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『義教記』~転生したら足利義教でした。【完結】  作者: 万人豆腐
『畿内融和』 嘉吉二年(1438)
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第百四話 またたく星に願いを:六角仮名目録

第百四話 またたく星に願いを:六角仮名目録


 さて、国人たちが一揆をおこすには俺の側に不備が少なすぎた。何か隙でもあればよかったんだろうねー


 園城寺に火を掛けた叡山の者共に責任を取らせ(首桶事件)、南朝を騙る大和の賊を根切にし(沢&秋山族滅)、何度も将軍に喧嘩を売る関東の賊(鎌倉公方)と信濃の賊(村上一族)を賀茂の河原で斬首し、宿老と言えど暗殺を企てた赤松宗家に詰め腹を切らせた。


 その過程は、公明正大であり相手の非を糾し、それを認めぬ者に罰を与えているに過ぎない。つまり……お前らが悪い。


 近江の件に関しても、事前に横領した御料・荘園を返却する旨を伝えてきた者は、守護六角、守護代伊庭を筆頭に訓戒するにとどめたのであるが、何故か周りも帯同すると勘違いした一部の国人が武器を持って襲ってきたので、致し方なく討伐するに至った。


 いやほら、青地氏が草津から近江八幡の中間の江南を支配している佐々木氏の支流だからとか、赤田氏が犬上郡に強い影響力を持つ「江陽の旗頭」と呼ばれ、施政に見るところのある有力国人だから討伐して影響力を削ごうとか全然思ってないんだからね!


 そ・れ・で・も・素直に将軍のいう事を聞けない子はメっだからね!本領半分取上げるんで堪忍したるわ!!


「おぬしも悪よのう妙椿」

「公方様には敵いませぬ」

「「おーほっほっほ」」


 悪役公方ごっこもいい感じです。いや、俺は悪くない。勘違いした国人共が悪い。ミスリードされるってされる側に問題があると思うの。




 さて、ここで、近江守護六角をケーススタディとしてあることを始める。 分国法というのは、応仁の乱以降に越前朝倉とか、駿河今川あたりで定めたものが多い気がする。まあ、本来は幕府が預かっている訴訟沙汰を守護や守護代が差配するって事なんだよね。


 これって、本質的に戦国以前から地方領主・国人や守護代が強気でいられる根源でもある。


 将軍や管領・守護なんてのは、地方の地侍たちからすれば帝と大して変わらない、どこにいるのかたまに名前を聞くだけの存在にすぎない。所謂「殿様」ってのは、その郷村を支配する国人領主であり、国人からすれば守護代家なのだ。


 あれだな、水戸黄門とかで国家老が大名不在なことを良い事に悪徳商人と組んで国政を壟断するみたいなことが当たり前なわけだ。





 なので、パラダイムシフトをする。


 武士にとって大切なのは土地の所有権だ。その為に、幕府には政所という裁判所が存在する。ここで、土地の権利に関して訴訟を扱うんだが、幕府開設当初から問題あり有な訳。どの時代の権力者が認めた物を権利として認めるか、実効支配を認めるかみたいな話になる。


 ここを弄る。つまり、各守護が守護所で一審を判定してくれと委ねるわけ。勿論、その権利を含め分国法を認める代わりに、石高の百分の一を税として幕府に収めさせる。特権の担保として税を納めさせる替わりに、地方分権を認めてやるよってわけだ。


 ところが、守護が裁いた内容に不服がある場合、京、若しくは地方においては、九州探題・関東公方の定める政所で上告審を行う事を認めるものとする。これで何が変わるのか?


 一つには、「将軍」「京」という物の存在を地方の地侍までが意識するという事だ。今までは目の前の『殿様』の顔色を窺えばよかったが、もし、自分に不利な裁定が出てそれがおかしいと感じれば、恐れながらと京の政所に訴えればいい。


 守護も幕府を蔑ろにすることはできない。自分たちの権威は幕府から譲り受けた物であり、その根本は朝廷におわしまする帝から生まれた統治権なのだと理解できる。


 つまり、将軍の権威を失墜させることが自分たちの支配を不安定にさせる事につながるわけだ。それに、守護として裁いた裁定に不備があり、政所で覆されるなら、権威の失墜どころの騒ぎではない。なので、裁く内容も公正で時間をかけた物になる可能性が高い。


 そもそも、一向一揆のような地侍どもの反乱は、宗教によるものというより、権威の失墜から派生したといえる。ならば、守護や守護代の権限を認め、大いに活用してやろうではないか。


 勿論、横領している寺社の土地などは幕府の権限で取り上げる。朝廷の御料を取り返す名目で兵を出し、徹底的に叩き潰す。武家の権威が失墜した間隙を縫っていい気になっているのだから、当然だ。


 比叡山……大文字焼ってご存知?




 さて、ここからが問題だ。仮に反乱を起こした守護代や国人がいるとする。その場合、幕府が納めてもらっている百分の一税を、その反乱内容に応じ、税率を上げる。勿論、十年とか二十年限定でだ。その課税分を恩賞として与えるものとする。


 これなら、土地の権利は移動しないし恩賞が出せないという問題も解決される。たびたび反乱を起こす頭の悪い領主は、税金が増え立場を失くす。出兵を将軍の供回りで行えば、昇給したようなもんだ。いいだろ?




 地方の政所には京から一年程度の任期で二年に一度派遣することにする。上訴審だから、常駐する必要もない。その旅程で……地方の情報を収集させる。現地の政所でも実地調査が必要なこともあるだろうから、書類だけ読めるやつじゃなく調査もできる人間が必要だ。


 その人材を、伊賀甲賀の者たちに任せることで、地方まで幕府の監視の目が行き届くようにするというわけです。探題の政所は情報機関を兼ねるわけだ。このくらいやれば、幕府の権威を恐怖ではなく実感して高める事ができるんじゃないかな。


これにて第十一幕終了です。次幕は『鎌倉鎮守府』となります。気になる方はブックマークをお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 架空小説は数あれど、税と裁判システムまで具体的に書くものは稀。 この作品は素晴らしい。 室町幕府の欠陥をしっかりと見抜いているからですね [一言] これからも楽しみにしております
[一言] >「おぬしも悪よのう妙椿」 「公方様には敵いませぬ」 「「おーほっほっほ」」 公方様が山吹色のお菓子をくれそう。
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