1 いじめイベント中でして
よろしくお願いします!
「この、薄汚い泥棒猫がっ!」
・・・泥棒猫とかいまどき使う人いないでしょ。
「庶民が何様のつもりよ!!」
いや、お前は何様。・・・伯爵令嬢様ね。はいはいはい。
「私の婚約者だと分かって近づいていらっしゃるの?」
いや、知らないだろ。ていうか、婚約者って金髪蒼眼で恐ろしいほど美形の人だよね?こっちに近づいてきてるよ。多分この会話全部聞こえてるよ。
なーんて、次から次へと絶え間なく出てくる暴言に心の中でつっこみながらも最終的にまとめるのなら、言えることは一言だけだ。
まぁ、この暴言吐いてるの私なんですけどねw
◇◆◇
どうも。イリーナ・アナベル、16歳。一応伯爵令嬢やってます。
只今の状況、
ヒロインへのいじめイベント発生中。
で、虐めてるのは私。
ヒロイン、いじめイベント。
・・・・・・この単語から察しがいい人はお気づきいただけただろうか?私の気の毒すぎる立ち位置に。
イリーナ・アナベル、ただの令嬢じゃなくて乙女ゲームの悪役令嬢やってます。(白目)
テンプレだって?えぇ、えぇ。私も転生に気づいた時は正直思ったわ。でもいざ当事者となるとそんなこと言ってられないんだよね。ていうか、純粋に思うのはね、神様は私に一発殴られても文句言えないと思うの。
だって、私・・・・・・。
自分の意思で喋れないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉ!!!!!!
さっきのヒロインへの暴言も全部私の意思ではなくてゲームの強制力によるもの。いわゆるオートモードですよ。
普通さ、転生に気づいた悪役令嬢とかってさ、テンプレ通りにいくと退学処分フラグとか死亡フラグとかを折るために幼い頃から運命を変えようとしたりするじゃん?
私も出来るものならそれがしたかったよ・・・。ふふふ。
それが出来なかった理由がこのあとの話に関係してるんだけれども・・・。
まぁ今はそのことについては置いておいて、皆さんの中でこう思う方もいるんではないでしょうか?
ゲームの強制力があるって言っても小さい頃はないでしょ?って。
ゲームが始まる前で強制力なんて働いてないんだろうし、その時に運命を変えればよかったじゃないって。
甘い。甘すぎるよ。黒糖ドーナッツに蜂蜜と砂糖かけてチョコレート漬けにしたくらい甘い。
この乙女ゲーム、『魔法学園革命☆王子様と私』(我ながら恥ずかしい名前の乙女ゲームやってたな、と思う)略して、がく☆ぷりはストーリーが緻密なことやキャラクター性、スチルの美しさなどに定評があった。
特に話題となったストーリーの緻密さは本当に凄くて物語に大きく関わってくるヒロインの隠された生い立ちからそれ必要あるの、誰が読むの?という悪役令嬢の過去編までたくさんのストーリーが収録されている。
・・・そう。悪役令嬢の過去編。
・・・・・・。もう一度言おう。
悪役令嬢の過去編、だ。
つまり、ね。
ゲームの強制力は幼い頃からあったんだよ☆
なんか説明してたら虚しくなってきた。神様、マジで1回殴らせろ。ついでに箪笥の角とかに足の小指ぶつけまくる呪いがかかってしまえ。
はい。という過酷すぎる星の元に生まれた私ですが、ゲームが始まる頃にはしっかりとゲーム通りの傲慢で我儘な令嬢になってましたよ。そんな私の行き着く先は良くて婚約破棄、学園退学、その場合貴族の私は平民落ち。最悪の場合、死亡。または行方不明。って言うか殆どのルートで私は死にます。
・・・おっし!神様どこだっ?!
まぁ、なんて冗談は置いておいて。いや別に冗談ではないけど。いつか絶対ボコる気ではいるけど。
話が進まなくなるので今はこれ位にしておいてやろう。
とりあえず今はこの乙女ゲームについての説明。
がく☆プリに出てくる攻略対象は私の婚約者を含めて5人。
私の婚約者で金髪蒼目の俺様冷徹野郎、理系男子という名の屁理屈男、ショタ系腹黒野郎、ロリコン疑惑浮上の教師、そして最も3次元に出てきてはいけない、ヤンデレ。
キャラの説明に嫌味がはいってしまうのは許してほしい。
・・・ほら、2次元だからこそ許せることってあるじゃない?
