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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
3章:いわく付き屋敷の大パニックを解消せよ!
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いわく付きの屋敷に侵入して


「今までありがとうございました、これ少ないですけど……。」


「いや、こんなに貰うなんて申し訳ない。君が困った時に使いなさい。」


翌朝、フィールド一家に別れの言葉を言って、あの屋敷へと戻る。

別れる間際、幼き日の攻略対象ヨルドが『おじさん、またきてねー!』と大声でブンブンと手を振りながら言われましたが、それは勘弁しておきたいことだ。


(いや、私はヤンデレ化する予定の君に会いたくないよ!)


将来、ゲーム内でそうなるルートがある君に近寄りたくすらありません。むしろ、こっちから願い下げだ!御礼金を多めに渡そうとしたのだって、もう二度と会いたくないので最後にありがとうという意味を込めて渡そうとしただけだ。

せいぜい約10年後、ヒロインにどっぷり漬かった君に会うことがないように、私は精一杯の信仰心をひねり出して祈っておくよ。………まぁ、その時にはこの世界に私が居るのかもまだ分からないけどね。

……さて、思わぬ人物に出会ってしまったが気を取り直して屋敷に向かおう。


(そもそも本題は犯人を見つける事だしな。)


そう、幽霊アマーリエとの会話で“犯人を見つける”と約束と言えるほどの物なのか分からないがそう言ってしまった。だいたい、アマーリエの事を抜きに考えても私が犯人と(いうことに)なってしまっているのだから、その誤解は今後の為にも解いておくべきだ。


「うわ……最悪だ。」


洞窟の近くまで来て立ち止まった。

洞窟の周りに人だかりが出来ているからだ、ニュースでよく見かける殺人事件現場の前みたいな状態だった。黄色い規制線は無かったけれどもロープのようなものがあり、『この先、立ち入るベカラズ』と木の立て札まであった。警察官みたいな人までいる。


「何があったんですか?」


「いやぁ、なんか洞窟が麻薬の密取引に使われていたみたいでね、もう近くの村中大騒ぎなんだよ!」


とりあえず近くにいた村人Aに声をかけるとこういう返答が返ってきた。


「それは大変でしたねぇ……」


大変も何もその取引現場に遭遇してこっちは殺されかけたんだが………そう言うのもややこしい上にめんどくさそうなので、あくまで他人……私は他人です。


「本当だよ、いやぁ旅人のおたくは知らんでしょうけど、あそこは魚釣りの隠れスポットみたいなもんなんだよ。……そこを潰されたっていうんで釣り好きの皆怒ってるんだよ。」


「はぁ……なるほど、そうでしたか。」


食べ物の恨みは怖い、そしてファンと呼ばれる存在を敵に回すのは恐ろしい事だ。特にアイドルなる存在に興味は無かったのでそちらはよく分からないが、食べ物の恨みが怖いことは分かっている。娘のプリンを勝手に食べてしまった結果、家から追い出された。食べ物の恨みというのは、本当に怖かった……まさかパジャマのまま家から蹴り出されるとは思わなかった……。ちなみにどうでもいいことだが、その時のパジャマの柄は水玉である。


「昨日の夜のうちに自警団が到着して、調べてるみたいで立入り禁止らしいんだよ……この前の大雨の落石さえ直れば、おっきい街から警察が来るんだけど、あの状態だからねぇ。」


自警団とは地方の有力な地主さんが持っている村を守るための私兵みたいなもので、警察は国や領地を治める貴族に雇われている(おおやけ)の組織だ。


「はぁ……そうですか。」


名前も知らない村人Aはお喋りが好きな男みたいだった。例えるならクラスに1人はいるお調子者ポジションになれそうなタイプだ。こういうタイプの男は正直苦手だが、この際そんな人の好き嫌いをぶつくさと文句を言ってられるような恵まれた立場ではないことは分かっている。


「まったく物騒な話だよな……のどかな村の近くでそんな事が行われていたなんて、許せないよ。」


「……………」


村人Aの話をあらかた聞いた後にお礼を言って、近くの村に立ち寄った。

村に来てから、先程の村人Aの言葉を思い出す。『のどかな村』……多少彼の主観が入っているとしても、大帝国時代の要塞跡に建てられた地下牢付の幽霊がうようよ出るお屋敷がある時点で“のどかな”という表現はいかがなものかと思う。

でも、まあのどかだねぇ。あっ、ちょっとそこのお婆ちゃん、家の戸締まりくらいちゃんとしてから出掛けて…そこの若者、それは流行りなのかい?なんだか間違った文明開化をした人とか高校デビューに失敗したって格好してるからやめた方が良いと(中身46の)おじちゃんは思ってるよ!


「さて、何処に行こうかな?」


村に来たのは良いがやることがない。

やること、まずは食事をして携帯食料を買おう。食料はあればあるだけ良い。

村の食事処で親しまれていると噂の食堂によることにした。店に入ると『いらっしゃい!』という威勢のよいおじさんの声がした。


「んーおいしい。久々に肉を食べると生き返るなぁ!」


フィールド一家の家では硬いパン、その前は地下牢の中で食事すら取れなかった。

久々に生き返った気分だ。柔らかい旨味が舌に乗って胃袋へと流れていった。


「まず、今すべきは……2つか。」


顔を隠せる服を買う、そして洞窟内へなんとか忍び込んで隠し通路まで逃げ切る事。

出来れば顔は隠しておきたい、行方不明の犯人が現れれば騒ぎになるだろう?

