21 新事実が発覚しまして
気まずい沈黙の中一番最初に口を開いたのはレイ様だった。
「・・・わかった。とりあえず簡易的な魔具をあと3つ作ればいいんだね?」
「はい。魅了さえ防げれば大丈夫かと。」
「じゃあ僕はこれから魔具を作りに研究室に行くから、後はよろしく。」
レイ様はいつもの甘ったるい喋り方じゃなくてハキハキと言いたいことだけを言って帰っていった。
・・・後はよろしく。って言われても。何をよろしくされればいいんだ?
首を傾げる私と気まずい空気を払拭しようと何かを話題を探して視線をうろうろさせているハルロド様。
ハルロド様、逆にその行動が気まずさを倍増させてます・・・!
と、後ろからゴソゴソと起き上がる音がした。
ハルロド様と同じタイミングで振り向くとそこには目をこするニコラスがいた。
ニコラスがこっちを見てしばらく沈黙する。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
気まずい空気がさらに気まずくなっていっそ使用人を呼ぼうか迷った時、ニコラスがようやく口を開いた。
「お、お嬢、様」
その口調は少し舌っ足らずなショタニコラスとは違って普段のしっかりしたものだったため私はほっとする。どもってるけど。
「何?ニコラス」
「あ、あの、」
首をかしげて話の続きを促すもののニコラスは顔を赤くしたり、青くしたり、白くしたりで大忙しで私が促していることに気づいていない。
というか、ただ今ハルロド様の存在感が薄い。
「その、!い、今までのご無礼申し訳ありませんでした!!」
いつもは能面なニコラスなのにやけに顔を真っ赤にさせて叫ぶのでなんだか私まで今更恥ずかしくなってきた。
「あ、や、別に、その、記憶が・・・ある、のね?」
「・・・はい。バッチリあります。いっそ忘れてしまいたかった・・・。」
ボソリと最後に呟いた言葉に私は心の中で凄い勢いで首を縦にふった。
私も忘れたい・・・!!
2人で気まずげに向き合っているとすっかり忘れていたハルロド様が割り込んできた。
「おい、ニコラスよ」
その声は思いとほか真面目なもので何の話かとドキッとする。
「お前、話の途中で起きていただろ。」
ハルロド様の言葉にニコラスはビクッと肩を震わせて「気づいていらしたのですね」と呟いた。
・・・え、全然気づかなかったんだけど?
「申し訳ございません。本当は眠ってから数分後意識がはっきりしてきて目覚めてはいたのですが・・・、なにぶんお話がお話でした故・・・。」
「あー・・・、確かにタイミングが悪かったわね」
ニコラスを慰めるつもりで言った私の言葉にもニコラスはボンッと顔を赤くさせる。わかるよ?!私も貴方の顔を見ると思い出しちゃうけど!!頑張って元の距離感に戻ろうよ!
「え、えっと!どこまで話を聞いたのかしら?!」
変な空気が流れてしまったので慌てて場違いに大きな声でニコラスに問いかけるとニコラスは顔を真っ赤にしてこちらを見ないままで答えた。
「あ、その・・・。魔具があと3つ必要で次に狙われるのは私も含まれている、というところら辺から・・・。」
「・・・割と結構最初の方からだな。」
的確すぎるハルロド様のつぶやきにニコラスは項垂れた。
「まぁ、いつかはニコラスにも気をつけてもらわないとだったから別に聞いてたのはいいんだけどね。」
あまりにも子犬のようにうなだれるニコラスを見ていてふと、教室でのやり取りを思い出す。
「・・・あれ?ニコラス、そう言えばあんまりサラ様と仲良くない?」
口に出してから私はいや、そんな訳はないだろうと思うのだけれどもこの前ニコラスが教室に来た時のサラ様に対する接し方はニコラスっぽくなかった気が・・・。
「以前までは仲良くしていたのですが・・・。」
「が?」
「その・・・、お嬢様のご様子が変になった時に何やらサラ様の様子もおかしくなったのであまり接触しない方がいいかと・・・。」
・・・あ、それきっと私が転生者ってことに気づいた感じですよね。
っていうか、サラッと今私のこと様子が変になった時って言いやがったなお前。今の私は様子がおかしいってか?へっ!!
