11 騒ぎの中心になりまして
結局ニコラスは予鈴がなるまで私を抱きしめてたので廊下ではちょっとしたざわめきが起こった。ただ、ニコラスにしっかりと抱きしめられてたおかげで相手が私だって言うのはわからなかったみたいでみんなは能面ニコラスがついに恋を?相手は誰だ?!なんて騒いでるみたい。
まぁ、私はそれにひやひやしながら教室に入ったのだけれども。
ニコラスは隣のクラスだからあれ以上何かを話すことはなくて結局なんで主従関係を解消しなかったのか謎のまんまなんですよね・・・。
朝からハードだった・・・。
ぐったりとした私が教室に入るとみんなの目が一斉にこちらに向いた。
え、何?!
と思ったのも一瞬ですぐにニコラスの事だとわかったのでみなさんの目線には気付かないふりをしていつも通り席につく。
いくら全自動が長くても辛うじて自分の席は覚えていたので私は密かにほっとする。
ちなみに私に取り巻きはいない。
普通、定番の悪役令嬢なら取り巻きもいるんだろうけど私の場合、やってることがえげつなさ過ぎて本気で嫌われてるから正真正銘ボッチです。寂しくなんかないもんね、へっ!
ちなみにもう1人の悪役令嬢、マリア・バージニアには取り巻きいる。ていうか信者もいる。
・・・なんだ、この差は・・・!!お前も悪役令嬢だろぉぉぉ!!!
寂しくなんかないっ!寂しくはないけど・・・、悲しいよぉぉ!
改めて現実を突きつけられてひとり悲しく落ち込んでいるとすぐ側で不快な声が聞こえた。
「とうとうニコラス君にも捨てられましたか、性悪女さん。」
私はそのセリフを無視する。
「無視とはいい度胸ですね、いや私とやりあって勝つ自信が無いのですか?」
無視。
「いつもの威勢はどうしたんですか?」
無視。こいつ、しつこいな・・・。
「・・・いい加減返事をしたらどうですか、貴方は口がないのですか?」
無視。なんかちょっと声震えてね?
「な、なんでそんな無視するんですかぁ?!」
半泣きの声が聞こえてきていい加減うるさいので私はそこでやっと騒音の原因、ルイス様を見た。
「なんですの、朝から。騒がしいですわよ。」
私、低血圧だから朝苦手なんだよね。
少し睨みをきかせてやつを見ると心なしか瞳が潤んでる。
げ、こいつ相手にされないからって半泣きしたの・・・?
明らかに私の目は嫌悪感たっぷりなのにそれに気づかない。そんなにやっと返事をしてもらったことが嬉しいのか、お前。
「騒がしいとはなんですか、味方がいなくなった貴女に労いの言葉をかけてあげようとしたのに。」
眼鏡のブリッジをカチャリと音を立てて得意げにしてるけど私、別に元々味方いないし。ていうかいなくなったというよりはむしろ増えたし。アーネストとニコラスいるし。あ、ニコラス味方かわかんないけど。
私が黙っていると何を勘違いしたのかルイス様は「ニコラス君に主従関係の解消でも頼まれるのも時間の問題ですね」なんてドヤ顔で笑っているので私は素直に「いえ、逆に解消を拒まれました。」と答えてやった。
と、やつは面白いほどに固まったので私はそのままやつの視界からフェードアウトする。
・・・なんで前世の私、あんな奴を推していたんだろ。やっぱり画面越しが一番よ。
溜息をつきながら周りを見渡すとなんと全員がルイス様と同様に固まっていた。
あ、サラ様も固まってる。
ちなみに我がクラスにいるがく☆ぷりの登場人物はヒロインのサラ様とルイス様と、後、担任。
まぁ、腹黒ショタとハルロド様がいないのは嬉しいんですけどね。
え?クラスが違うんだったらイリーナはハルロド様にアピールできなかったんじゃないかって?
チッチッチッ、愛の力を舐めちゃいけないよ。
私はね、休み時間の度にハルロド様の教室に無理やり押しかけて好意の押し売りをしてたわけですよ。健気だね、私。
やってたのは全自動の時だけど。
なんてどうでもいいことを考えていると再び後ろからうざったい声が。
「う、嘘です!!ニコラス君がそんなこと言うわけない!!どうせ脅したんでしょう!」
あーあー、理系キャラなのにすっかりキャラ崩壊してるよ。
私はルイス様に「落ち着きなさい」と声をかけてから「嘘だと思うなら聞いてみればいいでしょう、本人に」とニコラスにこの面倒臭い男を押し付けることにした。
いや、だってまじでうざいんだもん。ニコラス、頼んだよ。
私はそのまま有無を言わせないオーラを出しまくって席についた。
その後、ザハール先生が教室に入ってきて「なんだ、この空気?」と呟いたことでみなさんの金縛りのような硬直は溶けた。
ルイス様も私の方をチラチラと見ながらだけれども渋々席につく。
「あー、出席をとる前に」
ちらっ
「一つ、知らせがある。」
ちらっ、ちらっ
「実はだな」
ちらっ、ちらっ、ちらっ
・・・うっっっぜぇ!!!
