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10 ニコラスの過去を思い出しまして

後ろを振り向けばそこにいたのは予想通り、ラスト攻略対象のザハール・エメレスト先生がいた。

今のやりとりのどこが仲良さげに見えたのかは知らないけど私は違和感に首を傾げる。

この先生、私のこと嫌いなはずなんだけどな。一応先生だから表向きはほかの生徒と同じ態度をとってくれるけど話すのは業務連絡か私がしてる悪事への忠告だけ。

んー、なんで話しかけられたんだろ?


まぁ、先生の中で私に敬語使わないのこの先生だけだから私は結構気に入ってるんだけどなぁ。

なんて考えながら私が挨拶をすると先生も短く「ん、おはよう」と返した。


「で、いつからお前らそんなに仲良くなったんだ?」

もう一度問われ、仲良くなった自覚のない私はそれに曖昧に微笑んで「そうですか?」と答えになってない答えをよこす。

質問の意味や答えがわからない時はとりあえず曖昧に微笑んでおきなさい。そうしておけば相手は勝手に勘違いしててくれるからってばっちゃんが言ってた。

前世と今世、どっちのばっちゃんか忘れたけど。


「あ、あぁ。」

ザハール先生は引き気味に答えた。

・・・ばっちゃん、なんか悪い方に勘違いされた気がするんだけど。


私もどうすればいいのか分からなくてまたもや、曖昧に微笑む。

しばらく2人で微笑みあっていたらニコラスが呆れ気味に一言、

「お嬢様、そろそろ行きましょう」と言った。

ニコラス、ナイスタイミング!!

私は心の中でニコラスに親指を立てて褒め称える。

「そうね、先生ご機嫌よう。」

先生の返答を待たずに私はその場をあとにした。





その後しばらく歩きながらゲームのことを詳しく思い出していた私は頭の中にある考えが浮かんだ。それはニコラスと私の主従関係の解消。


いや、なんで急にこんなことを思いついたかってゲームの内容をよく考えてみたらニコラスとはいち早く主従関係を解消した方がいいことに気づいたからですよ。

がく☆ぷりでニコラスは極悪非道の我儘で傲慢で高飛車な令嬢(私のことですね、はい)に虐げられる日々を送っていて人間不信になっている。それがヒロインと出会って幸せになる、って言うのが主なストーリーなんだけどここで終わればいいのよ、別に。素直に幸せになってね、って思えるんだけど、忘れちゃいけないのが、ニコラスはヤンデレだということ。

ニコラスはヒロインを落とすために外堀を埋めに埋めてかかるんだけれどもヒロインと結ばれたニコラスは私を始末することを決める。処罰じゃないよ、始末だよ。大事なことなので何回でもいいます。処罰じゃなくて始末です。

もう、大魔王様も真っ青な愛の力とやらで私は恐らく見事に始末されたんだと思う。

ニコラスルートでヒロインとニコラスが結ばれたあとの私のその先の話は「その後、誰もイリーナ・アナベルを見た者はいなかった・・・」というなんとも不吉な文章で締めくくられているからね。いや、怖すぎるよね。まじ勘弁。

しかも正直私、あんまりハルロド様以外の攻略対象とは関わりたくないんだよね。ハルロド様と関わるのだって平民落ちのためだし。

なんて考えてこの結論に至る。



「ねぇ、ニコラス」

私の呼びかけにニコラスは可愛らしく首を傾げる。

「なんですか、お嬢様」

「えっと、あの、そのー、」

あんまりどもってしまうとイリーナっぽくないとは分かっているものの私の生死がかかってる事なのでどうしても怖くなってしまう。

けどいつまでもあーだのうーだの言ってるわけにもいかないので私は覚悟を決めた。

「私との主従関係を解消しない?」

どんがらがっしゃーーーん!!!

後ろですごい音が聞こえた。

しかもさっきよりすごいやつ。

「ニ、ニコラス何してるのよ?!!」

私はニコラスの方へ振り返る。

そして「大きな音をたてるなんてまだまだね」とイリーナっぽく叱ろうとしたのだけれどもそれより先にニコラスが出した声に私は体がすくむのを感じた。

「・・・は?俺と貴女が主従関係を解消する?」

聞いたこともないくらい低いニコラスの声。

ひぃぃぃ!怖いぃぃぃ!!怖すぎるぅぅぅ!!

なんでそんな怒ってるんですか?!!