隠し通路に関して言えば、他にも入口が存在するのかもしれないが、その存在自体知らないので探しようもない。


「よし、腹ごしらえはした。」


とりあえず、服を買う。

適当に見繕った黒いローブを購入した、魔法使いにでもなれた気分だ。そして、革の靴も。何かの本に革の靴の方が足音がしにくいと書いてあったような気がするからだ、靴は新品で当たり前だがピッカピカだ。


「後は夜になるのを待つか……いや、武器とか買っといた方が良いかな?確か、俺の攻撃力めちゃめちゃ低かったし。

鑑定(ステータス)……!」



《山内信一郎

level:1(MAX)

種族:人間(異世界人)

年齢:46(見た目は29、中身は中学生レベル)

職業:メスリル伯爵家使用人、前衆議院議員。

称号:異世界から来た者、“(アマテラス)”に嫌われし者、“(ミラーナ)”の祝福を受けた者

状態:異常なし

体力:107/107

魔力:15/15

攻撃:26

防御:83

素早さ:76

運:50

スキル:初級鑑定、究極の偽装、究極の言語理解

持ち物:普通の服、黒いローブ、携帯電話、携帯食料》


「確か、普通が50くらいなのにその半分しか無いって俺の攻撃力どうなってるんだ?」


……本当にどうなってるんだろうか。もしかして、私の攻撃力は女の子並みなんじゃないか?


「武器、買っておいた方が良さそうだな……」


武器屋に行ってから、武器を見る。もちろん全部“初級鑑定”を使って、お金が足りる範囲で1番攻撃力が高そうな武器を買っておいた。

“鉄剣”を装備すると、攻撃力は26から39に上がった。この国、銃刀法どうなってんのかな?平和な日本で育った私からしたら装備することそのものに言い表せない抵抗がある。


「無いよりはかなりマシだ……」



そして、夜……自警団の連中は夜になると酒場に集まって酒を飲むらしい、そういう柄の悪い連中が多いという情報を村人Aから手に入れた私は忍び足で洞窟近くに来てみる。


「……っ!さすがにこの剣は自衛の時以外使いたくないな。」


初級鑑定と目視で見る限り、洞窟の見張りに居るのは2人。

とりあえず、第1段階として音でも立ててそちらに注意を向かせよう。


___ガランゴロン!


「「何の騒ぎだ!」」


うわぁ、なんか予想以上にデカイ音が立った!

あ、けど今のうちに。

洞窟内にするりと入ってからドンドンと岩に体当たりをして隠し通路になんとか忍び込めた。


「ハアハア、これだけで寿命が30年くらい縮まった………疲れた。」


予想以上に疲れていた、心臓が鼓動を早めて息が荒くなってくる。深い息を吐いて、強張っていた身体を揉みほぐして、また再び息を吐いた。

相変わらず不気味な通路だ。なんか不穏というかただただ誰かに見られているような雰囲気すら感じる。


鑑定(ステータス)……便利だな、コイツ。魔法って訳じゃないから制限なく使えるし……ってええ!?」


《大帝国時代の某砦の隠し通路:今から2000年くらい前に造られた通路。今の技術から考えられない卓越した技術が使用されている。作製者は異世界の英国からきたケイトリン=マックスエバー。》


「……ケイトリン=マックスエバー何者なんだ?

俺みたいな転移者なのか?……こんな屋敷の構造とかを含めても絶対に現実世界であり得ない構造の通路が造れるって事はチート能力でも神様くれていたんじゃないの………何この扱いの差!

俺なんか鑑定と偽装と言語理解だけなのに、ズルい!」


この屋敷の謎は、異世界転移者のチート(?)のお陰と分かった…日本語で書かれた本もそういう人が記したモノだったんだろう。

道を歩いて、階段を登っていく。確かこの先に、あの忌ま忌ましい地下牢が存在している筈だ。

扉の前に来て、耳を済ませるが誰かいるような感じはしない。不気味なくらいに静かだ。

剣の柄を握りしめてから、地下牢内部へと忍び込んだ。


「ヒイイイイイ!」


「ヒヒ、何者だい。」


驚きのあまり言葉が出なかった。

何故だ、何故ここにエレノアとツキが囚われている。2人の身体には生傷が見えて、痛々しさを感じる。


「わ、私だ……シンイチロウだ。」


ああ、そうだった。姿が分からないようにローブを着ていたんだ、中々脱げないローブにもどかしさを感じて舌打ちをしたい衝動に駆られたが、なんとか堪えて、ローブを脱いで、シンイチロウだと証明する。


「……言いたい事はあるだろうけど、その話は後。私が居なくなった2日間に一体何があったんですか!どうして、こんな眼に………!」


青白く、今にも倒れそうになる自分を奮い立たせてジクジクと痛くなった胃を押さえつつ聞く。


「ヒヒ、ヒヒヒ……本当にその前にそっちの話を聞きたいくらいだ。どうして、隠し扉なんて知っていたのか、そっちの方から知りたいけど……口を割りそうに無いね。じゃあこうしよう、ここから出してくれたら話をしても良いさ、ヒヒヒ……。」


「ちょっと、ツキ……そんな言い方ないんじゃない。」


「良いじゃん、こんな地下牢や隠し通路があることも誰も知らなかったのに、我が物顔でこの男は入ってきたんだからそれくらい言うことを聞く権利あるだろ?」


なんか随分と仲良くなったな、お前たち。

まずは錆び付きの酷い所を鑑定してから、持っていた鉄剣をそこを目掛けて振りおろす。


____ガキン!


ボロボロに錆び付いた格子は案の定すぐに折れた。


「ヒヒ、ありがとさん。」


「じゃあ、私達がこんな眼に遭ったのか話すわ。2日ほど前……貴方がジョンおじさんに連れていかれた日の夕食後、あれは___」


エレノアは顔を歪めて、眼を伏せながら話し始めた。





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