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3 神様見習いと出会いまして

「天界、の者・・・?」

「あぁ。まぁ正確に言えば神様の見習いだけどな。」


美青年が少しドヤ顔で私を見てくる。

・・・・・・どうしよう。


こんな所に重症の厨二病患者が・・・!!

やだよ、私。こんなよく分からんところでここまで堂々と厨二病こじらせてる奴といたくないよ・・・!!

やばいやばい、絶対そのうち「第三の目が覚醒する・・・!くっ・・・!!」とか言い出すやつだよ!

と、とりあえずあんまり関わらないでおこう・・・。

私は謎の厨二病患者の方を向いてにっこりと微笑んだ。


「ヘー、ソウナンデスカ。スゴイデスネ。」

「お前、絶対信じてないだろ!!」

私の返事に自称神様の見習いが抗議する。

ちっ、バレたか。

こ、今度はもう少し上手に・・・


「イヤイヤソンナコトナイデスッテー」

いかん、どれだけやっても全部のセリフが棒読みになってしまう・・・!!

と、美青年は呆れたように言った。

「まぁ、いい。信じないのなら見せてやろう。」

私は美青年の言葉に焦る。


あ、どうしよう。なんかやるつもりだよ、この人。

え〜、何も起こらなかった時、なんて反応すればいいの?すごいですねー、とか?いや、それはさっき使ったわ。え、でもそれしか無くない?

いや、こういう時こそできる女のさしすせそだ・・・。

前世で初合コン行く時に友達に教えてもらったやつ。

えーと、たしか?『さ』がさすが〜。おっ!これは使える?

『し』は知らなかったー。これは今の場面には合わないな。『す』すごぉーいはさっき使っちゃったな。『せ』センスいい〜、は明らかに違うし、『そ』そうなんだぁ〜も小馬鹿にしてる気が・・・。

くそ!あんま役に立たねぇ!


仕方ないな。とりあえず、さすが〜で乗り切るか。


なんて結論を出して美青年の方へ向き直った私は絶句した。


なんでかって?美青年が宙に浮いてたからだよ。

「どうだ。これで信じただろ?」

さっきより少しドヤ顔がむかつく感じがする。


ってじゃなくて!!!そんなこと今はどうでもいい!!

え、なん、え、ちゅ、えっ、?

なんでこいつ宙に浮いてんの?!


わたわたと慌てる私をやつは鼻で笑った。

あいつ、すごいムカつくんですけど・・・。

「だから言っただろう。第一さっきお前の嫌な記憶を使ってお前を起こしたと言っただろう。あんな能力人間にはない。」

「・・・え、じゃ、じゃあ本当に・・・?」

信じられない。到底信じられる話ではないとは思う。でもそんなことを言ったら私は乙女ゲームの世界に転生してるし、目の前では美青年が浮いてる。いまさらこいつが神の見習いだろうがなんだろうが有り得ないことではない、のか?


でも・・・、そうなると、やらないといけない事がある。

「そうだ。さっきからそう言ってるだろう。」

私は目をギラつかせてやつを見る。

「・・・それならば、お命頂戴する!!!」

私は我ながらどこの時代劇だよ、と突っ込みたくなるような決め台詞を使って宙から降りてきたやつに蹴りを決めようとした。


しかし、やつはまた宙に浮いてそれを回避する。

「おま、急に何するんだ!!」

「お前の、お前らのせいで!!!私はあんな世界に転生したんだ!!!」

息が切れてきても、宙に浮いたやつに蹴りが届かなくても私はずっと叫びながら蹴りをやめない。

オラァオラァ!!〇ねぇ!!!!


「ふざけんなっ!私はあんな世界転生したくなかった!!」

「ちょ、やめろって!お前が望んだんだろうがよ!!」

私はやつの叫びに足の動きを止めた。

え?私が望んだ・・・?