あれですか、あれですよね、あのー、今まで散々いじめてきたくせに何を言ってるんだって感じですよね、すみませんん!っていうかニコラス今まで一人称、俺なんて使ったことなかったじゃん!!ゲームの中でもいつも丁寧に私って言ってたじゃん!!あ、でもバッドエンドでヒロイン監禁エンドの時に「これで貴方は永遠に俺の花嫁・・・」とかなんとか言ってた気が・・・、いやマジ勘弁、本当に、何でもしますからぁぁぁ!!!


「いや、無理にとは言わないけどニコラスもそろそろ・・・」

内心パニックな私は御機嫌伺いのためにニコラスに笑いかける。

「貴女も・・・」

「え?」

ニコラスは低く唸るように何かを呟いたが私は聞き取れなくてニコラスに問いかける。

「貴女も俺を捨てるんですか?」

「え、え?」

捨てるって何?っていうか貴方もってことは1度捨てられたことがあるってこと?


私はなにか大事なことを忘れている気がして恐怖で動かなかった頭を必死に働かせる。

がく☆ぷりは前にも言った通り、ストーリの緻密さが半端じゃない。

私の裏話的な話があるんだから確かニコラスの裏話もあったはず・・・。

ニコラスの、話・・・。


必死に頭の中の記憶を引っくり返す。そして、思い出した。


・・・そうだ、ニコラスは赤ちゃんの頃に1回実の母に捨てられているんだ。


ニコラスの母は倡婦だった。快楽だけを求めるニコラスの母はニコラスを身篭ったと知って疎ましく思う。この世界に堕ろすという価値観はないからニコラスの母はニコラスのことを産むだけ産んで何もしなくてもニコラスが勝手に死ぬようにスラム街に捨てていく。それもかなり治安の悪い場所へと。

それを見つけたのが我が父だ。父は私とは違ってゲームの中でも人が良く、なんとかひとりで生き延びたものの生きることに希望を見いだせていなかった目の死んだニコラスを保護して私の従者にと身寄りのないニコラスを引き取った。

まぁ、その後私にいじめられる訳だけどさっきも言った通り、ヒロインに出会って人間らしくなっていく。


これは画面越しに見ていても結構心にくるものがあった。

どうやら私は、はからずもニコラスのトラウマを抉ってしまったらしい。


「ニコラス、違うの。私は貴方のことを捨てるわけじゃない。貴方が選ぶの。」

ニコラスはその言葉に不安げに瞳を揺らしてこちらを見る。

私はしゃがみこむように座っていたニコラスと目線が合うように膝立ちになった。

「勘違いさせてごめんなさい。ニコラス、何度でもいうわ。選ぶのは貴方。貴方はもう選べるの。自分で自分が望んだことをして。」


貴方はもう選択肢のない、ただ捨てられるだけだったあの頃とは違うでしょ。だから貴方は貴方の手で私の元から飛び立ちなさい。


そういう意味を込めって言ったのだけれどもニコラスは私をスッポリと抱きしめた。


・・・ん?あれ?これは最後の挨拶ってことかしら?ってことは最後くらいは少しは懐いてくれたってことかな?


なんて考えていると頭上からニコラスの声がした。

「お嬢様、俺は・・・、いや私は」

「ええ」

私はニコラスの声が少し震えているような気がして優しく頭を撫でる。少しでも安心するように。

「お嬢様に一生お仕えします」

「そう、今までありが、ってえぇぇぇー?!」

当然返ってくると思っていたさようならの返答ではなくて私は狼狽える。

いやいや、おかしいって。なんだ?何が原因だ?!

「な、なんで?!!あ、お金のことだったらやめた後も私が保証するわよ!」

だからやめていんだよー、と言外に伝えるもののニコラスに「そんなことは関係ありません」とピシャリと言われてしまった。

「じ、じゃあなんでよ?!」

パニックになり、半泣きな私が叫ぶとニコラスはクスクスと笑って、ってニコラスが笑ってるぅぅぅぅ?!!!!

「え、あ、え?!」

ニコラスが笑うのって本当にラストだよね?!!しかもハッピーエンドでしかこんな笑わないんですけど?!!

私が狼狽えているとそれを見てニコラスはさらに笑う。

心なしか腰に回された腕の力も少し強くなった。

「これからも末永くよろしくお願いしますね、お嬢様」


ニコラスはそう言って妖艶に笑った。


次回ニコラス視点です!

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