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これで第1章は完結です(^。^)/
次はいよいよ学園編になりますが、引き続きお付き合い戴けたら嬉しいです。
次の日の朝、俺は思ったよりもすっきりと目醒める事が出来た。
謹慎していたこの一ヶ月で朝は随分と冷え込む様になったので、窓は開けずに外の景色を眺める。今朝は薄っすらと霜が降りていてその小さな氷の結晶がキラキラと朝日に反射してとても綺麗だった。
俺は昨日の内に領内の地図や、領民の情報の載った資料を用意して貰っていたのでそれらを机に出してみた。
それを読み進める内に、この領を治めるのに調度良い者が居ないと言った国王の言葉を思い出す。
これは……確かに誰もが嫌がりそうだな。
王都に比較的近い上に、広大な土地。
これだけ見ると誰もが飛びつきそうな好条件なのだが、その内容が酷い。その土地の殆どを占めるのが隣国との国境にもなっているモーラ山脈で、かなり標高が高いので商人等もそれを超えるのは容易ではなく、販路が確保できない。
王都へは比較的簡単に行けるものの、その土地の殆どは急傾斜で畑や田んぼも作りにくく、工芸品的な物もないらしい。おまけに標高が高くなると植物もまともに育たないので完全に不毛の土地だ。
何より問題なのはそこに住む人達だ。
厳しい土地柄なのか大所帯で生活する者達はあまりおらず、少数民族の集合体の様な感じになっている。
それぞれに風習も異なり、争いの原因にもなっている様だ。
「……う〜む、これは問題があり過ぎるだろ。マトゥン子爵はよくこれを纏めていたものだな」
殆ど屋敷に帰って来れないのも頷ける。
「あの狸親父め何がお詫びだ、完全に面倒事を押し付けたかっただけじゃねーか…」
子供にこんな厄介なもの押し付けるなよな。
あの国王は人材を送ると言っていたが、それもどこまで本当なのか…
俺、学園に通う暇あんのかなぁ…
何か早速不安になってきたぞ。
コンコン
「ルーベンス様朝食の用意が出来ましたが、如何しましょうか?」
セバスがいつもの様に声を掛けてくる。いつの間にかそんな時間になっていた様だ。
「ああ、貰おうかな。それから、一つ用意して欲しい物があるんだが……」
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「ルーベンス様。それは何を作ってるんです?」
朝食後、セバスに用意して貰った物である物を作っていたらサーニャが興味深げに覗き込んでくる。
「うん?…ああ、これか。これは木刀だよ」
「木刀?木剣なら既製品があるんじゃないですか。なんでわざわざ作ってるんですか?」
サーニャが不思議そうに問う。
「俺が欲しいのはよくある木剣じゃなくて刀を模したものなんだ。木刀と言うらしい。それに、自分で作った方が愛着も湧くだろう?」
「ふ〜ん、そうゆうもの何ですかねー」
「そういうサーニャの武器は何を使ってるんだ?」
ふと、気になり聞いてみた。
「私のですか〜?まあ、全部は言えませんけど…よく使うのは短剣と毒ですかねー」
「成る程、体格的にもそれが合ってるんだろうな」
「……………」
ふむふむ、と俺が納得した様に頷いているとサーニャが少し驚いた顔をしていた。
「どうかしたのか?」
とそう問い掛けると、サーニャは若干気まずそうに答える。
「ルーベンス様はついこの間その毒で殺されかけたのに恐がらないんですねー」
「う〜む…恐がる位なら最初から暗殺者なんか侍女にしないからなぁ」
俺の呑気な答えに、サーニャは妙に納得出来たのか、ああ…と頷いた。
「まー確かにそうですよねー」
物騒な話を呑気に話していると、後ろから声が掛けられる。
「貴方方は一体何の会話をしてるんですか」
溜息交じりの声に二人で振り返ると、こめかみに手を当てて呆れ顔をしているセバスが立っていた。
「あ、セバス」
「あー…執事長」
「サーニャ、貴女には確か仕事を頼んでおいた筈ですが?」
「はい!そうでした!………ではルーベンス様失礼します」
「ああ、頑張れよ」
慌てて走り去っていくサーニャを見送りながら、セバスを見る。
「何か用だったか?」
「学園長からルーベンス様に手紙が届いておりましたので、後で確認して頂ければと思いまして」
「分かった。後で確認しておこう」
「宜しく御願い致します」
結局この日は木刀作りだけで一日を費やしてしまった。
明後日には再び学園生活が始まる。
未知と懐かしさの入り混じる感覚に心を躍らせながら、その日の夜も過ぎていった。
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