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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
4.5章:山内信一郎の災難な7日間
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3日目、女体化:なんで貞操の危機に……


注意、BL的表現があります。


「ううん………」


朝、清々しい気分で目覚める……横にはエレノアの姿がある。そうだった。昨日、確か添い寝してそのままだったんだったか……そこまで思い出してからエレノアの手を引き剥がしてから身体を起こして、天井はいつもの大きさだと安心する。


(なんだ、呪いなんて起こってないじゃないか……)


一安心してから大あくびをして顔でも洗おうかと洗面所へ向かう。そして、昨日のように顔を洗ってから清々しい朝を体感……できなかった。

ぱさりと髪の毛が落ちてきたのだ。え…………髪の毛?鏡を恐る恐る見てみると、


「嘘……」


鏡には娘真理にそっくりな女の姿がある。声も娘に似ていつもよりも高くて張りがある。ただし、姿は真理よりは若干老けているが。まあ、若返ったとはいえ30前後の女の貌をした男よりも向こうは現役のピチピチの花の女学生だ、比べてはいけない。まさか……恐る恐る、股間の辺りに手をやると


「な、ない……」


股間の例のモノがない、消えてる……。その代わりに、胸元には小ぶりであるが2つの柔らかいモノがあった。


「貧乳だな……俺。どうせならでっかい方が良かった。そしたら……_って、俺は何考えてんだ…」


一瞬不埒な考えが頭の中によぎって、鏡に向かって1人照れる。自分でも気持ち悪い顔だと思うし、たいした猥談などしていないのにと思いながらもくすぐったい気持ちが消えなかった。勝手に1人で顔を赤くして照れていると、後ろに起きてきたエレノアが冷めた目でこちらを見ていた。


「………何してるの?えっと、シンイチロウ、だよね??」


『女体化だな、中々愛嬌のある姿じゃないか』


いつの間にヘンドリックまでやって来て、笑っていた。……愛嬌のある、か。確かに娘も俺に似ずに、俺の血を引く割りには美人さんだった。つまり、俺は生まれる性別を間違えたんだな……女に生まれていれば俺は厳ついだの言われずに済んで、革進党のアイツに負けずに済んだかもしれないのにという考えまで生まれる。

__ここまで言ったら分かるだろうが、俺は女体化していた。


「俺、生まれる性別間違えたな………」


『何馬鹿な事言ってるんだ。エレノア嬢、こいつを着替えさせてやってくれ。私は、そんな貧弱な身体を見た所でどうってことないが、ビジュアル的に不味いだろ?』


「ふん、このスケベ!」


シンイチロウはエレノアに連れられて着替えに行った。エレノアに裸にされて、さらしを巻かれて着替えさせられる。身体は女の物だからかエレノアは戸惑いのない慣れた手つきであっという間に終わった。


