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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
9章:最終決戦、王の集いをぶっ壊せ!
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断罪~事件解決~


大陸暦1833年8月13日のマルチウス帝国王城の大広間にて、この日は月1度の拝謁にはまだ早い。しかしながら、女帝直々のお達しだというので大勢の貴族が集まっていた。

シンイチロウと昭美は隠密部隊『月の女神』のリーダーのオルフェウスと共に秘密通路からこの様子を見守っていた。エレノアの姿は何故か無い、一体どこへ行っているのだろうか?


「これでついに………」


「逃げ道はもう塞いでいる、大広間に入った時点でもう逃げられはしない。それと、君の事を襲って済まなかったな。」


「ん……いや、あれは俺も悪いので。さて、どのように彼らが断罪されるのかを見てみよう。」


「シンイチロウさん……」


「昭美さん、どうしたんだ?」


昭美さんが不安そうな顔をしていた。もう外堀は埋まっている、何を不安に思う必要があるのだろうか?俺は『何を恐れているんだ?』そう聞いた。


「シンイチロウさん、確かに断罪されるのはこの国にとって善いことなのでしょう。しかし、これが終われば……シンイチロウさんは帰らなければならないのですよ、私は“王の集い(KINGCLUB)”が壊滅しても心が晴れることはありません。神様がそれで私の敵討ちが済んで救われるのだと言うならば、それはただの自己満足です。私は、もっともっとシンイチロウさんと一緒に居たいんです。永遠に、死ぬまでとは言いません。でも、もう少しだけ……私は貴方と一緒に居たい。」


「昭美さん、それは……」


俺ももう少し…そう言いたかったがそう言えば俺の決意が壊れてしまいそうだったのでやめた。何も言わないまま覗き穴から覗き見た。


__________


マルチウス帝国王城の大広間は贅を尽くしてこの帝国の繁栄と勢いを象徴していた。その一室の1番奥にこの国で1番高貴な女帝ビクトリアーナは7歳のジョージア皇太子と共に重厚な椅子へと座っていた。下座には、大勢の貴族達が控えている。後で知ったが、この広間におさまりきらないほどの貴族が女帝のお達しだというので来ていたと知った時はたまげた。……なお、残念なことに病を押してやって来たマルキユス子爵(96)が広間に入ろうとした人に揉みくちゃにされて、そのまま壁に頭をぶつけて帰らぬ人となったという不幸な事故も裏であった。そのくらい、人々の関心は高かった。


「皆の者、大義であった。」


女帝の一声で、大勢が拝謁の礼をとった。隣の皇太子がその声でビクリとなっていた、幼さ故かもしれないがゲームでの彼を知っているシンイチロウは少し心配になった。


「うむ……今日、皆を呼び集めたのは悲しきことに私へ謀反の心を向け、先達よりの忠義心を失った者達が居るからである。」


謀反、その女帝の口から出た言葉にざわざわとざわめきが起こる。険しい顔をする女帝の顔を間近に見た貴族達はそれが恐らく証拠も出揃っていて本当の事なのだろうと感じた。そんな中、その不忠者の親玉であるノルマンディア公爵が言う。


「女帝陛下、その不敬者は一体どこの誰でしょうか?」


「その言葉、そっくりそのまま返してやろう。ノルマンディア公爵、まさかそなたが…従弟のそなたが私を廃する企てをしていたとは思わなかった。」


隠れているシンイチロウまで居心地の悪さを感じる。2人の間にはピリピリとした空気があり、逃げ出したくなる。ノルマンディア公爵は長い髪をサラリとなびかせて女帝に言い訳をしていた。


「女帝陛下、私の忠誠心をお疑いか!」


「黙れ!どこまで私を欺こうとすれば気が済むのじゃ!」


あれを、そう言って女帝は俺が手に入れた血判状と呪詛の品を目の前に置いた。ノルマンディア公爵の目は見開いていた。女帝は立ち上がって、ノルマンディア公爵の近くへ行ってから


「これが何か分からないわけはあるまい、ノルマンディア公爵……そなたは悪魔に魂を売ってでも皇帝になりたかったようだな。この血判状にはノルマンディア公爵以下高位貴族約30名の名と判が捺されている。……そして、血判状と共に私を呪うとは。」


「ま、まさか……!それは誰かが私を貶める為に用意した物です!陛下、どうか私を信じてください。」


血判状を見せつけた。ノルマンディア公爵はそれでもしらばっくれていた。その根性はある意味感心するが、しかしながら真相を知っているシンイチロウ達からしてみればこれほど証拠が出ているのによくもまあそのようにしていられるなと呆れる気持ちが多いのだが。


「………これでも信じぬか、では証人を呼ぼう。

連れてきなさい。」


そう女帝が言うと3人の人物が入ってきた。クライム元侯爵とエレノアとクロハの3人である。

その妙な組み合わせにどういう訳か分かっていない者達が多かった、女帝はその様子を見て状況を説明する。


「皆の者、ここに何故クライム氏が居るのかという顔をしているな。実は二月ほど前から宮廷で噂されていた妖精おじさんなる人物の正体はクライム氏である。彼は、そこのクーデター参加の血判状にサインした身ではあるが、彼らを静かに裏切り情報を流していた。それ故に彼らによって命を狙われて屋敷に火をつけられた。死ぬところをこのメスリル伯爵令嬢エレノアに救われ、女官として宮廷に上がっているマナセイン伯爵令嬢クロハの知らせを受けて私は彼を保護した。」


