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14 逃走しまして

苦しい、苦しい、痛い。


その苦しみや痛みは体からくるもの?それとも・・・。



◇◆◇


自分は友達だと思って接していても相手はそうじゃなかった。

そんな経験、誰にでも一度くらいはあるのではないだろうか?


私はある。

ただ、私の場合それは一度や二度のことでは無かった。

何度も何度も裏切られては信じ、裏切られては信じ。

私はアホだからそこで諦めるなんて選択肢はなくて、いつか誰かが本当の友達になってくれる、そう信じて疑わなかった。

私の場合は相手が私のことを利用するために近づいたのであってまぁ、言ってしまえば私の一方的な思い込みで友達になった、と思ってただけなんだけどね。


そして、どうやら私は前世ならず今世でも失敗してしまったようだ。



・・・今度は大丈夫だと思ってたんだけど、なぁ。


私は自嘲気味に笑って動かしていた足を止めた。


私、何かに取り憑かれてるのかなぁ。本当に・・・、なんでいつもこうなるんだろう。


はぁ、とため息をついたあと後ろを振り返る。

ヒロインも性格悪そうだし。ハルロド様の前で泣いちゃったし?


ダメだ、どんなに心の中で軽口をたたいたって涙が止まらない。

・・・くそ。弱いところなんて見せたくないのに。


誰にも。





その後、何も考えずただひたすらに1人涙を流していると不意に足音が聞こえてきた。

私は急いで涙を拭ってその場から逃げようと一歩足を踏み出した。

が、それは出来なかった。先程、自分の失態を見られた人の声によって。


「イリーナ!!」

「っ!」



逃げようとしていた自分の体を止め、ぎこちなく振り返る。

「何か御用ですか?」

心の中はバクバクなのに意外と声は震えなかった。


「・・・イリーナ、なぜ泣く?」

「・・・・・・貴方様には関係ありません。」

「お前はサラを虐めていた訳では無いのか?」

「・・・ご要件がそれだけなら私、失礼します。急いでいるので。」

私は涙がこぼれないように奥歯をかみしめてハルロド様に背中を向けた。

「ま、待て!!」

が、それをさせなかったのがハルロド様だった。

「なんですか!急いでると言っているでしょう?!」

今の自分が情緒不安定な事くらい分かってる。そんなこと分かってるけど

「大体、貴方はいつもそうです!!前も言ったでしょ?

ちょっと関わったからって分かった気にならないでよ!!

私に近づかないで!」


分かっていると言って身体がその通りに動く訳では無い。


ハルロド様は私の言葉にいや、私の態度に驚いたようで呆然とその場で突っ立っていた。

その隙に私はハルロド様に掴まれていた腕を抜いて走り去った。




◇◆◇


あーやだやだやだ。

自分が本当にやだ。ふざけんな、ハルロド様にもムカつくけど私自身にむかつく。


はぁ、自己嫌悪で体調まで悪くなってきたかも。

・・・いっそ早退しちゃおっかな。


アーネストのことも整理できないし。


大体、もしもヒロインが逆ハー狙いじゃなかったら私はアーネストとも今まで通りだったかもしれない。

でもヒロインは明らかに逆ハー狙いだし。


・・・って言うかそもそも神様見習いのアーネストがこのことを知らないわけがないがないか。


と、そこで一つの疑問が浮かぶ。

ん?待てよ。なんでアーネストは神様見習いなのにゲームとシナリオに登場してるんだ?もしかして神様見習いっていうこと自体が嘘?そもそも私に近づいたのはわざと?


私はうんうんと首を捻る。


わからない。


「イリーナ?」

アホなりに考え込んでいたせいか一瞬、ハルロド様がしつこく追いかけてきたのかと勘違いした。

そうしたら振り返って嫌味を言って走って逃げよう、そう思ってたのに聞こえてきた声は私のこの世界での唯一の味方で。

いや、味方だと思っていた人で。


「アーネスト・・・」

私はぎこちなく振り返る。

「・・・どうしたの?」

笑った顔は引き攣っていたようでアーネストは不思議な顔をしてこっちへ向かってくる。

「・・・イリーナ、お前どうかしたのか?」

「なんで?」

笑った顔を崩さないようにアーネストに問いかける。

「・・・なんで、お前そんな無理して笑ってんの?」


・・・っ。誰のせいだと思ってんの。

そんな言葉は飲み込んで私は「何のこと?」と答えた。

私の問いにアーネストは、「くそ」と小さく呟いて頭をガリガリとかいた。いつものアーネストならしない荒っぽい仕草に私は密かに驚く。

しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのはアーネストだった。

「もしかしてお前、俺のこと聞いたのか?誰かから」

「・・・俺のことって、私を、殺すって話?」

震えそうになる手を声を必死に抑えて私は引きつった笑みを浮かべ続ける。


アーネストの顔は私の言葉にこわばった。

そんな初めて見るアーネストの表情を眺めながら私は自分が心の中でアーネストに否定してほしいと願っていることに気づく。


「そうだ」


だから準備が出来ていないままに聞こえてきた肯定の声に私は涙をこらえることが出来なかった。


・・・逃げよう。

私は本日何度目になるかわからない逃走体形をとった。

その腕をアーネストにとられる。

今日何回腕掴まれるんだろう。

なんてどこか現実逃避気味なことを考えながら私は身をよじってアーネストから逃げようとした。

「って、おい泣くなって!最後まで人の話聞けよ!」

「な、なによ!!味方って言ったのに!裏切るようなやつなんていらない!」

「い、いらないって・・・」

私は子供のように「やだやだ」と駄々をこねてアーネストの腕から逃げようとする。


「だから!聞けって!」

「やだ!」

「あのなぁ〜!」

アーネストは私の肩をしっかりと掴んでそして私の目を見て大きな声で言い放った。


「俺はお前を裏切ってない!むしろこの世界を裏切ったんだよ!」

「・・・・・・はぁ?」



私は呆れてアーネストに聞き返す。

「はぁ?じゃねーよ。なんで何言ってんだこいつ、みたいな目で見てくるわけ?」

「いや、アーネストがすぐ分かるような嘘言うから」

「嘘じゃねぇ!」

「じゃあどういう事?世界を裏切るって何?嘘くさい。」

「あ、あのなぁ・・・。だから、今からそれを説明するんだよ。」

アーネストは私の腕を引っ張ってどこかへ連れていく。


「ちょ、どこ行くの?」

「人がいないところ。面倒だから天界戻るぞ。」

「は、はぁ?」

天界戻るぞ、ってそんな簡単にできんの?

って言うかアーネスト何が言いたいの?

私のさっきの涙の意味は??


混乱する頭で私はアーネストの背中を見る。

「ここだと誰かしらに聞かれてるかもしれないし途中で人が来て邪魔されるかもしれない。それに俺が説明するんじゃなくて神様に説明してもらった方がいいと思ってな。」


私の疑問の答えをアーネストは口に出す。

なるほど。なんて納得出来るわけもなく、これからなんの説明が行われるのか少し怖く思いながら私はアーネストについていった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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