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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
3.5章:神々の間では……
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人形姿の眷属と異世界転移者


__大陸暦1831年、12月。あのいわく付きの屋敷での出来事ももうかなり前の出来事として、記憶から薄れつつある。

そんな中で私、山内信一郎は今とてもイラついている。大事な事なので2回言う、とてもイラついているのだ!そのイライラの元凶は目の前にふてぶてしく立っている可愛らしいお人形さんだ。


『おいおい、そんなにイラつくなって!』


可愛らしい容姿とは裏腹に愛想のないしゃべり方をするこの憎々しい人形、ただの人形ではない。いや、むしろ人形でもない。その正体は、管理者の眷属ヘンドリック=オンリバーン様なのだ。


「イラつく以外に私はどうすれば良いんだ、あんたがそんな姿してるせいで俺は可愛らしい人形を愛でる幼女趣味でもある奴だと見られてるんだ!責任取れ!」


『そう言われても呪いが解けないからどうしようもない。この姿じゃネジを回してもらわないと歩く事も話す事も出来ないんだから、おまけに魔法も鑑定スキルを除いてほとんど使えない……』


歩けた所で3歳児に負ける速度だからあんまり意味ないと思うしね。


「ウルセー!慰謝料払いやがれ!」


精神的苦痛は充分に貰った、金を要求しても罰は当たらないと思うが……ダメ、ダメですか。あ、そうですか……。


『お前がすべて救うまで、は、ここに…私も、居な、ければ…__』


「はぁ……ネジを回さねぇとならねぇか。」


本当に面倒だ、いちいちネジを回さないとならないのも。


『ありがとう……済まないな。

えっと、あの……そうだな、せめてどうしてこうなったのか、話しておこうかな。』


「おい、どうしたんだ?この数ヶ月話したがらなかったのに。」


『いや、そうは言ってももうさすがに心の整理がついた。話しても良いだろ、そう思ったんだ。』


「……心の整理遅すぎだろ、何ヵ月経ったと思ってるんだ。もう3ヶ月近くは経ったぞ。」


『そうは言ってもな、私も大変な眼に遭ったんだぞ。……それに、ここ数ヶ月指令が無いだろ?次は、私も君と手を結んで解決しろと神様が言っているんじゃないかと思ってな。』


人形(ヘンドリック)の心変わりに驚きつつも、神様(管理者)はあんたの上司だろと心の中で突っ込んだ。


「あー、じゃあ早く話してくれよ。話した所で俺に掛かった疑惑は晴れないがな。」


『まぁまぁ、そう拗ねるなよ。って、あ__』


「おい、さっき巻いたばっかだろ!」


『いや、そうではなくてだな……』


またヘンドリック様の声が不自然に止まった。こういう時ってなんか嫌な予感を感じるんだよなぁ………気のせい、気のせいならいいのだが、そう思いながら振り向くと気のせい……などではなかった。__例の如く、エレノアの姿があった。


(……エレノア、お前は間の悪さの天才なのか?)


それとも、何か、お前はストーカーか何かなのか!重要な局面に何故お前は現れるんだ!


「え、あの……シンイチロウ、やっぱりお父様に給料アップ頼んでみるから……こんな薄給じゃ人形を慰めにしたくもなるよね……」


「いや、ちがっ!そういうんじゃなくてだな……誤解だ!」


眩暈がしてきた。何故俺はこんなに焦っているんだ、この態度が自分が身に受けてきたあらぬ誤解を増やしていた?……そうだとしても気づくの今更だな。


『プハハハハ!ああ、面白い!お前を見ていると死ぬ前の事を思い出して面白い!』


「笑い事じゃありません!あんたな、誰のせいでこうなってると思ってんだよ!」


『あまりに勘違いされ過ぎて笑えてくるよ、ククク。』


人の耳前で笑うのはやめてほしいと思う。

うるさい、あのねぇあんたのその可愛い声は私だけじゃなくて皆に響いてるんだから、ちょっとは自重していただきたい。


『おっと、エレノア嬢…今の今まで自己紹介もせずに失礼した。私は、ヘンドリックという……今は管理者ミラーナ様の眷属をしている、よろしく頼む。』


「は……えっと、これは一体どういう事……」


エレノアは突然の事で激しく狼狽している。

無理もない、人形が急に普段とは違って男らしく話し出したのだから。


「おい……スベってるぞ。

お前、自己紹介とかしてこの状況がなんとかなると思ってたのか!バカなのか!」


『いや、再会してから常々思っていたが、管理者の眷属に向かってお前も随分な口の聞き方をするな……。』


狼狽えて話にならないエレノアになんとか状況を理解してもらうにはかなりの時間を労した。

エレノアの適応能力には驚かされる、神様だとか眷属だとか呪い、この時代から過去の産物と否定されつつある存在を目の前にしてもその美点はピカリと輝きを放っていた。


「えっと、つまり……この人形は管理者と呼ばれる私達が神様と思っている御方の遣いって事?」


『うん、だいたいそんな感じだな……あ、すまないがそろそろネジを巻いてくれ。』


「面倒な仕組みだな……」


そう言いながらもギギギと音をさせてぜんまいを巻いて、ヘンドリックの言葉を待った。


『……なぁ、シンイチロウ。人を信じすぎてはいけない、私がこれから話す事も嘘かもしれないぞ、それでも聞くのか?』


数分待って出てきたのは、今までの話の流れからそれた何の脈絡もない言葉だった。


「何言ってるんだ、あんたは人成らざる者じゃないか。今まで神様だとか幽霊とかそんな非科学的な存在に散々会ってきたんだ、信じるより他にどうすれば良い。__それに、聞いた所で本当か嘘なのか私ごときには判断できない。」


「そ、そうよ……!なんならシンイチロウの存在だって非科学的な存在だもの!」


『フッ!……そうか、なら良い。

君達の他にも私の存在を認めてくれる存在は出てくれば良いがな、例えばアベルとか。だが、世の中はそう上手くは行かないもんなんだ。』


ヘンドリック様のステータスの欄には、レミゼ王国の貴族だったと職業欄に書いてあった。エレノアの妹セイラの婚約者ルイの祖父にあたるアベルも元はレミゼ王国出身と聞いた、この2人は何か繋がりがあったのか……?


「アベル様に昔何かやったのか?」


『何故そんな……あ、そうかミラーナ様からスキルを貰ったんだったな。それで彼のステータスを見たのか……』


「いや、見ていない。」


『そうか、まあ今の反応ならば悟ってしまったかもしれないが、昔、人間だった頃に彼とは面識がある……だが勘違いをするな、彼に何か悪い事をしたのではない。私が彼が闇の餌食になる原因の1つを作ってしまった、その事を謝りたかっただけだ。』


見た目は人形なので感情など分からない筈なのに、彼が泣きそうになっている事まで読み取れた。


「人間だった頃に……なんだか、妙な縁ね。でも、きっといつかその機会もやって来るわよ!」


エレノアはアベルが頑固者だという事をよく知っているので、ヘンドリックを慰める為にそう言った。


『慰めなど要らないよ。期待せずに待っている。

さて、話そうか………私がどうしてこうなったのかを。

あれは、君達があのいわく付きの屋敷へ出発し始めた頃まで時を遡るのだが__』


ヘンドリックは深刻さを滲ませて話を始めた。




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