「……なるほど、言っていることはよく分かりました。しかし、何故クライム氏とおっしゃるのでしょう?」


比較的冷静に受け止めた貴族が代表して質問をした。エレノアとクロハは囲まれていてたじろいでいた。事前に連絡がなかったのだろうか、挙動不審な様子で周りを見回していた。


「彼は、火事の2日前に己の罪深さに戦き爵位返上を申し出ていた。私は、その時は何故彼がそのような事を言うのか分からなかったがマナセイン伯爵令嬢の知らせによって命を助かった彼に聞いて、その心を受け止めて意思を尊重することとした。つまり、ここに居るのは侯爵ではなくただの庶民のクライム氏である。……そういう訳で、ノルマンディア公爵以下ここに名前がある者を国家反逆罪で連れていきなさい。言い逃れはもう出来ない、女官長のターニャ夫人が公爵、そなたに情報を流していたと告白した!」


「私じゃない!私は唆されただけだ!」


「違う、公爵が我々にそうするように強制したのだ!」


罪が明らかになっても尚、言い逃れをしようとしている呆れた御方達は引きずられていった。広間には、白い服のクライム元侯爵とエレノアとクロハがまだ残っていた。女帝は、扇を口許に持ってきてため息を吐いた後に凛とした声で言った。


「クライム氏は既に爵位返上をしており、そこにいるクライム氏の長男に家督が渡ることはあり得ない。……彼は爵位を継承していないにも関わらず王宮へと出入りしていた。この処分の為、話を聞く必要がある。

クライム氏は侯爵でありながら私腹を肥やしていた、その罪は重い。しかしながら、クーデターを未然に防ごうとした功績などを鑑みて、非公開での死罪とする。

そして、メスリル伯爵令嬢エレノアとマナセイン伯爵令嬢クロハに此度の働きを讃えてメスリル伯爵令嬢にニフォールニア女男爵の称号を、マナセイン伯爵令嬢にはティグレー女男爵の称号を与える。

………皆の者、此度は集まってくれてありがとう。そういう訳なのでこれにて私の話は終わりだ。」


その後、拝謁の礼をとってゾロゾロと貴族達は帰っていった。__あっさりとした幕引きだ、シンイチロウはそう思った。


_________


その日の夕方、王城の一室にて。シンイチロウは集まっていた。女帝と彼と昭美とエレノアとクロハの5人、お疲れ様という気持ちを込めての簡単な話をするだけの集まりであった。


「“王の集い(KINGCLUB)”は壊滅状態だ、あれだけ証拠が挙がっていたら言い逃れは出来ない。………ありがとう。

しかし、あの指名手配中の元司教だけは逃げられてしまった。」


「陛下、俺はクロハをどうにか不自然ではない形で辞めさせたいと言ったのに何故、あのような結果に……?」


俺はできればオリンの願いを叶えて欲しいとクロハを解放して欲しいと願いをしたぐらいだ。女男爵にしろとは言っていない。


「あれが不自然ではなく2人が傷つかない手段だったので選んだのだ。普通に辞めては怪しまれる、だからエレノア嬢の所のそなたがクライム元侯爵を助け出したのだから主人の手柄となる、まあこじつけに近い理論ではあるが……ニフォールニア女男爵もティグレー女男爵は1代限りの名誉称号だ、あるだけで価値は無い。しかし、女官退官の理由の1つ、女で貴族の当主になってしまった場合にはちゃんと当てはまるし、マナセイン伯爵令嬢らが悪く言われるようにはならんだろう。」


「なるほど、そういう事でしたか……」


女帝は女性の地位向上を目指していた、ナショスト公爵夫人を優遇したりとしていた。これもきっとオリンの願いを叶えられるのとエレノアとクロハを女性の地位向上のシンボルとできる。……win-winだな。


「ありがとうございました……」


「待て、帰る前に1つ聞きたいことがある。シンイチロウ、そなたはここに居たくはないのか?」


「陛下、俺はもう少し居たいです。居られればいいと思っています、気軽にこちらに行けるならば……そう考えてしまいます。でも、俺が考えたところで帰らなければならないのです。仕方ありません……」


「…………そうか、私は忘れない。この国の為に働いてくれた異界の人間がいたことを忘れない。」


そう言って女帝陛下とクロハと別れて3人で帰った。

夕陽が見える、俺だって後数日で2年居たこちらを離れなければならない。その現実を受け入れたくはなかった。首都ランディマークの夕陽を背に俺達は抱き合っておいおい泣いた。その時、携帯電話が鳴った。


「もしもし、誰ですか?」


『僕だ、ミラーナだ。全ての指令解決ありがとう。さて、君の帰還は後2日後だ。それまでに準備をしてくれ、2日後の夕方にヘンドリックをそちらに向かわせる。だから、彼女らとはそれまでに心の整理をつけて別れを覚悟してくれ。』


「………分かりました、そうします。」


震える声で言った。涙で震えてしまう、2日後に別れが待っていると思うだけでどんどん溢れてきた。携帯をしまってから、エレノアと昭美さんと再び抱き合って泣いた。

__もう少しで帰られる。だけど、あれほど待ち望んでいた状況になったにも関わらず、心の中には喪失感しかなかった……。








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