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22 盗み聞きしまして

「はぁ・・・」

私は爽やかな朝には不釣り合いなため息をついた。

・・・イリーナちゃん、お疲れなのです。


もうね、昨日からずっと考えてるけどどうポジティブに考えようとあのヒロインがマリア様と純粋に仲良くなるって言う可能性はないんだよね・・・。

第一、逆ハーを目指すヒロインにとったら私とマリア様って超邪魔者なのに仲良くなる気があるとは思えない。

・・・やっぱりまるめこまれてる説が濃厚か。


私はもう一度ため息をついて学園に向かった。



◇◆◇


教室につくとサラ様はすでに登校しているようでカバンはあるものの姿はない。

・・・ちょっとマリア様のところに様子見に行こ。


私がひとりで廊下に出ると隣のクラスからニコラスがでてきた。

「どうなされましたか、お嬢様。」

「いや、ちょっとした用事だからついてこなくても大丈夫よ。」

私の返答にニコラスはしばらく考え込んで「いや、いつなん時あいつが来ても大丈夫なように」と呟いた。

・・・あいつ?あいつって誰ですかい?


大体ニコラスがそんなに警戒するような人、ヒロイン以外いないけど・・・?まさかヒロインのことを警戒してる?!


なーんて、思った私はニコラスが私の後ろを見て舌打ちしたのを聞いてヒロインが帰ってきたのかと素早く振り向いた・・・。

ものの。そこに居たのはなんのことはないアーネストだった。

「なんだ、アーネストじゃない。ニコラス、あまり怖がらせないでちょうだい」

私の忠告が聞こえていないのか何なのかニコラスは返事をしない。その目はきつくアーネストを見つめていた。

「イリーナ、おはよ。あ!ニコラス、その様子だと復活したんだな〜」

「貴方様に関係ありません」

「なんかこいつ俺に対して扱い雑じゃね?朝は低血圧か?」

私的にはニコラスの様子は見てて結構ひやひやするのでアーネストが軽く受け流してくれているのが救いだ。

・・・ニコラス、アーネストになんかされたのかな?


まぁ、今の私は世間話で時間を潰している暇がないのでアーネストに短く「おはよ」と答えた後に仕方なくニコラスもつれてマリア様のところへと向かう。あーあ、アーネストまでついてきちゃった。


「イリーナ。」

呼びかけに気づいた私が周りを見渡していると不意にやたら朝からキラキラしているお方が見えた。

「あ、ハルロド様・・・」

声の主はハルロド様で、その周りにはルイス様とレイ様がいた。おそらく魔具を渡しているんだと思う。

「ごきげんよう、皆様」

私が挨拶をして真っ先に返事を返してきたのはやはり、と言うべきか朝からうざったげふん、げふん、元気なレイ様だった。

「おはよっ!イリーナちゃん!!どうしたの?違うクラスにまで来て。」

「いえ、少々気になることがありまして。」

「また、なにか悪巧みでも考えているのでしょう。」

私が答えると次は間髪挟まずにルイス様から皮肉られた。

うるせー、くそ眼鏡。こいつは無視でいいや。

「ま、また無視かっ?!」

なんか、近くで騒がれている気がするけど無視でいこう、全無視で。っていうか、ルイス様の髪の間からたまに除くあれ、魔具か。そうか、ルイス様はピアスにしたのか。


「あ、そうだイリーナちゃん。これはい。」

レイ様が渡したのは小さな袋が3つ。

「え、まさか、レイ様・・・。これ一晩で?」

「そう!イリーナちゃんの為に頑張ったよ〜!」

手を握られてブンブンと縦に振られる。


うぉ"!す、凄い振るやん・・・!酔いそう・・・、うぷ。

「あ、ありがとうござま・・・、す。」

なんとか吐き気を我慢してさり気なくレイ様の手を外す。

「・・・ということでニコラスはだいたい事情がわかってるよね?」

「・・・はい。これを付ければいいのですよね。」

「そう。アーネストも今もらった魔具をつけて。」

「は、え?や、なんで魔具?」


何が何だかわからないというアーネストの顔はきっと昨日の私にそっくりな顔をしているだろう。

まぁ、でもアーネストは正直神に近い存在だし、ある程度私が説明すればわかるよね。

私はそっとアーネストに耳打ちした。

「これ、魔具って言うらしいんだけどヒロイン、禁断の魔法使ってるらしくて、アーネストの事攻略するって意気込んでたから多分、アーネストとかにもかけると思うんだ。だからこれをつけて、気をつけて。」

私の言葉にアーネストは得意げに笑った。

「おう。大体のことはわかった。」

アーネストはそれだけ返事をして袋の中に入っていた指輪をはめた。


「これ、ニコラスにも」

「ありがとうござます。・・・お嬢様から貰う初めてのものが野郎が作った装飾品だなんて・・・。」

ニコラスがボソッと何かを呟いたけど聞き返したら「何でもないです」と言われてしまった。

因みにニコラスは腕輪よりは少し細身にのブレスレットの形をしている。


・・・後はザハール先生に渡すだけだけど・・・、どうやって渡そうか。そもそもザハール先生に渡しても『こいつ、いきなりなんだよ』みたいな感じだよね。付けてもらえないかもしれないし、うーむ・・・。





