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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
3章:いわく付き屋敷の大パニックを解消せよ!
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遂にバレた俺の正体!


夜の怪談話の途中、『屋敷の奥さま』という話を語ろうとしたオルハが死んでしまった。それとほぼ同時刻に舞い込んできた3つ目の指令、屋敷で起こる怪談の謎を解け……指令の意図が分からない、今までは一応人助け的な指令だったのに、これはまるで謎解きみたいな内容だ。


(………俺にホームズの真似事をしろって言うのか、俺は謎解きなんて出来んぞ!)


今まで運と周りに恵まれて乗り切ってきた人生だ、壁にぶち当たる事すら殆どなく色々な人々に守られて生きてきたのが裏目に出たとも言えなくはないだろう。これまでのやり方では切り抜けられそうにはない、やり方を変えて行く必要が出たという事なのだろう。

………扉を開こうとドアノブに手をかけたまま意識が飛んでいた、現実に思考が戻ったのと同時にエレノアが目の前にドアップで映りこんできたのだから驚いた。


「何かご用ですか?」


「貴方、何を隠しているの……あの変な音、あれは貴方の方からしていたわ。他の人はオルハさんの事で気付けていなかったけど。」


変な音、多分ガラケーの着信音の事だろう。胸元にあるそれを見せて、自分の正体をばらした方が良いのだろうか?それともここでとぼけるか、選択肢はその2つしか無かった。


「ねえ、教えてくれない?それとも無理?無理なら話さなくても良いわ、話せる時が来たら教えてくれればそれで良いから。」


グッと腕を掴まれる、その思いもよらない強さに顔をしかめた。

話すべきか、話さないでおくべきか。普通に考えれば『話したくない』その一言で正当化されるが、『いつか俺が7人救えば、この世界に別れを告げなければならない』この事を言わずに隠してはいられないと話すことを決めた。


「…………分かった、話す。話すよ、話すからその手を離してくれないか。別に逃げも隠れもしないから。」


「あ……ごめんなさい、本当に無理に話さなくても良いのよ?」


「いや、いつかは話さないとダメな事だと気づいたんだ。今話しておいた方がいい、そう思う。」


こうして、今までの事を話した。

そこそこの学生生活を送り、そこそこの企業に入社し、父の秘書を経て議員になるが、落選して不幸に見舞われ、新年早々のおみくじで大凶を引き当てて破り捨てたのが原因でこの世界に飛ばされたと。もちろん、実年齢が46歳だという事も。


「こことは、別の世界から来た……?」


「うん、7人救うまで帰れないんだよ。

俺としては、このままエレノア達と居たいけど、家族に会えなくなるのと、次の選挙で革進党の石崎博人(いしざきひろと)を倒さないとどうもスッキリしないからな。……あの若造に眼に物見せなければ、死んでも死にきれん!」


「あの……ホームシックにかかっている所申し訳ないんだけど、ちょっと言っている意味が分からない……。」


エレノアは突拍子もない、非現実的な話に頭がついてきていないようだ。まぁ無理もない、日本に限らず様々な国で古くから異世界転移という名称はつけられていないが、謎の世界に行く物語はあった。だが、そんな物語の中の体験をした男が目の前に居ると言われても『はぁ……そうですか。』という生ぬるい返事しかできない。


「いや、分かるんだけど納得して!もう無理矢理でも良いから事態を飲み込んでくれ。」


「いやいや、無理!!

普通に考えてご覧なさいよ、占いの紙を破いたくらいで過酷すぎない!?……それに、貴方が46歳というのも本当なの?それにしては、大人っぽくないというか……」


それは俺も同感だよ、いきなり人生ハードモードに突入してこっちだって精神的に参っているんだよ!そして、子供っぽくって悪かったな!俺は坊ちゃん育ちなんだよ、秘書に全て任せてきたから精神的に未成熟なんだ!


「46歳だっていう証拠ならここにある!」


こういう時こそ文明の利器の出番だ、携帯電話の中の写真を見せる。


「えっと……これは貴方のお父様とかではなくって貴方自身なのよね?話の流れからして。そして、この横の女は誰?」


「娘だよ、娘。……て言うかもういいか?その気の毒そうな顔止めてほしいんだけど。」


「え!?この娘が……全然似てない。」


確かに娘はこんな熊男に似ずに可愛い顔をしていたが、そんな病気で余命宣告されたんですねって顔でこっちを見てこなくても良いだろ。


「……ごめんなさい。それにしても、精巧な絵ね。」


「絵じゃなくて写真だよ。」


「え、え、写真!?写真って魂を抜かれるっていう噂のあれ!?」


何なんだ、その幕末の人みたいな反応は……。エレノアもいちいち大袈裟なリアクションだなぁと思ったが、ここは19世紀の文明レベル……写真だってその頃発明されたばかりだから案外このリアクションはおかしいものではないと思い、何も言わなかった。


「私が生きていた日本ではもうそんな考えをするのは、200年前の人間くらいだよ……。」



「___で、貴方はこの屋敷の謎解きを神様に依頼されたのね!というか、ウチの借金もオリンの件も神様の頼みだったなんて!言ってくれれば良かったのに、神様と私も会いたかったよ!」


いや、神様に会えるわけじゃないんだよ。こっちに一方通行で連絡が来るんだ。


「おい、人が死んでるんだぞ。そんなこと言っている暇ないだろ。」


「そうだよね………。ねえシンイチロウ、貴方は7人救うと居なくなっちゃうのよね?もし、ニホンに帰る事が出来ても私の事、忘れないでね。」


「ああ、約束するよ。」


エレノアの言葉に心がしんみりとした。


「ありがとう。ねえねえ、私をホームズにしてよ!ほら、貧乏伯爵令嬢探偵なんて良いんじゃないかい、ワトソン君!

このホームズ役のエレノア様が屋敷の謎を解いてみせる!」


………おい、10秒前のしんみりとした気持ちを返せ。

それにしても、さっきから思ったんだが彼女の切り替えの速さには驚かされるんだけど。考えてみれば、いきなり舞踏会会場に光と共に現れた得たいのしれない男を助けようと思う時点でただ者では無いか。


「ハイハイ、ホームズ役のエレノア様。」


とにかく、秘密を共有できる仲間が出来たことは私にも喜ばしい事だった。




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