで何よりだ」


 ここの子供たちは「上」という人だと思っている。おう、領収書の宛名書きでそいう勘違いあるあるだよね。この場合、それで良いのです。


 ここの子達は、読み書き計算が出来るようにしてもらっているので、ある程度年を重ねてから桔梗屋で働いて貰っている。これからその手の需要は増えることだろう。読み書き計算が出来る商人の手伝いが欲しい人が増えるからね。どこでも人材不足になるだろう。そこに、孤児たちをはめ込んでいけると良いなと思う。

 勿論、番衆や小者にも採用はしていくけど。

 

 全員が侍になりたいわけじゃないから、それは選べるようにしたい。それと、女性も読み書き計算が出来る方が、嫁の貰い手も増えるだろう。というか、番衆でも下っ端ならよさげな奴もいると思う。孤児の番衆と孤児の嫁でも俺は良いと思うしな。


 とはいうものの、捨てられるのは男の方が多いのは確か。





 ということで、俺は一月に一度か二月に一度幾つかある尼寺を訪ねる。そこには預けた孤児たちがいて、俺が来ると目を輝かせる。そう、餅がやって来たと。お土産に目を輝かせるのだ。


 とはいえ、我が娘真理子もあと少しすると、立って歩いて言葉を話すようになるだろうし、この子達も育っていく姿を重ねると色々楽しみでもある。


 武士は『一所懸命』であるというが、この子らも同じなのだと思う。気が付くと京に捨てられていてひもじい思いをし、そして寺に預けられ食うに困らぬ生活を与えられ、何らかの仕事を得て毎日不安なく過ごせるようになった。


 どうやら将来は「上」様=餅をくれるおじさんの所で仕事がもらえるらしく、読み書きと計算、男の子は体力のある子、女の子は炊事洗濯裁縫のできる子供が喜ばれる=餅が余計にもらえると刷り込まれている。


 その『一所』を皆で『懸命』に手に入れようと毎日生きているわけだ。親も兄弟もおらず、生まれ育った村もないのだから、尼寺を出たら自分の生きる場所を見出さねば生きていけないのだ。だから真剣になるし、そこにいる仲間同士で助け合おうとする。他に生きる術がないからな。


 



 ということで、俺は考えた。これ、そのまま俺の直属の足軽隊にしちゃおう☆武士だと面倒だから、適当な番衆の隊長を付けて、孤児だけの部隊を編成する。『孤児』から採って『虎児』だから、『虎兵』とかそんな名前の隊にする。まあ、五百人とか千人とかそのくらい。俺の親衛隊だな。


 餅を上げた恩を忘れんなよって事で、仲間と俺を命懸けて守ってくれるんじゃないかと期待している。俺の膝元が『一所』であるからな。


 悪虎兵……とかいい感じだろ? 金目当ての足軽でも、生活苦の農兵でもなく、居場所と存在を護る為だけに戦う専業兵って多分強いだろうな。宗教騎士団みたいなもんだ。





 そうだ、近隣の村に尼寺の孤児が稲刈りを手伝うということを伝えて、一緒に働かせてもらおう。村で知り合いができれば、大人になった時にその関係が役に立つだろうし、読み書きできる女なら村役人の妻も夢じゃない。


 まあ、郷村の指導者は地侍だからどう転ぶか分からないが選択肢の一つだ。


 そういえば、そろそろパパ園と西岡に稲刈りを見に行かねばな。





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