・・・あ、そうじゃなかったわ。今大切なのはそこじゃない。それについては後で考えよ。

えーと・・・、マリア様は、と。


「あれ、マリア様もいらっしゃらないのですか?」

私が教室を覗き込むと取り巻きの方は何人かいるものの本人はいなかった。

「あぁ、そう言えば今日はまだ見てないな」

私のつぶやきにハルロド様が答えてくれたけど、サラ様同様カバンはあるから登校はしているはず・・・。

もしかして今、2人であってる?


正直、他のクラスの教室の前でこんなウロウロしたくないし、マリア様の取り巻きに居場所聞くのが一番いいんだろうけどさ・・・、ゲームの中でも現実でも私、マリア様と対立してるからなぁ・・・。

ほらぁ?私ってさやってる事ゲスいじゃん?それに比べてマリア様、悪役令嬢とはいえ正論言ってるだけだし正直ツンデレなんだよね・・・。

そう、あのちょっとカワイイ系の愛され悪役令嬢なのよ・・・。

ええ、ええ、私とは違ってねっ!!


まぁ、いいわ。気持ちを切り替えよう。

・・・うーん。あのふたりがいるとしたら・・・。


きっとヒロインの事だから話している内容は知らないけど人目を避けるはず。

そしてゲームの中で私が出没しやすい場所をヒロインは知ってるから校舎裏や体育館裏にはいないだろうな。私と鉢合わせだけは避けたいだろうから。


そうなると、私があまり行くことがなくて、なおかつ人目が少ないところ・・・。


しばらくうんうん唸っていた私は絶好の場所を思い出した。


分かった、屋上だ――。



私はハルロド様達に別れを告げて無理やりついてこようとするニコラスと心配そうにこっちを見てくるアーネストに別れを告げて屋上へと向かう。


・・・そうだ。ゲームのなかでもイリーナ・アナベルが屋上を使ったのは私の全自動(オートモード)が切れる前にやったあの「いいこと思いついた」発言のためだけだ。


ゲームでも主に校舎裏や体育館裏は私、イリーナ・アナベルがヒロインを虐めるためのフィールド。

そして屋上はマリア様のフィールド。


・・・製作者フィールドで人間性、表してるよなぁ。

イリーナはジメッとした場所でえげつない虐め方をしていてマリア様は晴れ晴れとした開放的な場所で正々堂々と戦うってか?

ええ、そうですよ。どうせ私は死亡エンド一直線の悪役令嬢ですよ。どーせ、憐憫の悪役令嬢ですよっ!!


・・・はぁ。ちょっと今日は思考横道に行き気味だわ。


私はそおっ、と屋上へと繋がる扉から覗く。


やっぱりいた。




でもダメだ。この距離だと会話が全く聞こえない。

・・・様子を見るに、マリア様にサラ様が何かを持ちかけてる?

いや、頼み事、か?


仕方ない、なけなしの魔力を使うか。・・・すっごい疲れるから嫌なんだけどな。


私は自分の少量の魔力で聴覚の能力を引き上げる。

どっ、と体から力が抜ける気がしたけど気にしないで耳を澄ます。


・・・よし!聞こえる!!

ただ、風が強いせいでぼぉぉ、という音にかき消されて声が拾いにくい。



『――の葉を、・・・・・・して―――――すれば、――――よろこぶ・・・』

『――と?』

『本当・・・――――の――ですもの』

『詳細は・・・―――で――――』

『いつ――――?』

『サラ様――おひとり―時――・・・』


だめだ、全然聞こえない。

もう少し!もう少しだけ風が弱くなれば・・・、


私はこの前本で読んだ魔法を必死に頭の中で思い出して唱えた。

私が唱えたのは風をとめる魔法。

ただでさえ、魔力が少ししかない私がちゃんと習っていない魔法を使ったからなのか体が今までとは桁違いにだるくなる。

でも風はやんだ!


私は朦朧とした意識の中でいつ倒れても大丈夫なように必死に隠れ場所を探しながら音を拾う。


『私、どうやらサラ様を誤解していたようですわ。まさかハルロド様へのアドバイスを貰えるなんて!』

『いえ、私は幸せになれる方法を教えただけです。苗は後日持っていきますね。』

『ええ!これならハルロド様に喜んでもらえるわ!見てなさい!イリーナ!!』

『ふふふ、喜んでくださると、いいですね。』






もはや魔力をいっぺんに使いすぎて意識が消えかけてる私の頭にこびりついて消えなかったのは嫌な笑い声をしたサラ様の声だった。






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