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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
2章:若きダンディー執事の冤罪を晴らせ!
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ダンディー執事の設定


舞踏会会場内の物陰に隠れて、2つ目の指令を受けた私、山内信一郎……シンイチロウ=ヤマウチはこの状況をどうしたものかと思う。2つ目の指令は『ダンディー執事の冤罪を晴らせ!』……つまりは今ここで“ダンスホールの中心で繰り広げられている茶番をなんとかしろ”という事だ。


(しっかしどうしようか………これは、選択を誤るとバッドエンド(badend)に直行しかねないかもしれんな………)


料理を運んだりと動き回って汗だくの身体にツーッと一筋の冷たい汗が流れる。

………ダンディー執事の設定、それを思い出して気が遠くなった。ここでひ弱な貴婦人みたく垂直に倒れなかった自分を誉めたいくらいにはシンイチロウは現実を受け入れられなかった。


______不味いだろ、これ!


少し、乙女ゲーム『瞳を閉じて、恋の学園』について説明しよう。攻略対象は5人、内容はよくあるヒロイン実は貴族令嬢ダッタヨー→というわけで学園通っちゃお→見目麗しい男達と親しくなっちゃった→さて、5人の中から1番を選ぼう!

という本当によくあるヤツだ。……このゲーム、人気だったらしく漫画化アニメ化もされたんだ。私は落選のショックから漫画を全巻制覇しちゃって内容も分かるんだけど、漫画は基本的に王道キャラの俺様皇太子ルートで話が進んでいくが他のキャラの過去編がある、この間のルイ君の例でも分かると思うんだけど攻略対象達は皆過去がくらい。


(この今の状況、ものっすごくダンディー執事オリンの過去編に酷似してるんだよね……)


攻略対象のダンディー執事オリン、さる侯爵家の使用人として若いながらもそれなりに出世していたが、ある日その家の令嬢に惚れられて告白されたのを断った……それが彼の悲劇の始まりだった。彼は、舞踏会で身に覚えの無い『令嬢のルビーのピアス行方不明事件の犯人』の冤罪を擦り付けられる。そして、そんな過去がある使用人等雇ってくれる筈もなく雑草食を経験するなど極貧生活を送っていたのだが、ヒロインの父親に雇われて事なきを得るのだ。


(めっちゃ今の状況と被ってない!?)


そう、今目の前で起こっている茶番は……オリンの雇い主のアング=_(長いので略)=クライム侯爵令嬢がルビーのピアスを無くして、オリンの母親が勝手に彼の仕業と決めつけている所なのだが……。

共通項多すぎないか?雇い主が侯爵家、令嬢が無くしたのがルビーのピアス、それが起こっているのは舞踏会……もうお腹一杯だと思うほどに酷似している。


(うう……面倒だな、けどルビーのピアスはきっと家具の下に入り込んでいる筈……過去編通りなら(・・・・・・・)。)


過去編で語られた『ルビーのピアス行方不明事件』には続きがある、それはオリン編最後の1文で語られるのみだ。『そして、それから10年が経とうとしていた頃、舞踏会が開かれた屋敷は改築の為に家具達を全て運び出したのだが、その時に部屋の片隅で埃を被ったルビーのピアスが出てきたというが俺はそんな事実は知らない。』というオリンの独り語りと共に、埃を被ったルビーの絵があるという後味悪い終わり方だったと思う。決して、なんで誰も気づかなかったの?とか絶対にその間に掃除とかして気づくよね?などとは言ってはいけない。それは昔の仮面ラ〇ダーが敵と戦うときにいつの間にか砕石場に居た事を突っ込んではいけないのと同じく、ある意味お約束なのだ。

けど、ルイ君の時はそもそもゲーム設定にズレが生じていたし、この設定を信じて良いのか怪しい所だ。


________


「……こんな所で何してんの?」


頭を抱える俺の所に、エレノアは酒臭さを漂わせてやって来た。隣には、黒髪の令嬢がいる。


「ねえねえ、クロハがあの執事を救おうってうるさいのぉ……私、早く帰りたいもん。」


「だってめっちゃウチ好みなんよ!」


クロハと言うのはこの関西弁っぽい喋りの令嬢の名前なのだろう。ふと思う。これは、チャンスじゃないか?このクロハお嬢様について行けば、事件を探ることも可能だと、そう思った。


(多分、ミラーナ様は彼女を利用しろと言っているのだな……そうであろうとなかろうと、渡舟に乗らない手は無い。たとえ泥舟で俺が狸みたいに溺れ死ぬのだとしても、このまま何もしないよりはマシだ。)


「エレノア、この件を受けましょう。

彼の無実を晴らしましょう、そうすれば私は家族に会うためにまた1歩前進出来るのです。」


「ええ!?なんでよ……ルイ君とセイラの時も思ったんだけどなんで、救うことで家族に会えるの?私には、貴方が言っている事の意味がよく分からないんだけど……」


帰りたがっていたエレノアはむくれた様子で言う。


「人生色々、人には色々と話せない事の1つや2つあるもんなんです。」


異世界から来た、そんな事言った日には病院に連れていかれるに決まっている。金を産み出せるなどとのたまう錬金術士等という胡散臭い連中が活躍していた中世ならともかく、科学が発展を始める19世紀がモデルの帝国で“異世界から来た”と言うのは危険だ。


「貴方ってそればっかりね。」


「……ん?この話の流れからして、協力してくれるって事?やったー!エレノアの所の使用人はむっちゃ教育が行き渡ってるな、ウチの家の金に汚ない使用人とは大違いや。

ああ、ウチの名前はクロハって言うんよ。ちょっと前までは猫被ってたけどこっちが素や!よろしく……ええっと、そういや誰だっけ?」


「私は、メスリル伯爵家の使用人シンイチロウ=ヤマウチです。」


そうだった自己紹介をしていないと思い出して、慌てて自己紹介をした。


「シンイチロウ?変な名前やな、なんか東の大陸にはそんな感じの名前が多いって聞いた事あるけど、東の大陸の出身なん?」


東の大陸……?そういえば、主に西洋などを舞台にした漫画などでは、アジア地域は未開の東の国等と表される事が多いイメージがあるなと思って………多分、そういう事にしておいた方が良いのかと思うが、色々設定を盛りすぎると危険だから曖昧に返事をしておいた。


「……シンイチロウの馬鹿!こんなめんどそうな事に首を突っ込んで、どうなっても知らないんだから。」


「じゃあエレノア、シンイチロウを少しの間借りるけど良い?」


クロハがニヤニヤしながら聞くとエレノアは知らない!と言いながら何処かに行ってしまった。


「じゃあ、あのブスから絶対に助けてあげるから待っててよ、私好みのMr.dandy!」


こうして、Mr.dandyことオリン=ベアード=ミニスターを救いに行く事となった。





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