さっきから恋する乙女のようにちらちらちらちらちらちらこっちのことみてきやがって!!
先生が何か言ってるのはわかるんだけどルイス様のちらっちらがウザすぎて頭に入ってこない!!!
なんてルイス様のちらちらにひたすら私がイライラしていると教室が大きくどよめいた。
・・・え、何?
私が前に目を向けるとそこには圧倒的美貌をもった、私の唯一の味方、アーネストがいた。
「あ、アーネスト?!」
ガタンっ!と音を立てて立ち上がった私に周りは驚いていて目を丸くさせている。
先生までもが驚いていてこちらをガン見している。
でも私はそれどころじゃない。
いや、まさか転校生としてくるとは思わなかった!
ただ教室で唯一、アーネストだけがニカッ、と笑って私を見る。
「よっ!」
そして元気に片手をあげて挨拶するもんだから私は笑ってしまった。
あー、アーネストのオカンみたいな雰囲気安心する・・・。
前世のクラスメイトの男子にもこういう人いたわ。
なんて思っているとアーネストがまだ自己紹介出来ていないにも関わらずチャイムがなってしまった。
「あ、俺アーネストって言います。気軽によんで。一年間よろしく!」
素早く自己紹介を済ませると未だに固まっている教室の中でアーネストだけがズンズンと私の席に近づく。
「転校生としてきちゃった」
「き、きちゃったってあんた・・・」
私が呆れ気味にいうとアーネストは「へへ」と笑う。
「俺が帰った後大丈夫だったか?変な目にあってないか?」
「ありがとう、おかん。私は大丈夫でした。」
「おいコラ、誰がおかんじゃ」
なんて一日離れてただけなのにやけに久しぶりに感じるやり取りをしているとガラッ!と大きく教室の扉が乱暴に開く音がした。
「お嬢様!!!ちっ、やっぱりか。貴方は離れてください」
私とアーネストの間に割り込んできたのはなんと隣のクラスのはずのニコラスだった。
「え?ニコラス?!何でここにいるの?」
「お嬢様と離れた後、廊下でこいつを見かけた気がして嫌な予感がしたんです。」
嫌な予感て・・・。ニコラス、アーネストをなんだと思ってるの?
なんて苦笑いしてるとやっと教室のみんなが動き出した。
「え、ニコラス、君。なんで?ていうか、そのイケメン・・・」
真っ先に声を発したのはサラ様だ。
・・・・・・?なんかいつもと様子違くない?
ブツブツと何かをつぶやくサラ様の声を拾うと「好感度が・・・」とか「あの時のイベント・・・」とかが聞こえてきた。
・・・え?え?ちょっとまって?サラ様転生者な感じ?
しかもかなり危ない雰囲気出ちゃってますけど?目が血走ってるけど?
恐る恐るサラ様の様子を観ているとサラ様はいつものか弱い感じに戻ってニコラスの方へ向き直る。
「に、ニコラス君どうしたの?こんなところまで来て。もしかして私にあいにきてくれ「違います」
サラ様の可愛らしい声を途中でさえぎったニコラスは怖いくらいにアーネストを睨んでいる。
・・・oh、ニコラス。君はきっぱり言い切りすぎだ。そしてアーネストを睨みすぎだ。後、さっきから私の手をさりげなく握るな。
・・・って言うかこれ、完全にヒロイン転生者な感じね。
わかるわかる、Web小説とかで良くあるよね、うんうん。
って、分かるかぁーー!!何何?今までのか弱い感じとか嘘だったの?演技?正直、ヒロインが転生者とか一番怖いんですけど、性格悪かったらどうしよう・・・!
こわごわとサラ様を見ると・・・って、ごっつ睨まれてるぅぅ!!
絶対これやばいやつやん!!後から私を罠にかけたりする系ヒロインじゃん?!!やばいやばい、こうなったらアーネストに相談するしか。
「アーネスト、ちょっと」
「ん、なんだ?」
「相談したいことg「お嬢様、相談なら私が受けおりますよ」
に、ニコラスぅぅぅぅぅ!!!!お前はなんでさっきからアーネストと私が喋るのを邪魔するんだ!!
「に、ニコラスは今はいいわ。後で相談するから」
「お嬢様・・・、私はこんな男より頼りないのですね・・・」
「あっ、いやそういう訳じゃ」
「・・・イリーナ、こいつこんなキャラだっけ?」
アーネストがもっともな問いを投げかけてきたので違います!断じてこんなキャラではなかった!と言いきりたいけど本人の手前そんなことは言えず私は目だけで訴える。
「に、ニコラス君?!君、本当にイリーナ様との主従関係を?」
「お嬢様、話してしまったのですか?」
余計なところで入ってきたルイス様のせいで私はニコラスに睨まれる。
ひぃぃ!ルイス様、空気読め!お前、後で覚えておけよ!
「あ、アーネスト!」
「ダメだこりゃ、ちょっと落ち着くまで傍観してる」
アーネストーーーーーーー!!!!今が一番助けが必要な時なんですけどぉぉぉぉ!!!
私は一気に騒がしくなった教室の中心で次から次に起こるハプニングに目を回すばかりだった。




