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やっと新章になりましたね〜!
ここからはサクサク投稿とはいかないかもしれませんが、頑張っていきます。
あと応援メッセージなどがあると、めちゃくちゃ力になります(>.<);;
「では、お気を付けて行ってらっしゃいませ。お風邪など引かれませんように」
「ああ、分かっている。出来る限り気を付ける」
「本当はわたくしが一緒にお供したかったのですが…」
心配そうなセバスに俺は大丈夫だ、と笑い掛ける。
「いや、無理をするな。俺の居ない間の領の管理もして貰わなくてはならないからな。また週末には戻って来る予定だから、それまで頼んだ。…明日派遣されて来る者達にもそう宜しく伝えておいてくれないか」
「……畏まりました」
そうして一ヶ月に及ぶ謹慎生活は終わりを告げ、俺は学園へ向けて出発した。
学園へ向かう馬車の中で、そういえば…と、ふと思い出し懐を探ると一枚の手紙を取り出した。
セバスに渡された学園長からの手紙だ。結局あの日は木刀作りに夢中で、すっかりその存在を忘れていたのだ。
簡素な白い手紙には、学園の校章で封印が施されていた。
それをなるべく丁寧に開封すると、中にはきっちりと折りたたまれた数枚の紙が入っていた。一枚は学園寮の地図と部屋番号で、残りが学園長からの手紙の様だった。
どうやら、学園長は事情を全て把握しており、その学園長の配慮で部屋を一人部屋に変えてくれたらしい。
学園に着いたらまず学園長室に来る様にとも書かれていた。
俺は学園長の心遣いに感謝した。
とりあえず、部屋ではゆっくりと過ごす事が出来そうだ。
ルーベンスの記憶によると、部屋は余程の事がないと身分に関係なく二人部屋だそうだ。その辺りは俺の時代と大して変わっていない。
『本当に付いて行かなくて良いのですか?』
学園には侍従若しくは侍女のどちらか一人であれば世話係として入る事が出来る。なので出発ギリギリまで二人に聞かれてしまったが、二人には俺の側よりも今は領の方を優先して貰った方が良いだろう。一応侍女登録だけはしてあるので体調を崩した時なんかは来てもらう事も出来る。
俺がそう言うと、
『体調を崩す前提なんですか?でしたら、やっぱり一緒に行った方が…』
と再び話がぶり返してしまったので、慌ててちゃんと体調管理もするから大丈夫だと説得する羽目になった。
実際、くしゃみの一つでもしただけで飛んで来そうな勢いだったから、本当に気を付けないといけないな。
「ふふ……」
人にこんなに心配されるのはいつぶりだろうか…
二人には申し訳ないが、誰かに心配されるのは正直嬉しい。
俺が『此処』に来た時は訳も分からず学園を追い出されて混乱していたが、その時はまさかこんなに落ち着いた気持ちで戻る事が出来るとは思ってもみなかった。
そういえば……
学園長の手紙に変な事が書いてあったな。
『今回の事の真相は本当に一部の人間にしか伝えられていない。その為、君の事を誤解したままの生徒が、数多くいるだろう。学園側でも対策は取るつもりではあるが、君も十分に気を付けてくれたまえ』
by学園長
騒がしく…って喧嘩売られるって事か?まあ、確かに学園では嫌われてるだろうし仕方がないけど、今の俺じゃ自分の身を守る事すら難しそうだな。
…早いところ味方を作っていかないとヤバイか。
ふむ…サーニャを置いてきたのはやっぱりマズかったか…?
いや…かといって今更やっぱり一緒に行ってくれと言うのも余りに情けないし…とりあえず、出来るだけ頑張ってみるか。
そうして、俺は一抹の不安を覚えながらも、漸く遠くにぽつんと見えてきた学園の屋根を、馬車の中からじっと見つめ続けていた。