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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
4章:冬の旅行に指令は無いが、災難あり。
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色々と詰め込み過ぎ


宣戦布告前夜の教団“光輝く奇跡”の施設の2階、教祖室では密談が行われていた。


「“守護者(プロテクター)”……どうするのか決めてくれました?」


「ああ、決めた。君を連れ出そう、ここから出たいという点では一致してるんだし。」


「ありがとうございます……」


この目立つ少年を連れ出す事が決定した。少年の予知によれば、噛ませ犬な司教は先を急いだせいか本来ならもう少し先に起こるはずだった暴動をすぐに起こそうとしているという。


「明日……いや、今日には宣戦布告をしてすぐに兵士が来る……その後町が燃える、そして…民衆達はボクに全てを負わせようとする……」


「あの爺さん、あらかじめ準備してたって事か?いくらなんでも早いな……」


『当たり前だが、ここの者共は少々派手に動きすぎた。領主側が何も準備せずに帰ってきたという訳ないだろ?彼らの堪忍袋の緒は切れたという事だ、彼らは本気だ…だから、そんな予知が出たのだ。少年、明日すぐに逃げよう!そうしないと全て押し付けられる。』


「うん……」


ここの奴らもこんないたいけな少年に全て罪を着せようだなんて、狂っているとシンイチロウは憤った。


『時に少年、君は“ルミナリアの奇跡”という単語を知っているか?済まないが、私はルミナリア正教の信徒ではないので詳しく知らんのだ。』


「“ルミナリアの奇跡”……正教で神が復活すると言われている日の事です。『戦乱に溢れ、人心が強者から離れし時、敬虔なる信徒の祈りを聞き届け現れし神の贄を捧げれば、神は助けるだろう』……神話ではそう言われていた筈です。」


『そうか、ありがとう……私達は出ていくから君も寝なさい。』


彼と別れて部屋に戻った後、シンイチロウは言った。


「こんな事……許される訳がないだろ。あの噛ませ犬、原作じゃあここまで狂ってはなかった。」


『シンイチロウ、もしもここが仮に君が知っているゲームの世界だったとしてももう既にお前が来る前から“歴史(シナリオ)”は崩壊していたよ、彼らが漫画とやらに描かれていなかっただけでこういう人物だったという可能性もあるわけだし。』


「……少なくとも、神の復活なんて事は考えてなかったしな。あの少年、悲惨な末路を辿るんだよな……このままじゃ、助けないと……」


『あの少年は、生まれた境遇自体が悲惨なモノだ。』


ヘンドリックは考えた。

あの少年は、大帝国の血を色濃く引いている。それもかなり厳格な血統管理で大帝国の王族そのものの姿を保つように近親婚を繰り返してきた一族の成れ果て、千里眼(クレヤボヤンス)の使用を制限されているので大陸中を探す事も叶わないが、きっと最後の数人……もしかしたら純血を保つ最後の1人かもしれない。銀髪に極彩色の眼、それは大帝国から分裂した王家が1番最近まで残っていた故郷レミゼ王国の書物に書かれていた大帝国の王族の特徴に合致するのだから。


『シンイチロウ、もうお前も寝ろ。……って寝てるし。』


________


翌朝眼が覚めると、案の定、宣戦布告の事で教団の内部は騒ぎになっていた。未成人(ビギナー)達は大丈夫なのかという不安と突然の事への混乱…彼らだってこの領内の様子からして近い将来にこうなるとは思っていただろうし、こうならないとは思っていない訳ではなかっただろうけれど、ここまで早いとは考えてもみなかっただろう。


「俺だってヘンドリックが居なきゃそう思ってた筈だし。まぁ、これはチャンスだな、逃げよう!屋敷まで行って保護してもらう、そうすれば…」


『そうだな。』


シンイチロウが途中で言葉を止めたのをヘンドリックはその真意を薄々察してあえて問わなかった。彼はきっと、これまで悲劇的なほどに当たってきた嫌な予感を感じて、言葉を濁したのだろう。


「救世主様!」


少年がやって来た、その髪は銀ではなく黒い。かつらを被っているようだ、服は未成人ビギナーのものだった。


「よし、逃げよう……」


ゲームと違う展開に少し迷ってしまったが、逃げる事を決意した。

その瞬間、短剣がこちら側にビュンと飛んできた。思わず飛び退いて防御の姿勢を取ったが、少しかすって傷が出来てしまった。


「なっ………!」


「ふう、所詮はミラーナ様の作った劣化人間達に違いない訳ね。」


そこに立っていたのは、テラス=ミカミ=アマオウ_先程シンイチロウに短剣を投げた張本人であり、管理者アマテラスの式神だ。


「なあ……本当に俺って呪われてんな。」


『そうだな……ほら、剣はやるから戦えよ。私は、あの子を守りつつ掩護射撃するからさ。』


「ごちゃごちゃとうるさい殿方達ね!

