13 裏切りと真実に気づきまして
前半と後半の温度差が激しいです、ご注意ください
・・・先に言っておきますね、私、今人生最大に落ち込んでるわ。
自室に戻ってベッドの上に横たわって寝ようとした時に頭痛が来て、なんだなんだと思ってみたら、突然の私の新しい死亡フラグを思い出すっていうね。
いや、もうさ。全自動になって自分の意思はないんだ、ってわかった時より落ち込んでるわ。だってさ・・・、やっと、自由に生きれると思ったのによ?なのにこの仕打ちって・・・!!やっぱり神様、私のこと嫌いでしょ?!
・・・え?そんな大事なこと、なんですぐに思い出さなかったんだって?
・・・・・・・・・。
じゃあ聞きますけどね、貴方はできますか?
パッケージの裏に書いてあった『イケメン全員にチヤホヤされちゃう逆ハールートではなんと!唯一のミステリー要素が!✩
激ムズストーリーをあなたはクリアできる!??』っていう一文で思い出すことが。それに私は逆ハールート難しすぎて挫折したから最後までやってないしね。
っていうかそもそもイリーナに転生するなんて思ってないからね?ここ大切だよ。誰がゲームの中に転生すると思うよ?
「なるほど、私は次の人生はイリーナに生まれ変わるかもしれないからここは要注意ね☆」なんて言ってたらただのやばいやつよ?!
私は少なくとも正常だったからそんなこと考えながらやってなかった。
逆に思い出せた私はすごい!!!
・・・ただ、思い出したところで虚しさがすごいのが欠点だね!
・・・なんて冗談は終わりとして。
問題はさ、犯人は誰か、だよね。はぁ。
テンション低いって?この状況で誰がテンション上げていられるかっつーの。さっきの謎のハイテンションはショックすぎてテンションおかしくなっただけで1回テンション落ちると地獄のそこまでおちてくよ、ふふふ。
やばい、話が進まない。えーと、犯人の話だよね。そうそう。
さっきも言った通り私、逆ハールート挫折したんで犯人はわからないし、それどころかイリーナがいつどういう状況で殺されるのか、諸々が全くの謎。
私、逆ハールート本当に序盤のところしかやってないんですよね。あまりに難しくて・・・。
ただネットで評判だったのはストーリーの緻密さが逆ハールートになると他の比じゃないくらい緻密になるって言うところとあと、これ多分大事なことだと思うんだけど実は逆ハールートでしか現れないキャラがいるらしいんですよね。
でもそのキャラはイケメンなのに隠しキャラではないらしくて攻略できない対象って呼ばれてたみたいだけど。
何でも必死に逆ハールート目指してやってたプレイヤーがそのキャラだけは攻略できないことが分かって制作会社にクレーム入れたとかいう噂まである。
ネットでも単推しではないけどイケメンにチヤホヤされたい、がく✩ぷりの逆ハールートガチ勢がめっちゃ騒いでた。
ただ、そのキャラって公式も姿は公表してないから挫折した私にはその姿はわからない。
んー!絶対大事なキャラだよねー!!どんなキャラだろ。
って言うかその人が一番私を殺害する有力候補だよね。
自分で言ってて笑えてくるわ、なんだよ私を殺害する有力候補って、笑えるわ。あ、やっぱ笑えない。
・・・どうしよっかなー。アーネストには余計な心配かけたくないし言わない方がいいよね。
ニコラスは〜、論外だよね。まずまず私がそんな事言ったら頭おかしくなったと思われそう。
他に頼りになりそうな人もいないし、しばらくは様子見だよな。
私はもう1度深くため息をついた。
◇◆◇
次の日、通常通り足取り重く学園に向かう途中、私は閃いた。
・・・あれ?ヒロインちゃん転生者なら知ってる可能性あるよね?と。
ということで私は学園についてすぐに心配してついてこようとしてくるニコラスとアーネストを置いてきてヒロインちゃんをこっそぉりと呼び出した。
「な、なんですか・・・?」
怯えるようにこっちを見てくるヒロインちゃんだけど本当は性格悪いとしたらちょっと怖いな。これも演技かもしれないじゃん?
