表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
3章:いわく付き屋敷の大パニックを解消せよ!
30/165

危機的状況で入手したRPGの力


ピチョーン…ピチョーン……何処からともなく聞こえてくる水の音、私山内信一郎は地下牢に幽閉中でございます。要するに生贄って奴です、こうして冤罪は作られていくという事を身をもって体験しておる所です。


「………おい、ちょっと待て。お前は、お前は何をしようというつもりなんだ………?」


引き留めたその姿、知らない女が1人だけ私をこんな眼に遭わせているジジイの後ろにまとわりつくように存在している……何故か誰にも見えてないみたいだけど。


「だから、君は犯人だと言っているだろう?」


いや、お前じゃないんだよ……もう冤罪を着せられる事は分かっているから……。ジョンおじさん、お前の後ろで不気味な気持ち悪い笑みを浮かべているその女に用があるんだよ、俺は。


『……………』


女は何も言わない。

だけど、その女は“アマーリエ=ベイジン”なんじゃないかって直感だけはした。

真っ黒なカラスの翼色の喪服を着て、ヴェールをかぶっているので顔立ちなどはハッキリとは分からない……のだが、何処をどう見ても禍々しいオーラしか感じないのは気のせいではないのでしょう………。

これが見えていないジョンおじさんや他の面々を少しだけ羨ましく思った私がここに居ます。


「……逃げる事は許しませんよ。」


ジョンおじさん(とアマーリエ=ベイジン(?))が地上に帰っていって、私は見張り番の老女アデルと共にこの冷たい地下牢に残されてしまいました。

冬じゃなくてよかった……冬だったら霜焼けになって手と足が死んでいた。……ってそうじゃない、とにかくここから抜け出さないと今は生かしてもらえているが、いつ殺されるのかも分からない。こんな冷たくて寒い所にいつまでもこのままという訳ではないでしょう、あちら様も。


「暇、暇だしどうしよう……あ、俺オルハさんを殺したりしてませんよ?だからここから出してくださいよ!」


「私の権限ではなんとも……それに、私とおそらくエレノア様とツキ様以外の皆様はきっと貴方=犯人だと騙されていましょうから、ここに居た方が安全なのでは?」


出してもらえないのか………。

今のところ全員容疑者な上に、私犯人に仕立て上げられたからな、危機的状況だ。


「はぁ……私、どうしたら良いんだよ。このままじゃ帰れない。」


「帰る……?」


「何でもない、こっちだけの話。」


………沈黙がツライ。

そもそも、お喋りは苦手なんだよ。

何故こんな眼に遭っているのか…本当なら数日で首都ランディマークに帰れる筈だったのに、と内心かなり戸惑っています。

そうして時間はドンドンと経っていき、おそらく夜になったであろう頃……長い長い沈黙状態は解かれた。


「……旦那様より、夕飯を持ってくるようにと命令されておりますので…。」


アデルが一時的に地上へと出ていったのだ。

これはチャンスとばかりに、牢内の何処から脱け出せそうな所を探していくのだが……


「この鉄格子が錆びているくらいか……。棒と布があればテコの原理とかでなんとかこいつを曲げることくらいは出来そうなんだが、布は服を破くとして……棒が無いな。」


「……そして、食事ってなんか怪しいな。」


私は、ここまで至れり尽くせりな待遇を受ける身の上ではありませんよ?現在、伯爵家使用人兼重要参考人な立場ですから。

怪しい、かなり怪しい……何か混ぜられていてもおかしくはない。


(絶対に食べないでおこう………!)


そう決意して老女アデルが来るのを戦々恐々として待っていた。気分だけで言えば、死刑宣告を受けた死刑囚だ。


「食事です。お召し上がりを。」


見た感じ普通の食事だった、パンにサラダ……おかずの肉、一般的な家庭に出される一般的な食事。そして……酒。食前酒にしろというのか?酒など飲ませてもらえるような厚待遇を受けたつもりもない、そして食前酒が出るくらいなら食事をもっと豪華にしてほしかったと心の中で文句を垂れる。


「後で食べる、食事の時間くらいこちらで決めても良いだろ!」


それくらいの権利は保障されていても良いのでは?私は家畜などではない、出されたときに食べろと教え込まれた覚えもない。


「……だめです。今すぐお食べなさい。」


「……まったく、ここは自己決定権すら保障されていないのか?」


「いいから早くお食べください。」


何なんだよ、このババア!