「……オ〇カルみたいだな、ベルバラの。中々イケてるじゃないか」


「何を自画自賛してるの……私は正直、昨日の子供の姿の方が可愛いげがあったわ」


「うっさいな……」


外に出るとヘンドリックがまた笑っていた。そんな爽やかな似合わない笑顔を見せた所で何もやらんぞ。その後、彼は調べ物があると言って図書館の方へと向かった。


「アイツは頭が固いな、そういう奴に限って早死するんだよ」


「不吉な事言わないの、でもヘンドリック様は1度死んでるしその心配は大丈夫なんじゃない?」


「……そういうもんなのかな」


聡明で期待されて、世のため人のためと思っている人に限って早く死ぬ。シンイチロウはそう思っている、ヘンドリックもそういう人間だったのかもしれない。


「で、女になった気分はどう?」


「う~ん、今のところは身体が違和感があるくらいで、まだよく分からないな……」


ピョンピョン跳ねたり、動き回ってみる。

すると、エレノアは俺に対して怒った。


「そんなせわしなく動かないの!それと、歩くときはそんなズカズカと足音を立てないで、後足はもっと閉じて!」


「うう、分かったよ……女って大変だな」


エレノアの様子を見て、秘書の後藤を思い出した。それにしても大変だ、ちょっと動いただけで疲れるし歩き方やら注意しないといけない事だらけで……。


「とりあえず、今日は私に付き合ってよ。その姿で1人出歩くとボロとか出しそうだもん、あなたって人は」


「失礼な奴だなぁ……」


「私はこういう奴だもの」


女って分からないな……。

まあ、その通りだから文句も言えないんだけれども。


「じゃあ、昼からセイラとルイ君達の所に行く予定だから準備をお願いね」


「はーい」


この姿で出歩くのか……なんか自分がイケナイ事をしようとしているみたいで胸がドキドキとしてきた。パンドラの箱を開けようとしているような未知の領域に踏み出そうとしているみたいで、急に羞恥心が襲ってきた。

手間取りながらも準備をして出発する。セイラお嬢様が不思議そうにこてんと首をかしげて俺を見てきたが、エレノアは『シンイチロウの代理よ』とか言ってなんとか誤魔化していた。胸を潰して、男の間で今流行っている髪を後ろで束ねているスタイルの為か皆男だと思っているようだ。


「シンイチロウ、あんまり動き回らないでよ?さらし、緩んだりしちゃうから」


「でも、俺は動き回るのが仕事だぜ?善処するが、期待はするなよ」


「それと、いい加減女になる前から言おう言おうと思ってたけど、敬語くらい使ったらどうなの?いつの間にか敬語じゃなくなってるよね。うちは別に問題ないけど他の家だったら、すぐにクビだよ!それがデフォルトだって分かってるから無理に変えろとは言わないけど、せめて“俺”じゃなくて“私”と一人称変えるくらいはして」


「こえー、まあそうする。わ、私もさらしの件は気をつけますけど、あんまり期待はしないでください。」


「なんか、お姉さまって呼びたくなるタイプね」


若干眼をキラキラさせながら祈るポーズをとって俺、あらため私に言ってくるエレノアに私は『早く行ってください』と背中を押して広間の方へと向かわせた。


「なんかエレノア、昨日から変だよなぁ」


首をかしげながら仕事を始める。女の身体になってみて分かった、先程も言ったが疲れやすい。高い物を取るのにも男に比べて苦労が多い。


「女って大変な生き物なんだな……」


頭の中にあるのはそれだけだった。

慣れない体で、走り回って……準備が終わるとエレノアの後ろで話を聞きながら控えている。


「あの2人、すっかり仲良くなったな。将来が楽しみだ」


アベル様が言う。彼の息子のフェルナンド様もその妻であるマリア様も微笑みながら頷いた。場には和やかな雰囲気があり、何も起こらなそうだと安心してホッとした。あのトール様は北の大地で後処理に泣いているだろうし、ここには厄介事を持ち込みそうな人物はいなかった。


(このまま、和やかに終わってから伯爵家で仕事したら終わるな)