なんて考えながら私はなるべく怯えさせないようにヒロインちゃんを見る。
「あの、ちょっと聞きたいことがあるのだけど。貴女、そのー・・・、あのー、が、がく✩ぷりって知ってるかしら?」
「・・・え、」
ヒロインちゃんの顔が一気に驚きに染まる。
「え、ちょ、ちょっと?」
大丈夫?と言おうとした私の言葉はヒロインちゃんの言葉によって遮られた。
「あんたも・・・転生者?」
「・・・!やっぱり、あなたもなのね」
「・・・ええ。」
良かった!仲間がいた!と喜ぼうとした私はヒロインちゃんの顔がみるみるうちに悪役の顔になっていくのを見て本能的にやばい、と思う。
「・・・へぇ。なーんだ、だから最近イベントがおこらなかったのね。ニコラス君がおかしくなったのもそのせいだし、アーネスト様が今の時期にいるのもそのせいか。」
おい、ちょっと待て。情報量が多くて頭の中で津波が起こってるんですけど?って言うか雰囲気変わりすぎなのでは?!
「ちょっと待って、えーと、それがあなたの素の喋り方なのよね?」
「・・・そうだけど?」
「そ、そう。じゃあ今アーネストの名前が出てきたのはなんで?」
「・・・はぁ?あなたがく✩ぷりプレイヤーの癖に攻略できない対象のこと知らないの?」
・・・・・・え?
「アーネスト様は攻略できない対象としてネットですごい話題だったのよ。逆ハールートは本当に難しいし、挫折する人も多いからアーネスト様のことを見れるプレイヤーは少なかったけど」
ダメだ、ヒロインが言ってることが頭に入ってこない。
いや、頭で理解することを拒否してる。
「でもその分、アーネスト様は本当にかっこよくて・・・。どうしてあの方が攻略できないのか本当に謎よね。・・・でも今はそんなことどうでもいいの。だってここでのヒロインは私よ。私がアーネスト様を攻略するわ!」
意気揚々と宣言するヒロインの事さえもどこか遠くで他人事として見ているように思える。
「・・・ちょっとあんた聞いてんの?自分から聞いておいて何よ?って言うかそもそもアーネスト様がなんであんたの近くにいるわけ?」
・・・何故か嫌な、予感がする。
「アーネスト様は逆ハールートで」
やだ、聞きたくない。キキタク、ナイ
私のささやかな抵抗はヒロインの突き刺さるような一言によって無駄に終わる。
「あんたの事を殺す役割なのに」
・・・・・・嘘だ。
そんな、そんなはずは・・・
「まぁ、あんたの近くにいるってこと以外は全部同じ設定だしね、なんかのバグでも起こったんでしょ、きっと。
あんたはもう必要以上にアーネスト様に近づかないでね。私、アーネスト様もいる逆ハールート狙ってるから。」
私は立ち尽くしたまま動けない。
自分が今ちゃんと立てているのかさえもわからないくらい頭が真っ白で・・・
「それとも早々に殺されたいの?アーネスト様に。」
・・・嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!
そんなの、やだよ・・・。
「サラ!!!!」
その時、見知った声がした。
「サラ!大丈夫か?」
その声にヒロインは私を一瞬見て、嘲るように笑ってから駆けつけた人の方を見る。
「ハルロド様ぁ!!!私、怖かったです!」
「イリーナ!お前、ああ言っておいて結局・・・!」
駆けつけたのはハルロド様だ。
きっとサラ様を私が呼び出したことをどこからか聞いたのだろう。
ヒロインもさっきまでの態度はどこに行ったのやらすっかりいつも通りの態度に戻っていた。
でも今の私はそれどころじゃない。
訝しげにハルロド様がこっちを見ているけど取り繕う暇もない。
味方って、言ったのに。
アーネストは何を思って私のそばにいるんだろう。
何をどこまで知ってるの?やっぱりこの世界に私の味方はいないの?
それに対する答えはあるわけもなく私はみっともなく膝から崩れ落ちた。
「い、イリーナ?」
ハルロド様の困惑する声が遠くで聞こえた。
「・・・わ、私・・・、また・・・、ひと、り」
零れ落ちた声は情けないくらいにか細くて。
前世とは違う、今度はちゃんと信用できる人ができた。
・・・そう、思っていたのに。
結局何も変わらないままだ。
私は自分の頬が何かの雫で濡れていることに気づいて拭った。
涙だった。
数秒して今更ながらにハルロド様とヒロインが見ていることに気づきて私は急いでその場から逃げ出した。
後ろから呼び止めるような声が聞こえた気がしたけど無視して走った。
それがみっともなく嘆いて泣くだけの今の私に出来る精一杯の抵抗だったから。