老女は私の前髪をつかんでから、食器にそのまま顔を押し付ける。


(マジもんの家畜扱いじゃねぇか!)


口には含んでいない、なんとか含むのだけは回避出来た。…が、このババa…ゲフン、ゲフン…老女はゾンビか何かなのか、押し退けても押し退けてもこちらに突進する勢いで向かってくるのだが!


『__スキルを取得しました。』


謎の電子音のような物が頭の中に直接聞こえてきた。スキル……RPGとかでありそうな奴か?

ぐっ………!頭を抉られるような痛みがした後、辺りは急に静かになった。水の音も、1日中どこかの隙間から入り込んでいた風の音も急に聞こえなくなった。

………いや、先ほどからこちらに突進しようとしていた老女も動いていない。停止ボタンでも押したかのような状態で動けていないのだ。


______


『やあ、久しぶり……半年ぶりくらいだね。』


目の前に管理者ミラーナ様の姿があった。

実体ではなく、幽霊のように透けている状態だったけど………。


「あ、どうも………えっと、その姿は一体何があったんですか?ゴミみたいな格好になってますけど。大丈夫ですか?」


ミラーナ様は着衣は乱れているどころではなく、服が裂けて町を歩けば露出魔と間違われかねないお姿をしていた。


『ゴミみたいなとは酷いなぁ。これでも神様なんだよ、僕は。

えっと、“アマテラス”と色々とあってこのようなあられもない姿になっている訳なんだが、ちょっと良いかな?僕は干渉などしない……そう決めていたのだけれども、そうは言っていられない状況になってしまっている。』


「えっと……はぁ、そうですか。」


生返事をしたが、思い当たる節はある。眷属のヘンドリック様とアマテラスの眷属とおぼしき女が戦闘状態になっていたり、幽霊(?)らしきモノまで見えるようになるなど最近はカオスが襲っている。


『アマテラスにも困ったもんだよ、君を死なす気満々だから。でも、僕がそんな事はさせないから。君に力を与える……大した力じゃないし、君が想像しているような力を与えることは出来ないんだけど……。』


「RPGみたいに炎を出したり雷を落とす事は出来ないんですか……」


それは残念だ、異世界に来たのならそういう力を使ってみたかったのだが………。

いや、それよりもアマテラスが俺を殺す気満々な方が気になるのだが。


『期待に添えなくてごめんね。

この世界で、そういう人体を攻撃するような魔法は使えないように設定してある。この世界での攻撃魔法の限界は精々、スプーン曲げとか超能力と呼ばれるモノ程度だ。

君には、鑑定のスキルをあげる。『鑑定(ステータス)』と言えば、発動される筈だから…。

ごめん、これが僕の限界なんだよ……君にか…かか…干渉出来るのは、この程度だ。ほほ…本当にごめん。』


「だ、大丈夫ですか!?最後の方とかノイズで音声が乱れてましたけど!」


大丈夫なのか本当に心配になってくる、見ていられない。


『心配してくれて、あ、ありがとう。

役に立たない力、だけど…君が…き、君なりに…活かして使えば、なんとかなる筈だから……。』


「本当に……なんとかなるんですか?」


『酷い奴だ、僕を疑うとは……。

……っ!痛っ……!もうそろそろ限界がきた、頑張ってくれ、健闘を祈っているよ。』


そのまま、ミラーナ様は光の粒子に包まれてから消えていった。


_________


「……っ!」


再び、脳天を痺れさせるような激痛が走った後、意識は地下牢に戻った。

そして、突進してきた老女アデルを避けてから呟いてみた。


鑑定(ステータス)!」


《山内信一郎

level:1(MAX)

種族:人間(異世界人)

年齢:46(見た目は29、中身は中学生レベル)