呪いと言っても驚くのは最初だけで、後は何て事無いじゃないかと気が緩んだ。だが、シンイチロウの思いとは裏腹にそこに乱入する者がいた。


「どうも、宰相……じゃなくてアベル様、そしてフェルナンドにマリアさん、エレノア嬢。」


エドワード=ベアドブーク駐マルチウス大使、帝国の北にある大国ナクガア王国の大使様でダンディーでバブリーな雰囲気のする遊び人だ。


「エドワード、君はいつもいつも遊びに来るが大使というのは暇なものじゃないだろ?」


「いやぁアベル様、それが結構暇なものなんですよ。俺はどう頑張ってもこれ以上の出世は無理みたいですし、任期が終わるまではとことん遊んでやります!」


「宣言するものじゃない。……昨日も遊んだのか?まあ、ほどほどにしておかないと君の父親のヘンリーみたいに女に刺されかねないぞ。」


「ハイハイ、分かってます。」


嵐のように来て嵐のように去っていく人だ。

なんか、ヒヤヒヤしてどっと疲れた。遊び人か…というかあの人は本当に考えが読めないし、ただここに遊びに来ているだけとも思えないから注意しないといけないな。

そして、あなた達どれだけ話すんだ?何だろう、性別が違ってなんかいつもと違うのか時間感覚まで変だ……早く終わらないかな。


「シンイチロウ、終わったわよ。帰りましょう」


「やっとか……疲れた。」


股間の辺りに例のモノがないことにも違和感を感じながら、帰る。何事もなく終わって良かった、ただただそれだけだった。


「どう、大丈夫?」


「大丈夫、です……敬語って慣れない。」


「別に誰もいなかったら普通にしてていいのよ」


「そうする。エレノア、なんか女っていうのも大変そうだな。」


「そうねぇ、女の嫉妬とか怖いって言うしそうなのかも」


身体が変わったくらいで戸惑っていたらやっていけない世界なのだろうと思いながら屋敷に帰ってから仕事を始めた。

そして、夕御飯も終わって一段落して寝ようかという頃にエレノアが思い出したように声をあげた。


「あっ!どうしよう……アベル様の家に忘れ物しちゃった!」


「何忘れたんだ?俺…じゃなくて私が取ってくるよ。」


「えっと、小さいお守り。でもいいよ、あなたをその姿で出歩かせる訳にはいかないし、それに夜も遅いし明日の朝にまた行くよ。」


「何言ってるんだ、こういうのこそ使用人の役目だろ、ちゃんと取ってくるよ」


「でも……」


「ちゃんと道には気をつけるし、この辺は治安は良いから安心しろ。」


私は走ってアベル様の家に向かって、エレノアが忘れたというお守りの事を聞いた。そして、家を探して30分ほどしてお守りを発見できた。


「これか?エレノア嬢もこれで安心だろう。ところで君、シンイチロウ君の代理だというが彼は一体何者なんだ?そして、ヘンドリックとかいう彼の叔父は、あの方も一体__」


「シンイチロウはシンイチロウです。」


ヘンドリック、彼は私の叔父ということにしておいた。本当の事を言っても混乱させてしまうだけだから。

アベル様、彼もまた胡散臭いエドワード様とは違う意味で厄介な人物だ。

彼は知っているのだ、生前のヘンドリックを……彼らの故郷レミゼ王国でも恐らくはヘンドリックの名を知る者はほとんどが歴史に刻まれて教科書でしかお目にかかることの出来ない存在なのだろうと思うが、彼は実際に彼に会って彼の元ではないが近くで働いていたのだ。


「そうか、私の思い違いかな。いけないな、歳を取ると酔いが早く回ってくるようだ。あり得ないのにな、あの方はもうとっくの昔に亡くなられて、もう居ない筈なのに」


「あの方とは……?」


それが人間として生きていた生前の眷属ヘンドリックの事だと分かっていたし、彼は式神との戦いで偶然起きた謎の現象で生前の姿に戻っているのでアベルがヘンドリック=オンリバーン侯爵だと思い込む事はよく分かっていた。だけど、シンイチロウは聞いた。彼から大体の事は聞いていたが、アベルはそれとはまた別の事を知っていそうだと思ったから。


「ヘンドリック=オンリバーン侯爵、私の盟友ショーン=オンリバーン侯爵の父親であった方。どちらかと言えば私よりもヘンリー……あのエドワードの父親の方と仲が良かった人なんだけれどね。『あの人が言うんだったら……』と周りに支持される人間的魅力に富んだ方だったな。」


「そうですか……」


良いなあ、俺もそういう魅力ほしいなと思った。アベル様と世間話をしてから別れて帰ろうとすると、エドワード様がいた。

なんか厄介事を持ち込みそうだと後ろに引き下がると、心外そうな顔をしてからズカズカ近づいてきた。


「君、なんでそんな格好してるの?俺には分かるよ、君は女だ……間違いなく女だ」


「……………」


なんか厄介な事になりそう、恋愛漫画だとこのあと何かしらのアクシデントが起こってバレるオチなのだが、そんな目には遭いたくないぞ……!