さて、今日は特別に私の戦場に案内してやるわ」


_______


眩い光に包まれてから一気に視界が暗くなる、眼を開くとそこには暗闇が続いていた。黒い床がひたすら続くだけの異質な空間にシンイチロウ、ヘンドリック、少年……そして式神のテラス……の計4人。

何処かへ歩こうにも、方向も分からないどころか目印もない。空には星のような小さくて淡い光が浮いているが、それもきっと虚像なのだろう。


『ようこそ、私の戦場に。私は、ミツキの姉マツキと言います。』


「なにそのマツゲみたいな名前……」


「というか式神ってペラッペラの紙だろ、兄弟の概念とかあるのに驚くんだけど!」


『お前達……そんなむだ口叩く余裕があるんだったらコイツを倒せ、そうしないとここから出られんぞ!』


少年を助ける所かここで死にかねない事態にヘンドリックは頭を掻きむしる。


『本当にごちゃごちゃうるさい。それにその顔、親愛なるアマテラスのお姉様がお嫌いになる理由も分かるわ……』


「顔は関係ないだろ!」


自分の人相が良くない事は知っているが、親から受け継いだものを嫌われても仕方ない。

それが戦いのコングを鳴らしたのは間違いない。シンイチロウは剣を手に走っていく。


(弓矢とか遠距離に飛ばせる道具があればな……)


テラス改めマツゲ……じゃなくてマツキは、多少手加減してくれたのか、剣を合わせてくれた。

何度も打ち合ううちにこちらの体力の限界が来た、おまけに足元にあった何かにつまずいて転んだ、足元にあったのは弓矢。このままじゃ万事休すというタイミングで気づいた。

弓矢などが欲しい、そう思っていただけなのに弓矢が現れた。つまり、ここは個人の想像が作用するという事か?


「だとしたら、俺をなめるなよ!

なあ…マツキ、俺が代議士やってた頃の口癖知ってるか?」


『はぁ!?いきなりなんなの!そんなの知るわけないじゃない!』


「“俺が白って言った物はたとえ黒でも白なんだよ!”」


頭の中に真っ白な風景を思い浮かべると、それに合わせるように黒い床が白くなった。


「やっぱり……という事は。」


ここはやっぱり個人の想像力が試されるという事か。頭の中に炎を思い浮かべてから、それをマツキ向かって投げる。


『ふん、こんなのが効くわけないじゃない!

とどめよ、雷鳴剣!』


雷、十万ボルトなどカスみたいなレベルでバチバチと音を立てた雷をまとった剣をこちらに投げてきた。


『土魔法!』


要領を理解したヘンドリックが土の壁を築いて防いでくれる。__何なんだ、ここは。頭が痛い、


「こんな所で負けてたまるか!」


もう一度炎を頭の中に連想させてから、アイツの方向に連続射撃する。

まだだ、火力が足りない……


『僕の世界でよくもこんな事をしてくれたね、風魔法。』


炎は風の力を受けて火力が増してマツキを燃やしていった。


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


マツキが鼓膜が破れそうなほど高い絶叫をあげてからプスプスと燃えて壊れていった。


『久しぶり、ミラーナだ。

もうすぐここは崩れる、ここを作っていたマツキがあの通り燃えちゃったからね。それと、君とこんな話をしている暇はないんだ……マツキに紛れてアマテラスまで侵入を許しちゃって……多分君の前に現れる筈……』


「管理者の癖に管理出来てねぇじゃん。」


『そう言われると弱いなあ……こっちだって復旧中だから仕方ないだろ。__っともうそろそろ時間だから、健闘を祈ってるよ!』


ガラガラと音を立てて崩れ始める。

ここを創造したマツキが居なくなったからだろう、彼女は灰となっている。……無責任な方だなあ、アマテラスも回収してくれないのか……そう思っているうちに足元の床もバラバラとヒビを立てて割れていき、身体が真っ逆さまに落ちていく。


______


痛……視界がいきなり明るくなってビックリした。


「うおっ!どちら様……?」


『えっと、私だ……ヘンドリックだ。』


目の前に居た牛のような筋肉質な男。彼はヘンドリックと名乗った。声は野太くておっさん丸出しだ。


『どうやら、ミツキにかけられた呪いがさっきので解けたようだ。まさか、身体も生前のまま復活すると思ってもみなかったが。

けど、天上世界に戻れるにはまだ足りないようだな。』


「……えっと、救世主様?」


「その救世主様っていうのやめてくれないかな?俺は、救世主でもなんでもない(できればゲームに関わりたくないと願う)ただのモブ以下の存在なんだから。」


『おい、和気あいあいと話をしている暇もないみたいだぞ!お前ら、周りみろよ!』


「「あ……」」


周りを見ると、“光輝く奇跡”の隣の教会の地下か何かだった。


「おお、司教様の祈りが通じて神の贄が舞い降りた!」


「この贄達を捧げれば……神が復活する!」


「「「「「「「おおおおおおおお!」」」」」」」


ふざけるな、噛ませ犬の祈りで俺らが降りてきたんじゃねぇよ!


「おい、ヘンドリック…これは一体なんだ。」


__ルミナリアの奇跡、『戦乱に溢れ、人心が強者から離れし時、敬虔なる信徒の祈りを聞き届け現れし神の贄を捧げれば、神は助けるだろう』と言われているものを起こそうとしている事は分かっていたが聞いた。もう実際に、暴動を扇動して戦乱に溢れ、人心は洗脳され騙され領主から離れている、そして敬虔なる信徒達が祈って私達は現れた。

目の前のこれらは得たいの知れない私達と同じ人間とは感じられなかった。


『フム、恐らく彼らの祈りとあの謎空間の崩壊が変な形で繋がって本来ならこの伯爵領内のどこかに落ちる予定だったのが引き寄せられてしまったようだな……。

そして、私達を贄にして神を復活させようとしている。__まったく、天上世界の住人となったから言える事だが、非効率この上ない。私達を召喚するのに何人の未成人ビギナー達を犠牲にした……』


「……エレノア、そしてあれはゴンザレスか。」


遠く、歓声に包まれる人々の向こうに彼女達の姿があるのを発見した。




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