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9 憂鬱な学園に向かいまして

コツコツとヒールの音を響かせながら私は1人で廊下を歩く。

考えることはただ一つ・・・。


やっちまったぁーーーーー!!!

やっと出来た唯一の味方を貶されたからとはいえあそこまで切れる必要はないんじゃねーかっていうレベルできれてしまったぁぁ!これはもう終わったな。私完全に終わった。

平民落ちですむかな?下手したら投獄?え、それは嫌なんですけどぉぉぉ!アーネストに記憶操作してもらう?

いや、でもそれだとさっきのお説教の意味がなくなるよね・・・。

ていうか、殿下相手にお説教とか私、何様ー!!!?

悪役令嬢のクセしてお前何言ってんだって感じですよね、すみませんんんんんん!!!


どうしようどうしようとブツブツ言って会場に戻った私は傍から見るとかなり気持ち悪かったと思う。

でもそんなこと考える余裕、今の私にあるわけない!


平民落ち?投獄?お咎めなし?そ、それは無いよね・・・。

うぅ、私は別に平民になりたいだけであって処刑は受けたくないのですけれども・・・、なんて百面相をしている怪しすぎる私に近づいてくる勇者が1人いた。

「おい、大丈夫か?」

アーネストだ。


「あ、アーネストぉぉぉぉ!!!」

「お、おうおう。なんだよ、」

「ハルロド様に不敬をはたらいてしまったのぉぉ、処刑されちゃうかもぉぉ」

半泣きの私は遠慮なくアーネストの服に顔を突っ込んで洋服で鼻水をふく。

「あ、おま、ちょ!!また鼻水つけんなって!お前、情緒不安定すぎるから!!」

頭上からなんか声が聞こえてくるけどちょっと待って。あとちょっとで鼻水全部拭き終わるから。ちなみにここまでの一連の流れを周りに気づかれない私、隠密の才能があるかも。


「お前なぁ・・・!」

「ズビッ!もうだいぞーぶ。」

私の涙が収まったのが見えたのかアーネストは一気にトーンダウンしてボソリと呟く。

「・・・そうかよ。」

その後に頭をポンポンと優しく撫でてくれる。


・・・あれ?今明らかにアーネスト、怒ってたの我慢してくれたよね?

やばい、アーネストのオカンスキルがやばい。オカンかっこよい・・・。

「お前、今絶対失礼な事考えただろ?」

「え、いやいやいや!滅相もない!!アーネスト優しいなぁ、と思ってただけです!」

私は、私の言葉を全く信じていないアーネストと見つめ合う。


バチバチと火花の散る激しい見つめ合いは数秒後、予想より呆気なく終わりを迎えた。

でもそれはアーネストや私が目を逸らしたからとかではなくて、第三者の介入によって終わりを迎えた。

「うわぁー、ルイスの言った通りだ〜。君、頭でもうったのぉー?」

不快な声とともに。


この間延びする喋り方に甘ったるい声・・・。

うげぇと思いながらも令嬢として挨拶をしないわけにもいかず、私は渋々振り返った。


「ご機嫌よう、レイ・ティムール様。」

そこにいたのは案の定ピンクの猫っ毛をふわふわとさせた腹黒ショタ(とは言っても私と同い年)、レイ・ティムールだった。私、こいつが一番苦手かも。

「うん、こんにちは。なに?ハルロド様が相手してくれないから男遊びすることにしたの?」

こいつ、初っ端からなんちゅー事言ってくれとんねや。

思わずエセ関西弁が出るくらいイラッとした。


絶対私、今青筋浮かんでる。

あれ?どこかで誰かに向けた感情な気がするゾ〜


デジャヴを感じながらも私は「ふふ、悪いご冗談を」と大人の対応をしてやる。

が、そこで引かない馬鹿がレイ・ティムールだ。


「ふふ、誤魔化さなくてもいいのにー。それともあれかな?ハルロド様とサラを見てショックでもうけて頭おかしくなった?」


こいつ・・・、果てしなくめんどくせぇ。

なんなの、なんなのこいつは!!!私の何が気に入らねぇんだ?あぁ?全部か、全部だなこんちきしょうめが!

お前の好きなヒロインを虐めてたのは悪いと思ってますよ?!

思ってるから、なんなら謝るから私に面倒臭い絡み方をしないでほしい!