夜の人通りの多い道を選んだのが間違いだった、ここなら人混みもあるので何も起こらないだろうと思った俺のミスだが、今はそんな事を思っている余裕はない。


「なんとか言ったらどうだ?」


「なんとか」


「そういう意味じゃない!……えっと、俺さ相手居ないんだよね、今日は。このあと良かったらどう?」


アウト!

これは完璧にアウトだよ、アイムマン!ノットウーマン!これは、完璧に誘い文句だよね……どこの三流小説なんだよ、そしてエドワード様、あんたねもう遊び人止めちまえ!


「却下します」


これ以上は話などは無理だと思って逃げるように去ろうとすると腕を掴まれる。そして、そのまま人通りの少ない路地へと押し込まれた。シンイチロウはその痛さに顔をしかめた。

……えっと、これはマズイ。神様、俺なんかしたのか?この流れ、一般的に見てもかなりマズイと思うんだが、それは俺だけなのか?


「……一体、何を…」


「何をとは…まさか、その歳で経験がないのか……?」


いや、無いわけではないけれど。女側は初めてなんだよ!憎々しげに見つめる俺に、エドワード様がため息を吐く。呆れて彼の手が緩まる、そのうちに逃げようかとばっと起き上がって、逃げようとするが失敗してしまう………。

そのまま、エドワード様に組み敷かれて身体の自由はきかない。こういう時に男だったら……そう思うと同時に自分の運の無さとエレノアの忠告を聞かずに出歩いた事を後悔した。


「_……ッ!?!?」


唇と唇が合わさり、彼の舌が口内に侵入してくる。シンイチロウの声にならない抗議を彼は無視してその後も首筋にキスを散らす。

端から見れば、少し扇情的な男女かもしれないけれど中身は複雑である。__シンイチロウの眼に涙が溜まってきて、やがてそれは溢れて頬を伝った。


「おい、それ以上は止めてくれ……俺は、女じゃないんだから、だからそれ以上はなにもしてくれるな。」


「何を言っているんだ?」


そのまま、有無を言わさずに服を脱がされて、巻き付けたさらしを解かれて、夜の肌寒さに震える。


「おい、俺は…男だ…女なんかじゃ、ない…だから離して、くれ…。」


「君は何をそこまで強がっているんだ?身体は女じゃないか。」


スースーとして肌寒いが、眼をこらすと朝見た小ぶりで貧相な胸があった。


「…_とにかく、俺は男だ!」


しつこいと思ったのか嫌な顔をしながらもエドワード様は相変わらず俺を離さずに続けていく。くすぐったい感じがした。ゴツゴツとした指が動く。

その時、午前0時の鐘の音。……もう、そんなに時間が経っていたのか、そう思っているとエドワードが驚いた顔をしてこちらを見ていた。見ると姿は戻っていた、股間にはいつものモノがちゃんとある。


「なっ……!君は、メスリル伯爵家の使用人のシンイチロウだったか?何故、先程の女性は一体……?」


それはシンイチロウ自身だったが、そうと答える気力もなく脱力してそのままだらりと組み敷かれたままになっている。


「エドワード様、とにかく退いてくれますか?」


「……!あ、ああ、そうだな。済まない」


そのまま、シンイチロウは見られないように衣服を整えてからスーツのボタンを閉めた。胸に噛み痕があったのは無視をした。

そして、そのままエドワードに向かって


「俺達の間には何もなかった、そういう事で」


と言ってから足早に彼を置いて去った。

現に、一線は越えていないのだから、まだセーフだ。守りたいところは守れた。

だから、何もなかったということでいいじゃないか、そう言い聞かせながら屋敷へと戻っていった。








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