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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『籤引将軍』 正長元年(1428)
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第十三話 君に届くまで:義就と妙椿と新九郎

第十三話 君に届くまで:義就と妙椿と新九郎


 元服したので、ちょこちょこっと政所に顔を出して訴訟の内容を聞いたり、書類を読んだりしています。


 幕府って、主に土地の権利関係の裁定をするのが大事な仕事見たいです。幸い、政所の仕事は鎌倉幕府も重要視していたので、当時政所執事であった二階堂氏が世襲していたものを、室町幕府の開府当初に伊勢氏に引き継いだようで、政所執事は伊勢氏が世襲しているようです。


 伊勢新九郎君は、この家の分家の小倅で応仁の乱の頃には立派な奉公衆となるのですが、今はまだベイビーなんじゃないでしょうか。叔父か祖父が執事をしているはずです。


 執事代という次官級の人もいてこの中の斎藤氏の娘が政知の母親になる少弁殿の実家だ。


 室町幕府は鎌倉幕府と似た職制を有しているが、政所以外はかなり異なる。


 管領は所謂『執権』に相当する将軍の代行職であり、『管領教書』って命令書を出して将軍の代わりに数年ずつ政務を取り仕切るように今はなっているようだ。


 義持兄の代から幕府の重要案件決定は三管四職等から選ばれた宿老会議が諮問を受けて行うので、管領の重要度は低下している。但し、将軍に次ぐ格式の役職なので体面に伴う経済的負担もあったことから畠山満家や斯波義淳などはたびたび辞意を表明している。故にローテで数年ずつ行っている。


 現在の宿老は……畠山満家、斯波義淳、山名時煕、そして赤松満祐の四名。前二者はあと数年で亡くなるはずだし、山名さんも十年はもたない。そして、満祐君だってもう六十近いのだから、毎年がロシアンルーレットなんだよ。


 つまり、長生きすれば自然と格下の宿老になるという事だね。信玄が名将ぽいのって駿河攻め以降でしょ?その間に、古参の宿老がいい感じで死んで行って自分の育てた武将が成長してくるからね。俺もそのパターンを踏襲するんだよ。


 御相伴衆という身分があるが、これは三管四職に準ずる将軍の傍に侍る有力守護の事だったりする。名誉職なので、家格を示す物差しでもある。


『奉公衆』は将軍直属の軍事力で、五ヶ番に編成された事から番衆と称される。御家人の中でも将軍近習、近衛・馬廻ほどの意味だろうか。所謂武官だ。成員は有力御家人や足利氏の一門、有力守護大名や地方の国人などから選ばれる。守護大名家の庶流や将軍家の古くからの家臣、地方の有力国人領主から成る、各五十から百名の御家人に家人が付くので、一つの番衆が千から二千程度の戦力を有することになる。


 まあ、将軍の権威と支払いが保たれればという事だろうね。


 それと同様に、『奉行衆』は文官たちの集団だ。政所・侍所・問注所・恩賞方等の右筆……秘書兼事務官だな。

 仁政方・庭中方・内奏方などの各種訴訟機関も設置されて奉行人が配置された。将軍が処理する雑訴沙汰と呼ばれる過去の判例に囚われないような専権事項に関しては、奉行衆の幹部から会議に参加する者もあらわれる。


 法制や先例、有職故実などに詳しい奉公衆は、家伝・家学として伝えてきた斎藤氏・松田氏・飯尾氏・布施氏など限られた家系によって右筆・奉行人などの地位を占有するようになる。


 御教書を作成するに大切なブレーンであるんだろうな。まだ見ぬ未来の妻の実家だけど。


 この武官と文官の対立は、あほの次男とその息子の風邪ひき将軍の間で表面化するから、どちらかに肩入れするのは良くないという事だね。


 悪い寺社や我儘守護を追い詰めるには奉行衆の知恵が必要だし、最後の決定的瞬間には奉公衆の武力が必要なんだよ。互いに仕事を理解しあうことが大事だね。


 どっかの虎退治のおっさんが半島の奥深くまで突貫し、後方でマネージメントしていた文官と喧嘩騒ぎになるわけじゃない? ラインとスタッフの対立が起こらないようにしないといけないよね。




 というわけで、俺は良い将軍になる為に、文官の仕事を理解し、あほの子武官に「お前らが戦に専念できるのも、勝利が確定するのもあいつらの段取りのおかげ」と教え、文官の頭でっかち君には「画餅にならないように実務を詰めるのは奉公衆のおかげ。車の両輪だぞ」と正さねばならない。


 と考えると、新九郎君は文官畑でありながら実戦を熟せるラインスタッフ系の人材として育成するのが良いかもしれないね。


 中には応仁の乱最強の武将、畠山義就も現れるから、庶子なのでぜひ番衆の幹部に取り立てたい☆


 それと、家格で問答無用に出世させずに、ジョブローテで経験をきちんと積ませるようにしたいもんです。その辺りも、検討していかないといけないんだろうが、ベテランの奉公衆にでも確認してみるか。奉行衆は……実質家業みたいなもんだからあまり変えようがないと思われるからね。


 斎藤妙椿が今頃どっかの寺で住職をしているはずなので、美濃の守護代の親父に頼んで、側近として招きたいと頼んでみよう。大丈夫だよね? 彼は、戦争も政治もこなせる男だし、一流の文化人として京の貴族たちとも交流があったはずなので、是非側にいてもらいたい人材でもある。


 そのうち、娘婿にしてもいいかもね。と思わないでもない。親子ほどの年の差があるから、側室の妹とかを養女にして義理の親子が狙い目かも知れない。


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