職業:メスリル伯爵家使用人、前衆議院議員。

称号:異世界から来た者、“(アマテラス)”に嫌われし者、“(ミラーナ)”の祝福を受けた者

状態:軽度の空腹、疲労

体力:43/107

魔力:15/15

攻撃:26

防御:83

素早さ:76

運:50

スキル:初級鑑定、究極の偽装、究極の言語理解

持ち物:普通の服、携帯電話》


「うぇぇ……これで、なんて反応すれば良いんだろ?究極にハイパーインフレ起こしている訳でなければ、カスみたいなステータスとも言えない。基準が分からないからなんとも言えないけど……。それと、神に嫌われてるのに祝福されてるってどういう事?矛盾してる!」


そうやってため息をついていると下に概要説明(マニュアル)の欄があることに気づいた。


《体力は基本的に男は100前後、女は70くらい。魔力はだいたい10前後だけど魔力があったところで才能がないと使えない。攻撃は大抵は50くらいあるものだけどね。防御と素早さはだいたい攻撃と同じくらい。運は皆50!

初級鑑定:周りの人のステータスを見ることが出来る。

究極の偽装:自分のステータスをほぼ完璧に偽装する事が出来る、まあこれ使ってバレるのは管理者くらいだね。

究極の言語理解:どの世界の国の言葉でも理解できる。我輩の辞書に分からない言葉は無い!》


「おい、俺……防御と素早さに使いすぎだろ!攻撃に分けてやれ、その数字を……。」


あ、そういえば今のこの状況を忘れていた。

危機的状況をどうやって打破するのか、一応食事を鑑定してみたのだが……


《毒入りの食事:全部毒だらけ。キャベツの芯だけなら死なない程度の毒しか含んでいないので食べられないこともない。

惚れ薬入りの食前酒:超強力な惚れ薬が入っているそれなりのお値打ち物の赤ワイン。》


「食えねぇ……」


うわぁ……口に含まなくてよかった。

私が胸を撫で下ろして安心していると、なんか騒がしいような雰囲気がしてきた。


「何事だ?確認してくる、動くなよ!」


アデルはそう言うと、私を置いて地上に戻っていった。


「動くなと言われて従う馬鹿がこの世のどこにいるんだよ!

鑑定(ステータス)!」


私は鉄格子を鑑定する。


《古びた鉄格子:雨水に浸食されてだいぶ錆びてる。弱点(weakpoint):衝撃、そして水など。》


「衝撃ならキックすればなんとかいけそうだ……水?液体状の物がない、あ……あった。」


お値打ち物のワインを無駄遣いしたくはないが、人命優先だ。ドボドボとワイン鉄格子に掛けてから、持てる力全てを以てキックした。


___バキン!


古い格子が折れて、人1人がようやく通れるほどの隙間を作ることに成功した。そして、老女が慌てて登っていった階段を抜き足差し足忍び足で登っていくとわずかながらに地上の声が漏れ聞こえてきた。


「本当に、旦那様が亡くなったの?サラ、ハッキリと答えなさい…。」


「はい、先程…書斎で毒入りの酒を飲んで死んでいる所が発見されました…。」


「なんて事…。旦那様まで死ぬなんて…」


「あの、シンイチロウさんはどこに…まさか、旦那様が言っていたように彼が犯人なのですか!?どうなんですか、答えてください!」


「さあ…私はなんとも。」


「なんともではありませんよ!」


サラ、君に下の名前で呼ばれるほどに何か親しくした覚えなどないのだがとりあえずありがとう。このまま、お喋りで時間を稼いでおいてくれ。


「さてと、逃げられそうな場所を探さないと……」


そんな場所があるのかも謎だったがとにかく地下牢内に無いのか、まず探すことにした。

スキルを使わずに見た地下牢の印象はしばらく使われていなかったのだろうという程度の印象、変わった所と言えば…地下牢に不釣り合いな絵画が飾ってある事くらいか。


鑑定(ステータス)


………鑑定してみると、どうやらこの絵には何かあるようだ。

見た感じはボロボロになった絵。書かれていたのは女性だったことだけ分かるが、傷みが激しくそれ以外の情報はない。

ペタペタと絵を触って確認していると、丁度女性の左眼の辺りを触った時に何かカチリと音がした。右眼の方にも触れてみると、同じような音が……。


____ガガガガガガ。


そうして眼にあったボタンを押して現れたのは、隠し扉だった。

俺、初級鑑定の力に頼りすぎじゃない?……まぁもらった物は活かさないとダメだろうから、良いのかな?






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