どうしてくれようか、と私があれこれ考えているとアーネストが「大丈夫か?」と声をかけてくれる。

「ええ。大丈夫。今効率的にあいつを嬲れる方法を探してるところだから。」

「うん。大丈夫じゃないな。一旦引くぞ」

「え、いやよ。今から本番じゃない、ふふふ。どう嬲ってやろうかしら」

私の顔、今間違いなく本家イリーナも顔負けな悪役顔になってる自信がある。


「今から何を始める気かは知らんが間違いなく心臓に悪そうな気がするから一旦、退却するぞ。ここは人目が多いからダメだ。」

そんなことは百も承知の上!どうせ私の評判なんて元々地を這ってるんだから更に落ちる評価でもないでしょ。

なんて若干自暴自棄になった私はニコラスの「レイ様」というような窘める声で我に返った。

「このような場所でそのような軽はずみなお言葉は避けてください。」

「あーらら、ニコラス君に怒られちゃったや。じゃあ、とりあえず今日はこの位にしておくよ。またね、イリーナ様」

ニコラスから声をかけられるとレイ様は思いのほかあっさりと身を引いた。

「ご機嫌よう」

それをチャンスとばかりにできれば二度と会いたくない、という気持ちをありありと詰め込み私はレイ様をさっさと見送った。


◇◆◇



という最悪なお茶会から数カ月が経ったものの今のところ、ハルロド様からは婚約破棄も処刑や処罰のお知らせも来てない。


私、まさか奇跡のお咎めなし?え、そんな神対応あります?


そんなはずはないと思うものの実際お知らせが何も無い限りそうなのかもしれない。やったね。


え?イベントはどうなったのかって?

・・・よくぞ聞いてくれた!

実はさ、楽しみにしてたイベントなんだけどね、私の用事が色々すんで会場に向かったらもうヒロインは帰ってたみたいで出来なかったんだよね。どうやらタイムオーバーだったみたいです。

ヒロイン、あれで色々忙しいからね。


その時の私の絶望感はすごかったよ。

結構最悪な日になったわ。しばらくお茶会には行きたくない。

あ、ちなみにアーネストは1回情報操作のために境界に戻ってからまた来るって言ってた。




ただね、なんて言っても、悲しきかな。私は学生。

どれだけ攻略対象と会いたくなかろうが、喋りたくなかろうが今日も私は普通に学園へと向かわなきゃいけないのですよ。

はぁ、面倒くさ。


そんな朝から重り50キロくらいつけてんじゃねえかレベルで足取りが重いまま、私は学園についた。否、ついてしまった。


後ろで控えるニコラスはそんな私を訝しげに見てる。

それもそのはず、だってイリーナはほんの数日前まで学校大好きっ子だったからね。

ただその大好きだった理由というのがハルロド様に会えるからっていうなんともしょ〜もない理由だけど。

ていうかむしろ、今の私はそれが嫌で学園に行きたくない。

どうせ攻略対象以外にもとことん嫌われてるし。


まぁ、でも学園についてしまった以上突っ立っているわけにも行かず私は一歩足を踏み出した。





「ねぇ、ニコラス」

私は教室へと向かう途中、憂鬱さを紛らわすついでにニコラスをからかうことを思いついた。

「何でしょうか、お嬢様。」

ちなみにいつもと同じ口調のニコラスだけど歳は私と同い年で今は学園だから服装も男子生徒用の制服を着てる。


「ニコラスってサラ様の事をどう思ってるの?」

後ろからすごい音が聞こえた。

驚いて後ろに目をやるといつも完璧で能面なニコラスが足首を抑えてうずくまっていた。

「ど、どうしたのよ、貴方」

「いえ、ちょっと突然だったもので、足を捻りました」

その動揺っぷりに私は、ははーんとドヤ顔でニコラスを見る。

動揺してるしてる、ふーん。これはもう確実よね。ヒロインへの好意が隠しきれてないわね。

なんてドヤ顔+ニヤニヤ顔を崩さずにニコラスを見続けているとニコラスは足首の痛みからか微かに潤んだ瞳で私を睨んできた。

「恐らくお嬢様が考えておられることと私の考えていることは全く違うと思うので変な妄想はしないでください。」

ぎくっ、なぜバレたし。


「そ、そんなこと考えていないわよ。」

「嘘ですね、お嬢様は嘘をつく時に右上斜め45度を見ます。」

淡々としたニコラスの言葉に私は衝撃を覚えた。

な、何だって?!今度からは気をつけよう・・・


とニコラスに思わぬ癖を指摘されて落ち込む私の耳にセクシーないい声が聞こえてきた。

「お前らが仲良く話してるなんて珍しいな」


・・・こ、この声は。

ラスト攻略対象の・・・!

新キャラハイペースででますw


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