「そんなわけ無いでしょ!!誰があんな状況望むか!!」

「いや、お前は確かに望んだぞ、もう何もしたくないって。何もしなくても生きていけたらいいのにって。」

「そんなの願った覚えないわよ!嘘つき!」

「嘘じゃねーよ。みんな私のステータスしか見ないんだって。そんなんだったらもう生きてるの疲れたって。私が何もしなくても人生が進めばいいのに、そう言ってお前泣いてたんだよ。それでお前は泣きながら絶命した。過労死だった。」

淡々と告げられたその事実に私はそれまでの勢いを削がれ、言葉を失った。


でも、もう彼を嘘つきと罵ることは出来なかった。絶命する間際のことをたった今、思い出したから。


そうだった。私はあの日、限界を迎えたんだ。優等生でいることに。


小さい頃は褒められるのか嬉しくてみんなが喜んでくれるのが嬉しくて沢山手伝いもしたし、沢山お願いごとも聞いた。


でも、年を重ねる事にそれはプレッシャーとなり、妬みとなり、絶望へと繋がっていった。




私と関わることへの利益を考えて寄ってくる人達、少しでも優等生らしくないことをしたり、言ったりすれば人の倍怒られる。


そんな人生に私は徐々に疲れていった。




「そっか・・・、私そんなこと願ったんだ。」

「ったく、嘘つきとか言いやがって。俺と神様はお前の願いを叶えてやったんだよ。」


・・・あぁ、だから全自動(オートモード)ね。

うーん、若干気の遣い方を間違えてる気がしなくもなくもないけど・・・、そっかー。私の願いだったのか。

となるとあそこまで神様を恨んでたの恥ずかしいな!?


「まぁ、スムーズに物語を進めるためにちょっとだけ強制力みたいなやつは働かせたけど。」

ボソッと呟かれたそれを私は聞き逃さなかった。


「・・・本音はそれでしょ?私の願いうんぬんじゃないでしょ?」

思わずジト目で見てしまうくらいは許して欲しい。

「違う!いや、それもちょっとはあるけど・・・。でも主な理由はお前の願いを叶えるためだ。神様があの子、頑張った割には救われてないねって言ってお前の願いをひとつ叶えることになったんだ。」

・・・神様、意外といい人。

ヒロインいじめイベント中、酷いこといっぱい言ってごめんなちゃい。もう殴りたいとか小指ぶつけろとか言いません。


でもなぁ、自分の願いとはいえ、全自動はやだな・・・。

そこで私は「ちなみにさ、」と下手になって美青年に話しかける。

「その〜、全自動(オートモード)ってとれたりする?」

「え、とりたいのか?」

きょとん、と心底不思議そうな顔をしてやつが私を見る。

「う、うん・・・。できればとって欲しい・・・。」

対する私は今更ながらに美青年オーラにやられ、もごもごボソボソとコミュ障丸出しで答える。


「・・・神様に聞かないとわからない。聞いてくるから待ってろ。」

「あ、はい。」


私が返事をする頃にはやつは既に消えていた。


それから待つこと数分後、やつは帰ってきた。どことなく口元が緩んでいる。

「まぁ、頑張ってたしそれが願いならいっか、だとよ。全自動はお前があっちの世界に戻ったらなくなってる。お前、かなり神様に好かれてるな。」

後半の言葉はまるまる頭に入ってこなかった。

ただ、ただ、全自動が外れるという事実が嬉しすぎた私は飛び跳ねて喜んだ。


「やったっ!!やった!!!!これで、これで好きに生きれる!!!」

私の喜びようにしばらく呆然としていたやつを見て私はそう言えば、と急いでやつの手を取って真面目な顔に戻る。

「乙女ゲームの物語通り進めなきゃいけないなら私、頑張ってゲームに寄せるからもう全自動には二度と戻さないで!!って伝えておいて!本当にありがとうっ!!」

興奮しながら私はやつにブンブンと文字通りシェイクハンドをする。


「お、おぅ・・・、分かった。なんか、とりあえず良かったな」

「うん!!!じゃ、もう会うことはないと思うけどありがとうね!!嘘つきって言ってごめん!じゃーね!!!」


若干、引かれてる気もしなくもないけど気にしない!気にしない!!うぉぉぉぉ!!!!帰るぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!!


と意気込んでいるとそのうち勝手に私の体がひかり出した。

お、これは帰れそうな雰囲気!


私はそのまま大人しく目を閉じて光に包まれた。



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