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 ここにきて、一つ分かった事がある。


『コイツ』は鍛えなかったんじゃない。


 鍛えられなかったんだ、と。



『前』の感覚でついつい調子に乗って鍛えていたら、ぶっ倒れた。

 おまけに熱まで出てしまい、何故そんな事になったのか理由を尋ねられ、つい正直に話してしまった為に暫く鍛えるのを禁止された。


 仕方がないので空気椅子をしながら水を飲んでいたら、セバスに見つかり無言でベッドに押し付けられた。


 む…?

 セバスは笑顔だ。笑顔…の筈なのに、俺の本能が何故かこれには逆らってはいけないと感じたので、仕方なく今は大人しく寝る事にした。



(………しかし、足上げ位なら良いだろうか…?)



『コイツ』がこんなに虚弱だとは思ってなかったので加減を間違えてしまったが、こんな身体でも色々戦いようはある。



 筋力を付けるのが難しいのなら、他の能力を高めていけばだけだ。



 相手の力を受け流し、その力を利用して敵を倒す。



 ようは最初の一撃を受け流す事が出来ればそれだけで生存率は格段に上がるのだ。



 それにこの方法ならば女子供でも出来るので『コイツ』には打って付けだろう。



 完全に拘束されてしまえば何も出来なくなってしまうが、要は捕まらなければ良いのだ。



 ただし、これには関節の柔軟性と相手の動きを見極める目が重要になってくる。



 目に関しては前世で培われたものがあるのでまず問題はないだろう。寧ろ前より目が良くなってる分、やりやすいくらいだ。


 問題は柔軟性の方だが……



 (……………柔軟体操は鍛えるには入らないよな…?)



 筋肉を付ける訳じゃないしな。



「よし!」



 ガチャ



「あ」



まるで図ったかの様にタイミング良く開いた扉に、思わずベッドの上で妙な姿勢のまま固まった俺はセバスに怪訝そうな顔で見つめられてしまった。



「…ルーベンス様…?」



 その声にも、何してんだこいつは…的な響きが多分に含まれていて、その事に何故か焦りを覚え咄嗟に言い訳にもならない様な言い訳をしてしまう。



「いや、これは柔軟体操だから!鍛えてないからな!?」



「………はあ。わたくしはまだ何も言っておりませんが?」



 (いやね?なんか無言の圧力的な何かが……あ、いえ何でも御座いマセン)



「……オ、大人シク寝る事ニシマス」



「ええ、それが良いでしょう」



 くそー何かセバスって(前世の)俺の世話役のじいに似てんだよ…だから何となく逆らいにくいんだよなぁ


「セバス」


「なんで御座いましょう?」


「もう、勝手に動いたりしないから代わりに本を持って来てくれないか?」


「畏まりました。…どのような物が宜しいですか?」


「国史の本を頼む」


「国史の何巻をお持ちしますか?」


「あー…二十四巻以降があれば持って来て欲しい」


「畏まりました。それなりの数になりますが、纏めて持って来た方が宜しいですか?」


「出来るならそれで頼む」


「それでは朝食の後に商人の者が来ますので、それが終わりましたら此方のお部屋にお持ち致します」


「ああ、ありがとう」


「………朝食は半刻後にお持ちします、それでは失礼致します」


 とりあえず服の調達だな。…あの部屋の物よりマシなのがあれば良いけど…


 そういえば俺たちの時代にもあんな感じのがいたなぁ…

 やたらフリルの多い服着て、取り巻きの数がやたら多くて…やたら突っかかってくる癖に激弱っていう…

 …確か公爵家だった気が。


 えーっと確か……ボドリー公爵家?だったっけ?


 俺は意外と面白くて嫌いじゃなかった(ま、向こうには俺はかなり嫌われてたのだが)けど、陛下はかなり嫌ってたなぁ


「フッ………」


 懐かしいな…




 まさか、また俺が学園生活をする事になるとはなぁ…人生って分かんないもんだ。













 朝食の後、紅茶を飲んで落ち着いていると、早速商人の男が呼ばれたらしく入室許可を取ってきた。

 勿論俺はそれを快諾する。

 俺は服なんか既製品で良いと思っていたが、どうやらそういう訳にはいかないらしい。

 商人の男が物差しを持ってニコニコしている。


 ……はぁ、面倒だが仕方がないか。


 結局、体のサイズを測るだけでなく服の色味、生地、どんなデザインが良いのか等々とにかく多種多様に決めなくてはならない事があり、粗方終わる頃には日が随分高いところまで登っていた。


「はあー…………」


「お疲れ様でした」


 いつの間に用意したのかセバスがお茶とお茶菓子を出してくれた。


 俺はそのお茶を一口飲み、ふぅ…と一息つく。


「いや、俺の我儘に付き合って貰ってるんだ。この位の事は何でもない」


「…………左様でございますか。ですが顔色がまだ宜しくない様なので、無理はなさらない様にして下さいませ」


「ああ、そうだな。無理はしない。セバスは怒らせると恐そうだからな」


 ……あれは恐かった。


「…………貴方は…」


「ん?」


「…いえ、なんでもありません。この後は頼まれていた本を持って来る予定でしたが、どうされますか?」


「あー…少しお腹が空いた気もするな」


「でしたら先に昼食をお持ち致します」


「ん。頼む」




すみません、一旦ここで切ります。


セバスが身内に似ていた所為で、アルの気が抜け気味です。そしてセバスの方も………?


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