第十八話 ダイジョウブ:桔梗屋
前日夜と今朝のジャンル別日刊1位に入っておりました。あれ?
ブクマ&評価ありがとうございました☆
第十八話 ダイジョウブ:桔梗屋
所司代の仕組みが整い、番衆も意外と体を動かし京を歩き回るのは楽しいらしく、好評です。
下肥だって、しばらく寝かさないといけないから、効果検証はちょっと先になるかもしれない。とは言え、郷村から採りに来てもらうわけにもいかないので、京に集まる流民を活用しようと考えました。
桔梗屋利右エ門……最近、京に現れた口入屋の主人だ。元は幕府の奉公衆であったとも言われているが噂の範疇だ。口入屋というのは、仕事を紹介することで依頼人の代わりに賃金を払う雑用を頼む商売だ。
相手は、京にやってくる様々な流人が含まれる。食い詰め者を管理して、身を立つようにするという所司代が行うような仕事を肩代わりしていると言えば良いだろう。
例えば……下肥を近隣の村に運ぶ仕事、京の中の街路の清掃、新田開発の手伝い、番衆の遠征時の兵糧運びの人足など、力仕事でかつ皆がやりたがらない仕事だが誰かがやらなければならない仕事ばかりだ。
仕組みは簡単。先ず依頼を受けた証明の木札を受け取り、人足頭の指示で仕事をする。終わると、依頼主が木札を確認し割符をくれるので、それを店に持ってくると手間賃をくれる。
但し、下肥が重たいからとワザと規定以上の量(桶に印が付いている位置より下)をこぼしていると手間賃はもらえない。また、運ぶ距離によって手間賃が変わるので、力のある物は遠くの手間賃の多い仕事、力無き物は安いがその分楽な近い場所の依頼を受けることで公平感を出している。
主人であるからといって店の奥に居座ることなく、店頭で顔を見せ指示をだすしっかりした男であるとも言う。
はい、それは俺の事です。だって誰もやりたがらないから、俺がやることにしたんだよ。江戸時代にはあった口入屋って今風に言えば人材派遣会社ね。江戸は普請に事欠かない場所だったので、そういう人間を集める商売があった。確か、乞食とかと同じで元締めは幕臣扱いじゃなかったっかな.江戸期の口入屋は武家奉公の中間などを紹介する仕事で、人足関係は人入れ業とまた違うみたいだけどまあいい。
ある意味、公安委員会とか職業安定所みたいなところだから当然だろう。
字が書けない者も少なくないだろうから、木札を用いて依頼の達成を確認する仕組みにした。絵馬があるんだから、木札くらい出来るだろ?蒲鉾板の焼き印みたいなのにちょろっと字を加えるだけだ。手書きのお札より余程簡単。
屋号は、新右衛門さんに対抗して桔梗屋さんにしてみました。たまに毛坊主の一休宗純が営業妨害に来るが、追い払っている。「髪を剃ってから出直してこい」と言うように部下には言い伝えてある。
因みに、店の従業員は俺の部下で、密偵を熟せる人材を探してもらって配置している。何とか阿弥とか、伊賀甲賀の人とかも採用している。所謂侍している人じゃ無理だからね。俺? 元坊主ですが何か。
最近考えているのは、中間や小者にする為の孤児の保護だな。イェニチェリ目指して頑張ろうかなって思う。強欲坊主や自分の生活の事で頭いっぱいの公家が配慮するわけないしな。
足軽からは侍扱いなので、簡単にはさせられないがな。
女も男も数年すれば役に立つようになる。紐付きじゃないから裏切る事も……あんまりないんじゃないかな。子供を使った犯罪行為も抑制できるし、なにより「情け深い公方様」と思われればラッキー。
カムイ外伝風に、幕府のシノビとして育てていくのもありだよね。当然、各守護達にはカンパさせる。当り前じゃないですか、特に畿内周辺の領国の奴らは京に人間捨ててるんだから、お前らの失政のせいだろってことで厳しく物申すつもりである。帝のお足もとに人を捨てるとは何事かと!!
まあ、だからって返しはしません。金を払うか米を出すかの二択。特に、近江とか若狭や丹波から来ている気がするので、直轄領にしようかと思う。だって、間に人いれるのは無駄じゃない? 三角だか六角だかしらんが、バサラ対決しようじゃないか。追討してやる。
まあ、京で俺の「公方様素敵!!」ムーブメントが広がれば、さらにこの流れは加速していく。持氏? そのうち立ち枯れするだろ。
「旦那様、お仕事お疲れ様でございます」
「……御台……ではなく、弥生か。どうした店に顔を出して」
はい、最近、すっかり『桔梗屋弥生』役が板についてきた未来の母親重子さんです。妊活すべく、体を使って仕事をしています。ホルモンバランスって大事だよね。
弥生? 三月生まれだからかな。
弥生こと重子が店に顔を出すと、人足どもの士気が上がる。美人で胸が大きいからね、宗子は……いやなんでもないよ。
口入屋―――それは室町の冒険者ギルド