しかも、ゲームやってる時ってヒロイン視点だからチヤホヤされるだけっていう。
ね、今の私の立ち位置、さ。悪役令嬢だからね。攻略対象全員どころか学園から嫌われてるというか恐れられてるというかね・・・。
扱いもそれなりに雑になってくるし、ちょっとムカついたっていうか・・・。
・・・・・・すみません。オートモードとは言っても私に対する扱いが雑すぎてちょっとやつあたりしました。
本当は攻略対象なのでイケメンだし、人気者です。
でも性格には難があると思うの。もう一度いうよ。性格には難があると思うの。
やっぱりキャラとして見る分には眼福よ?でも、3次元に出てきちゃったら前世のある私的にはくそ非常識人間にしか見えないわけですよ!!
いくら私が今世紀最大の悪女とかいうあだ名がついている人物だとしてもね!!!
財力も権力も膨大で悪かったわね!!どうせ私はオートモードでしか喋れないわよ!どーせ、悪女よ!
っと、・・・失礼。長年の恨みつらみがちょっとね。
まぁ、とにかく攻略対象はそんな感じ。
で、気になるストーリーはというと。
これは割と王道ものかな、と思う。
魔法学校に莫大な魔力を持つが故に入学した平民のヒロインが貴族達の間で自分の意思を貫いて学園に革命を起こす、というストーリーになっている。普通、魔力持ちは貴族に多いのに平民でしかも莫大な魔力を持っていることにヒーローが興味を持ってストーリーは始まる。
このゲームの仕様は攻略対象を一人に絞ってルートを決める感じ。
一応、逆ハールートはありなんだけど激ムズで私はクリア出来なかった。
・・・思い出す、「全攻略キャラにチヤホヤされるルート?!!そんなんやるっきゃないっしょ!ふぉぉぉぉぉ!!!」と意気込んだものの少しでも選択肢を間違えればバッドエンド、もしくは全員と友情エンド。
スペックをあげないと攻略できないルートだったから魔力とか勉強に励みすぎて作業ゲーになった日々・・・。
懐かしき私の悲しい青春よ・・・。
・・・じゃなかった。今はそんなこと言ってる暇じゃない。
まぁ、でも皆さんそろそろ説明ばかりで飽きてきただろうからここで一つ、衝撃的な事実をお伝えしよう。
あのね実は私の役どころってね前世でのあだ名があったの。
そのあだ名っていうのが「憐憫の悪役令嬢」
よく掲示板とかにこのあだ名乗ってたわ〜。懐かしい。
私も前世ではイリーナ・アナベルのあまりの不幸さに画面みて「ざまぁwwwwww」って大笑いしてたわ。
まぁ、今となっては思いっきり特大ブーメランなんですけどね。えぇ、はい。・・・笑えねぇー。
で、なんでそんなあだ名がついたかと言うと・・・。
実はこのゲームには悪役令嬢が二人いるんだけどひとりは私で、もう1人は学園で私と同じくらいの権力を持つ『マリア・バージニア』という女子。この子はこの子で私の婚約者のことが好きで私とヒロインに嫉妬する。
これだけ私にひどい仕打ちが来るんだからそりゃあもう1人の悪役令嬢にもおも〜い罰が下る。
と、思うでしょ?
さてさて、衝撃の事実。
実は同じ悪役令嬢でも『マリア・バージニア』にはヒロインと攻略対象の一途な愛を見て更生してほかの人と恋人になるっていうルートがある。
ていうか、むしろ『マリア・バージニア』はほぼ全部のルートでハッピーエンドなのよ!!!
それでついたあだ名が「幸福の悪役令嬢」。
・・・これはあんまりじゃないかしら?
な・ん・で・私はこっちに転生したの?
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
ゴラァ!!クソ神ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
お前今どこにいるんだ!絶対見つけ出すっ!そしてボコす!!