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大凶を引き当てた男は異世界転移する  作者: かりんとう
7章:転移人と転生人の談笑
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同じ世界から来た2人の挨拶話


__なんでこうなったのよ……。

目の前の金髪の慈愛に満ちた表情のthe女神様を凝視しながら私はそう思った。周りも知らない景色、こんな古代ギリシャの神殿のような場所は知らないのだが。


『_貴女は、1999年6月生まれ、2020年2月没の中井昭美(なかいあきみ)さんでよろしいかしら?』


「はい、そうですけど……。でも、なんで私の名前を!そして、ここは一体どこなんですか!」


女性は何故か私の名前を知っていた。いや、彼女は私がこういう質問をすることを予期していたような感じでめんどくさそうに答えてくれた。


『私は審判者メルヴィーナ。

申し訳ないけど貴女、死んだのよ。ここは、審判の場……天国に行くか地獄に行くか、それとも貴女が居た世界と同一の世界で生まれ変わるか異世界に転生するか審判する場。』


「ああ、ああああああああああ!そんな、そんな訳……私は、20になったばかりだったのよ!!」


思い出した、そうだ……あの冬の日に私はそれまでチャリ通をしていたが、ようやく中古の原付を買ったんだ。そして、その原付に乗っている時に雪道でスリップしてそのままtheEND……ようやく、思い出した。


『取り乱している所、本当に申し訳ないけど、転生するか天国・地獄かを選んでもらわないと。

生まれ変わりたいなら前と同じ世界か別の世界か希望も述べてね。

ちなみに貴女だったらギリギリ天国に行けるから、その場合はあちらの門へ。そしてもっと徳を積んで確実に天国に行きたいという時は生まれ変わりを。』


「………私、二十歳までしか生きてないんですよ。生まれ変わりたいです。同一か違うかは特に希望はないので任せます。」


次の人生は、雪道には気をつけよう。そう思って次の言葉を待っていると__


『ああ、そう。……本当にいい加減にしてほしいわ、近頃はトラック転生なんて言われる現象が起こりすぎてオーバーワークなのよ!』


審判者メルヴィーナ様にキレられた。

あー……確かに最近、そういうネット小説で溢れているわよね。悪役令嬢に転生しちゃって馬鹿な王子やお花畑ヒロインを論破したりする奴とか、神様からチート貰っちゃうヤツとか。


「はぁ……マジでそんなこと起きてるんだ、それはお疲れ様です。………で、私はどこに生まれ変わるのですか?」


『希望はないのね?ならば、適当にルーレットで決めちゃうけど良いかしら?』


ドーンと大きい音を立てて、目の前にルーレットが現れた!そして、ボーッとしているうちに私が転生する世界は選ばれたのだった。


『ああ、ミラーナの所。魔法は使えないけど、目立った戦争は起こっていない……文明は、産業革命辺り……おっと、転生先は貴族のお嬢様か。やったね、生まれながらにしてチートだ!』


「はぁ……そうですか。」


爽やかに頬笑む、サムズアップしたメルヴィーナ様の姿を最後に私の記憶は真っ暗闇となって断片的なものとなっている。


_________


「__という訳なの。」


彼女はそれを行方不明となり、崖から馬車ごと落ちた時に思い出したのだとか。


「はぁ………そうですか。生まれ変わりだったのか。メルヴィーナ様……とやらには俺は会った事ないな。」


あまりに唐突な事なので間抜けた声しか出ない。転生と転移だと何か違う手続きがあるのかとシンイチロウは首をかしげながら考えていた。


「そうなの、貴方は一体どういう経緯でここに?しかも小説じゃたいてい高校生とか青年なのになにゆえこんな中年で……多分、需要ないわよ?ああいうのってそういうモラトリアムを貪る者どもが仲間と出会い、泣き笑い成長していくのが見所だからね。」


「そんなの分かってるわ!」


気の毒そうな目で見られても、俺には需要がないことくらい自分でも分かっているつもりだ。この身体と何年付き合ってきたと思っているんだ、半世紀近くだぞ。口を尖らせてムッとしながらこれまでの事情を説明した。


「えっと、貴方って2010年から来たの!?しかもその見た目で国会議員!?しかも、うわあ10年前……私、10歳だ。」


「あ、そうか……そういえば、話の中のメルヴィーナ様とやらも1999年生まれの2020年没って言ってたな。2020年ってどうなっているんです?民自党は一体どうなって……政権奪還出来ているんだろうか、でもそうなったら総裁は誰が……?それよりも何が流行ってるんだ?」


疑問が次々に沸き起こってくる。民自党はどうなっているのか、そしてたいして興味ある分野というわけではないが流行がどうなっているのかや何が起きたのか、興味はある。


「2020年について話すのもいいんだけどその前に、そもそも2010年って何があったっけ?革進党が政権交代したのは騒がれてるし、教科書にも載っているから分かるけど……」


「え~と、そうだね…あまり詳しくないけど少女漫画だとミ〇モでポン!とかチ〇デビ辺り……じゃないか?流行は……なんだったっけ?俺もこっちに1年くらい居るからな、覚せい剤で捕まっちゃった人とか居たんだけど名前を忘れちゃった。参考にならないだろうけどこんな感じか。」


