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3.プロローグⅢ

 自宅の庭に植えてある、ぼくのザラクが15回目の開花を迎えた。


 ザラクは子供の誕生と同じ日に無病息災を願って植えられる。そして、その双葉に子供の名を刻むことで魔力のパスが形成される。ザラクはパスを介して成長の糧となる魔力を受け取るのだ。

 ここで仮に、その子供を宿主と名付けたとする。

 一見、宿主に何もメリットがないように感じられる。むしろ使用可能魔力が減るというデメリットをもたらしている。にもかかわらず、親は嬉々として契約を我が子に結ばせる。

 

 というのも、ザラクは面白い植生をしており、なによりも子供の無事を切に希求する親にとって有用な機能を有しているからだ。

 まず、契約が成立したザラクは宿主の魔力のみしか受け取ることができないのだ。そして、宿主が死に絶えれば、契約を結んだザラクも枯れ果てる。

 しかし、宿主さえ無事であれば、ザラクはある種の不死性を誇る。如何なる巨漢であっても枝を折ることさえ能わず、どのような戦略級大規模魔法であっても傷一つ負わせることさえ能わず、どれほどの天変地異が襲ってきたとしてもその存在に影響を与えることさえ能わない。

たかだか逆境がなんのその。植えられた場所が、整備された庭でも荒地でも鬱蒼と茂った日の届かない森でも、鉢植えに植えられ室内に飾られていても宿主が健康ならすくすくと育つ。


 それ故に、一部の地域では神聖化されているという報告も上がっている。


 さらに、もっとも特異な性質と言われているのが、花が咲く時期である。開花の日は木によって違い、その一年で最も生命力が高まる宿主の生まれた日に咲くとされている。咲く花も千差万別で一説では、宿主の性格が出るともいわれている。



 ぼくのザラクが15回目の開花を迎えた(=15歳になった)次の日、母上はぼくに


「教えられることはすべて教えた。あとは好きに生きろ。お前の人生はお前のものだ。」


 と言った。

 最後にぼくを抱きしめ、耳元で、悔いなき人生を──と残し旅立っていった。


 母上のシトラス系であると思われる爽やかな香りの余韻がほのかに漂うなか、ぼくは今後について考えを巡らしていた。


 当時は錬金術にどはまりしていた。

これ以上ないくらいにはまっていた。

どれもこれも、すべては世間一般では貴重とされる錬金材料が簡単に手に入るのが悪い。


 勿論、ゲームにこの機能は実装されていなかったため、当然のことながら文献を参考に一からレシピを作らなければならなかった。


 結果はどうあれ、試行錯誤しているこの時間が一番楽しい。


 軽い気持ちでもう少しここで実験していよう、と決めそうこうしているうちに、三回ザラクの花が咲いた。この家で育ったらしい母上の樹も順調に花開いた。どうやら彼女も息災のようでなによりである。



 ぼくが生きるこの世界は現状世界でありゲームみたくステータスといった便利な存在は確認できていない。

 しかし、どういう訳か年々はっきり感じとれるほど魔力量が上昇しており、いまだ伸び盛りらしくまったく成長が衰える気配がない。


 そのことも外に出ない(引きこもる)ことを決定づける一因になったことも否定できない。


 まあ、まったく胸を張れる選択ではないがな!


 怖じ気づいたとか、びびったとか、そういう問題ではないからな!!!


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