私は内心歯ぎしりしながら「そう」と静かに呟いた。
これぞ、大人の対応・・・!
「それからよくサラ様を観察しているとちょくちょく怪しげな動きをしていたので。」
「怪しげな動き・・・?」
「・・・ええ。マリア・バージニア様と何やら企んでいる、と言うよりサラ様がマリア様に何かを教えてこんでいたようです。だいぶ親しげにされていました。」
「マリア・バージニア様と・・・?ヒロインが・・・、なんで?」
「お嬢様、『ひろいん』とはなんですか?」
私の小さなつぶやきがニコラスに拾われる。
ハルロド様も私の様子をみて「イリーナ?」と私の様子を呼ぶ。
でも今、私にそれに応える余裕はない。
・・・なんで、悪役令嬢とヒロインが?確か、マリア様とハルロド様は同じクラス。マリア様は今の時期だと教室で仲良くおしゃべりするヒロインとハルロド様に嫉妬して可愛らしい悪戯をしようとしている時期なはず・・・。
決してまだ仲良くなる時期じゃないわ・・・。
・・・どういうこと。
「イリーナ!!」
「はいぃ?!」
やべ、変な声出た。
「お嬢様、失礼ながらその声はどうかと。」
さっきまで恥ずかしがって可愛かったニコラスがいつの間にか能面に戻ってた。
「なによ、さっきまで可愛くあたふたしてた癖に。」
私は1人でボソッ、と呟いただけなのにニコラスはしっかり拾ったみたいで「かわっ・・・い、?」とまたあたふたしてた。
案外、ニコラス地獄耳なのね。
なんて今はどうでもいい!
それよりも!
心配気にこちらを見るハルロド様とごもごもしてるちょっと気持ち悪いニコラスをみる。
「ニコラス、それは本当のことよね?」
「え、あ、はい。」
「ハルロド様っ!」
「な、なんだ?!」
「あのお2人に今まで変なことを言われり、されたことは?」
「へ、変なこと?」
考え込むハルロド様に私はイベントを思い出しながら聞く。
「えー、例えばサラ様に食堂に一緒に行かないかと誘われてマリア様がそれを遮るようにハルロド様の腕をとったり!」
「な!」
「後は、学園案内をして欲しいとサラ様に頼まれて案内の途中でマリア様に遭遇して簡易的にお茶会を開いたり?」
「な!!」
「そのお茶会の時にマリア様が「マナーがなってないわ。ハルロド様の隣に並びたいのならマナーを身につけなさい」と注意していたり」
「な!!!」
「それと〜」
「お嬢様」
必死に思い出そうとしている私にニコラスから声がかかる。
「・・・何よ?」
「失礼ながらお嬢様、ハルロド様が話を聴ける状態ではありません。」
言われてからハルロド様を見ると衝撃的な顔をしたままのけぞって固まっていた。
こんな変なポーズした銅像、いくら美しくても絶対欲しくないな、なんて王族相手に失礼なことを考えているとハルロド様が銅像から人間に進化した。いや、元々人間だけど。
「な、なぜイリーナがそれを知っているのだ。まさか見ていたのか?」
「いえ、そのような事はしておりません。あの、これだけ確認を。ハルロド様はお2人が「負けないんだから!」と叫びあってるのを見たことは?」
「いや、ない。」
「それならば、マリア様が「貴方の友達になってあげても良くてよ!」と言っているのは?」
「いや、見たことがない。」
・・・やっぱり。マリア様とサラ様は途中からイベントを起こしていないし、和解イベントもしてない。
サラ様がなにか自分に有利な方に細工している?
・・・マリア様、令嬢にしては少し天然というか、あまり頭の回転が宜しくない所があるから丸め込まれてないといいけど・・・。
まぁ、悪役令嬢なのに天然って所が私と同じポジションでも好かれる理由なんでしょうけどね。
なんてことを考えながらうんうん唸っている私は気づかない。
いきなり、ハルロド様の言動を見張っているような発言をして二人に訝しまれていることや、マリア様とサラ様の迫真のモノマネをした後にいきなり考え込んだ私を「「こいつ、本当に イリーナ/お嬢様 か?」」とふたりが呆気に取られていることを。