「なんでその顔で例えが少女漫画なの!しかも三大少女コミックの割と有名所を……。しかもミルモで〇ン!なんて2010年でも終わってるし、チビデ〇もとっくの昔に終わっているわ!」


「こんな顔で悪かったな、クソ……ピチピチの二十歳だから分かりやすい例えをしようと配慮した結果が気持ち悪がられるとは……。はぁ……終わってしまったのか、時代って変わるんだな。」


「なんかごめんなさい、貴方なりに気を使ってくれたのだろうに無駄にしてしまって。そういえば、そっちってアナログなの?地デジじゃなかったよね……スカイツリーもまだ出来てない筈だし。」


「……スカイツリー完成したのか。そうか、アナログ……不思議だな、その言葉すら懐かしく感じる。」


「私も二重の意味で懐かしく感じるわ。だって地デジに慣れ親しんでたし過去のモノだし、ここに来たら来たでそんな言葉を使う人すら居ないんだから懐かしいわね。」


なんとも言えない複雑な望郷の念が沸いてきた。いや、元からあの選挙で俺を落とした憎き石崎博人(いしざきひろと)をぶち殺す為に帰らなきゃならんのだが、そういう執念とは違う、ふとした時に思い悩んでしまう……孤独に襲われるのだ、それがいつもよりも強く襲ってきた。

アング様はそれをどんな風に解釈したのか申し訳なく思って、手をブンブンと振りながら


「大丈夫、安心して!民自党は政権取り返してるから!山内信一郎……山内信一郎、貴方の名前も聞いたことあるから何かしらのスキャンダル起こしたか役職に就いたんじゃない?

どこで聞いたんだったかしら。どこで、どこで……」


と語った。

民衆などほとんど覚えているのはスキャンダラスな事ばかりだ、肝心の政策について頭に残っている奴らはほとんど居らん、すっからかんだから革進党などという無能集団に騙される!とは某大先輩議員が落選した悔し紛れに言ったとされる言葉。それを人づてに聞いた時は“すっからかん”という言葉が俺の方にブーメランとして跳ね返った錯覚を見た気がしたが今はその事は置いておこう。かの某大先輩の言葉が正しいと仮定するなら俺はここから無事に戻った後にスキャンダルを起こしたと推定できる。

不吉さを証明するようにビューッと強い北風が吹き抜けた。


「俺に限って女絡みはないだろうから……飲酒か事故か献金か?」


「どこで、どこだったっけ……?」


相変わらず彼女はうんうんと唸っている。そんな必死になって思い出すような事柄でもないし無理に思い出そうとしなくてもいいんだけど……。

風が寒くなっていよいよ身体がガタガタと大きく震え始める。


「いや、もう無理に思い出さなくていいんだ。どこか風を避けられる場所へ__」


「思い出した……!!」


こんな森の中ではなく住み処の洞窟か人里の話せる所へ移動してからにしようと勧めようとした時に彼女は思い出したようだった。献金かバカ丸出しな恥話かと戦々恐々としながら怖々と言葉を待っていたのだが、彼女から出てきた言葉は意外なものであった。


「ほら、あれよ!たまにさ行方不明者は今どこに的な番組あったじゃん、あれで聞いたのよ!私が最後に見た番組だからね……それ見た後に寝て、原付でtheENDだから、イヤでも覚えていてよ。私の言葉に間違いはないわ。」


…………俺が、行方不明?

おかしい、アマテラスは死んでも死体が転送されるといつだかに言っていたではないか。行方不明ではおかしい……それともなんだ?俺の死体が発見されてないとかか?間違い探しじゃないんだからまどろっこしい……。

彼女が嘘を言っている様子もない、死体未発見説を信じるしかなかろう。


「そうなのか……俺は死ぬのか、ハッ…そうか、仇も取れずに、政権与党に返り咲いたのにそこに俺の姿はないのか……!そんな事があって堪るか」


「シンイチロウさん、もしかしたら私の記憶に思い違いがあるのかも……」


知りたくなどなかった、俺からぶつけた質問だったがそれでも知りたくなどなかった。無情な想いに耐えなければならない……どうせ生きていても瘴気に蝕まれて正気を失い、死んでも死体が転送されるだけ……ここにいても向こうにいても理想の幸せなどないのだから。


「いいんだよ、別に。今が楽しかったらいいんだから。ずっとそうやって生きてきたんだ。今更何か感じるわけなどない。」


「シンイチロウさん……」


「そういえば、君はどうしてさん付けで呼ぶんだ?」


「いや、だって歳上ですから。中井昭美にとっても侯爵令嬢アングにとっても、貴方は歳上です。年長者を敬うのは当然だと思って……。」


__中身が完全に侯爵令嬢アングと中井昭美という2人の女性が混じってタイプは違う。その新しい彼女を見ていて、別れたエレノアの姿を彼女の中に見た気がした。

居たたまれない気分になった俺達は、彼女の住む家へと移動してそこで話そうという事となりトボトボと寂しく森を抜けて歩いていった。







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