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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
2章:若きダンディー執事の冤罪を晴らせ!
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あっけない冤罪立証


「それってさ、盗まれたんじゃない?」


もう飲みすぎてすっかりベロンベロンに出来上がっていたエレノアが言った、酒が入っているのに言っている事は案外マトモなのだから酒が弱い私はほんの少しそういう所を羨ましく思った。


「確かにそうやなぁ、これだけ探しても無いって事はそうなるな。そうなると………」


「クロハ様は心当たりでもあるのです?」


「ありすぎて分からん!」


ありすぎて分からないとは何なのだろう?それはかの令嬢が私を含めて嫌われすぎているから分からないという事なのか……?クロハに言うと苦虫を噛み潰したような苦笑いをしながら


「シンイチロウ、貴族にもな色んな種類があるんよ。まぁこういう時には使用人が真っ先に疑われるのは常識、そして大抵は彼らの仕業なんよ。でもな、たまに例外があるんよ。……招待客(貴族)の中に犯人が居たってパターンや、家が貧乏とか…相手に恨みがある場合がこのパターンなんよ。

普通に使用人が犯人やったら楽なんやけど、貴族なら面倒な事になるな。ドロッドロの泥沼争いに発展しやすいから。」


「確かに……そうかもしれません。」


これまで、この場所に妙なデジャ・ビュを感じていたのだがその違和感の正体がようやく分かった。魑魅魍魎渦巻くのが何となく永田町に似ているからかもしれない。


「とりあえず、一旦使用人の身体検査をしてみましょう。貴族よりも可能性が高い訳ですから。」


「それって、シンイチロウも含まれる訳やけど分かってるん?」


「あ、そうでしたね。じゃあ、私が1番最初に検査をお願いします。」


「いや、ウチが言うてるのはお前も含まれてるぞって事じゃなくてボディーチェックするのは、ウチの所のコイツで大丈夫かって事を言いたいんやけど。」


クロハの目線の先には、身長2メートルはあるであろう大男。身長170㎝弱の私とは体格差がある男だ。動物に例えるならゴリラとかそこら辺の動物が思い浮かぶほどにイカツイ顔の持ち主だった。


「この人は……?」


「ウチの使用人のゴンザレスや、見た目はこんなんやけど中身はめっちゃナイーブやからあんまりいじめてやるなよ。」


引き気味に問う私にクロハはゴンザレスをややかばいがちに紹介した。


(クロハ様はもしかしたら、浅黒い男だったら顔とかどうでも良いのかな?)


彼女の好みだというダンディー執事のオリン=ベアード=ミニスターもこのゴンザレスも共通項は浅黒い男だという事しかない。まぁ、雇うのは親だしボディーガードには最適だよな……見栄えの方は流石天下の攻略対象という事もあり、オリンの方が勝っているが。


「とりあえず、使用人棟の方に皆集めて身体検査や!」


ダンスホール内の貴族達の中に料理に手をつける者は居なかった、こんな茶番に巻き込まれてしまったからだろう。皆気分は沈んで多分マリアナ海溝くらいにテンションは下がっている。

そんな中で令嬢クロハは使用人棟にメイドから男性使用人(フットマン)まで集めて身体検査を始めると高らかに宣言した。


「でも、私達何もしてないのに……」


「心外です!」


そう不満の声をあげたメイド達の中にはローズという噂好きなメイドも居た。彼女にくっついていたマリーというメイドはプルプルとチワワのように震えている。皆一様に曇った顔をしていた。


「じゃあまずはシンイチロウ、宣言した通り1番最初に頼むわ。」


そうやってゴンザレスにベタベタと身体を触られるが、どうも気持ち悪い……というか何とも言えない気持ちになる。


「異常なしみたいやな、じゃあ次は順番的に疑われている……オリン=ベアード=ミニスターの番やろ、ゴンザレス頼んだで!」


オリンも何とも言えない顔をしていた、先程の私もきっとそういう顔をしていたんだなぁとぼんやりとして考える。


「異常なし……少なくとも彼が犯人ではないみたいや。じゃあ、次行こうか……」


そうやって皆嫌そうな顔をしながら検査を1人、また1人と受けていくのだがマリーの顔色はさっきよりも悪くなっていた。さっきは青い顔だったのに今は青とか赤とか通り越してまっ白……これ、医者に見てもらった方がよさそうな気がすると思い不安な面持ちで待っていると、マリーは泣きそうな顔になりながら


「申し訳ありませんでした!私がやりました!」


と大絶叫しながら自供した。

………さて、どうしたものか。犯人が見つかってしまったぞ。犯人はバーミリア子爵家の使用人マリーだった、盗んだ理由はお金がほしかったというありがちと言えばありがちな理由だった。


「何故、今頃自供したんや?良心の呵責とかそういうのか?」


「いいえ、違います。

こんな男にベタベタと身体を触られたくなかったんです!」


彼女は告白した。こんな男とは多分ゴンザレスだろう……。

いや、気持ちわかるけどそれを本人の前で言うのはいかがなモノかと思うぞ。本当にナイーブなんだな、隅っこの方で鼻をスンスンと鳴らして泣いているし……ちょっとこれ以上は文章で表現するのは止めておく、これ以上リアルに詳細を言うのは気持ち悪いので。


「ん?こんな男……?もしかして、ゴンザレスの事か?ゴンザレスはこう見えて女や!」


「「「「ええええええええええ!!!」」」」


爆弾発言である。

これで女なのか……でもよくよく考えてみたら彼もとい彼女の事をクロハは“使用人”としか言っていなかったな……。



_____その後、マリーは屋敷から引摺り出されていった。これで、オリンに新しい雇い主さえ見つけたらミッションコンプリートだ。

でも、私はふとこんな事実に気づいたのだ。


「あれ?そういえば、俺は何もしてなくない?」


そう、そうなのだ。

以前の借金返済計画の時も俺はただ屋敷の前に1ヶ月と半月ほど朝から晩まで座り込んだだけだし、今回もクロハに付いていっただけだ。犯人をあぶり出したのは俺ではなくゴンザレスである。


(これ、ヤバイな……何かしらのアクション起こさないと俺このままじゃ破滅するかもな。こんな博打みたいに運に頼りきりな方法じゃ……)


漠然としていた、心の奥底に封印されていた不安が表面に出た瞬間だった。






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