表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『鎌倉鎮守府』 嘉吉三年(1439)
106/120

第百六話 二人の夏:征夷副将軍と亜父範忠

第百六話 二人の夏:征夷副将軍と亜父範忠


「大きなお山でござりまするな父上」

「その昔、大噴火する前は今の倍ほどの高さがあったそうな」

「大樹、御冗談が過ぎまする」

「いや、本当であるぞ」

「「「……」」」


 富士山のオリジナルはエベレストくらいの高さがあったと言われているしな。噴火で山体が吹き飛んでいまの部分だけが残されたらしい。この時代だと、青木ヶ原ってまだ樹海じゃないよね?


 街道も一層整備され、船の数も増えているので俺とお供の番衆が移動するのがとても早い。まあ、ほら、戦支度じゃないからね。あくまでも太郎の送迎だから。護衛に千ほど兵を置いていくが、今川に任せる積もりではある。護衛の兵は三河・遠江の奉公衆がメインだ。


「しかしながら、京とは違う風光明媚なところでございますな」

「海が近いからな。魚も貝も美味い」

「暖かい場所で、晴れの日も多いときておりまする」


 そうなんです、静岡って平均寿命が長いんだよね。

気候が温暖で生活しやすいからストレス少ないって事らしいけど、この時代は分からないね。


 三年振りの今川館の望嶽亭に家族揃ってお邪魔しております。ええ、別に、家族で民宿泊りに来たお父さんじゃないんだからね! 似てるけど。政治的活動だから、軽井沢でゴルフする首相みたいなもんだから。


 今川範忠は、歴史的には結城合戦でも活躍し「天下一苗字」として、唯一今川を名乗る家系にする栄誉を与えたんだが、それはそれだ。


 今回、父範政に倣い、今川の当主の中で足利を支えるに足る働きをしたものを『征夷副将軍』に任ずることにした。


「令外官であるので、名誉職ではあるが受けてもらえるか」

「……勿体なきお言葉……」


 親子二代に渡り『副将軍』の家柄と認められたのだから、天下に面目が立つというものでもある。副将軍が次期征夷大将軍である嫡子太郎改め、足利義法あしかがよしかつを後見するのは何ら不思議ではない。


「駿河においては亜父として、範忠と接するようにせよ義法」

「畏まってござります。亜父上、よろしくご指導くださりませ」

「おお、立派なごあいさつでござりまするな和子、いえ、御曹司」


 御曹司……御曹司ね……そうか……御曹司になるのか……今、義法は従五位下、ギリギリ殿上人です。範忠の方が官位は上なんだけど、将来の征夷大将軍だからね。




 一週間ほど滞在し、清見寺を鎮守府将軍御座所とすることを打ち合わせし、関東との遣り取りは範忠と周泰の後見を受けつつ、裁断することを確認した。まあ、暫くはサインの練習と学問に勤めてもらおうか。


「父も母も年に何度かは顔を出そう」

「母には文を出しなさい。それに、分からぬことがあれば、遠慮なく亜父殿、周泰殿に聞くのですよ。将軍は人の話を聞き、正しきことを見定めねばなりませぬ。間違えれば、多くの者が苦しみまする」

「……はい……」

「周り回って、太郎の事を恨むものも増えまする。大姫は心配でなりませぬ」

「……はい……」


 大きな母親と小さな母親から心配される御曹司……マザコンでシスコンにならないと良いけどな。


「兄上、お達者で。私も、兄上の後に続きまする」

「ああ、楽しみにしている」


 名残は惜しいが、俺たちは駿河を後にした。




 滞在している間、駿河の湊を整備する提案をしているのだよ。『外港』清水だ。


 巴川の河口から遡った『江尻』湊が海に面していない駿府の湊となるのだが、発展性に乏しくあまり大きな規模にできそうにない。「京」であるから、坂本・伏見に匹敵する拠点を海に面した場所に設けるのはどうかと思うのだ。


 清水湊は家康の駿河国領有時に開発が始まり、最終的には大御所時代に南蛮船も受け入れる事の出来る大規模な港として整備された。素性は、清水が良い。


 幸い、太原雪斎の時代には清見寺として知られていたようで、幼少期の竹千代は清水=清見潟を知っていたと言われている。その昔、新羅遠征の際に船を造り送り出した地域でもあり、海運の拠点として歴史も自力もあるのだ。


「清水を開発せよと伝えるのだ」

「……承知いたしました」


 さて、娘の誰かを範忠の後継者に嫁がせるのだから、京の様な街に、東国の入口に相応しい港も整備してもらおうではありませんか。


「京から淡海を通って今浜まで。そこから伊勢に下り、あとは船で駿府まであっという間でございますな」

「街道の整備と並行し、大型の船の建造もすすめましょう」


 という、俺の周りの東国出身の近習が煩い。一度切り離された関東も京と太いつながりが生まれれば、再び「日ノ本」に戻れるかもしれないからな。とは言え、俺が死ぬまでは絶対に許さん!!


 清見興国禅寺は今川氏真が武田の駿河侵攻時に本陣を構えた駿河湾を見下ろす丘の上に立つ天険でもある。ここも防御拠点として整備させるのは有りだろう。


 戦争をする気が起こらないほど、駿府は豪華絢爛にして堅固な城塞としなければならないからな。




 お話の続きが気になる方はブックマークをお願いします。


「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

参加中!ぽちっとお願いします
小説家になろう 勝手にランキング

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