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 俺は今何を聞いたんだっけ?



 えー……っと、



 マトゥン子爵領を?



 引き継ぐ?



 何言ってんだ国王このひと



「……その…お言葉ですが国王様。私は今は謹慎中ですが、れっきとした学生です。確か未成年には爵位は引き継げない筈では?」


 だから、無理だよね?


「うん、まあ当然の疑問だよねー。けど今回の場合、他に丁度いい候補者がいなくてねぇ」


「そうだったとしても、私よりはもっとマシな候補者は沢山居ると思いますが…」


「んーいやそれがそうでもないんだよねー」


「はあ」


 つい気の無い返事になってしまう。


「いや、関係なさそうな顔をしてるけど、君が原因だからね?」


「?」


「根本にレウが関係していたとはいえ、子爵が君に毒を盛り殺そうとしたのは事実だ。君が死なずに済んだからといってこの事実がなくなる訳ではないからね。それに君は除籍はされたが公爵家の実子、今は伯爵の養子という立場だ、それらに対しても何の落とし前も付けずにいられる筈がないのは君が一番わかってるよね?」


「しかし…学園生活の片手間に出来る程、領地経営は簡単な事ではないでしょう」


 やりたくないなぁ、面倒くさいし。


「ああ、その辺りは安心していいよーそうゆうの得意な人送るから」


 じわじわと包囲網を固められてる気がする。知らず自身の背中に冷たい汗が流れていく。


 確か『陛下』もこういうの得意だったよなぁ…真綿で包む様に追い込んで、結果相手に『否』と言えなくさせるの。


 ……流石は親子、立派な狸に成長した様で。


 という事は、抵抗しても無駄だろう。しかし、一つだけ言っておきたい。


「………これは、『お詫び』なんですよね?」


「勿論。それ以外・・の何があるのかなぁ?」


 にっこりと綺麗な笑顔で微笑まれ、俺の顔が引き攣ったのが分かる。……訂正、これは狸なんて可愛いもんじゃないな。


「…………謹んでお受けいたします」


「君は今後テックを名乗ると良い。だから、君の今後の正式な名はルーベンス・ネヴィル・テックという事になるね。まあ普段はネヴィルの名を使う事はないだろうけど、まあ気軽に頑張ってみてよ。テック子爵」


「は、…有難きお言葉感謝致します国王様」


 これ、完全に厄介事押し付けられたよな……


「あ、そうそう。『レウ』の件は公表出来ないから、突然領主が変わって領民がちょっと反発するかもしれないけど、君なら大丈夫だよね?」



 ………………。


 今、言うか、コノヤロウッ………それ、絶対ワザとだよな?


「…ご期待に添える様尽力致します」


「うんうん、お願いね。よし!堅苦しいの終わり!ねえトーマス僕にも何か食べるもの用意してよ」


 国王は堅苦しい雰囲気を、ポンッと手を叩いて霧散させ伯爵に食事を強請る。


 伯爵もその流れを予想してたらしく、「食うのかよ」とボヤきつつも使用人に追加の食事を頼んでいた。

 その手慣れた様子から国王が此処を訪れるのも今日が初めてではないのだろう。今思えば馬車ごと玄関前まで乗り入れられる仕様になっているのも、この為だったのかもしれない。

 国王と伯爵の一見変わった友人関係も、今に始まった訳ではないという事だろう。お互いの雰囲気からその付き合いの長さを感じ取る事が出来た。


「そういえば…」


 運ばれて来た料理に舌鼓を打ちつつ国王が俺に話しかけてくる。


「息子がすまなかったね。アレは『レウ』の事は知らないから、噂に踊らされてしまったみたいだ」


 息子?…息子…………ああ!あの最初に俺を断罪した第二皇子の事か!


「君は息子の親衛隊隊長も務めてくれていたのに、ほんと我が息子ながら情けない事だよ…」


「いえ、私ももっと信頼関係を築く様に努力しなければなりませんでした。………ところで、私は……親衛隊の方はどうなったのでしょうか…?」


 そこんとこの確認は大事だよな。


「……………本当に君には申し訳ないと思っているよ…」


 あ、やっぱり解任されてたのか。


「いえ、国王様の所為では御座いません。また新たに関係を築いていけば良いのですから、何も問題ありません」


「そう言って貰えると有り難い。これからも息子の事をよろしく頼むよ」


「はい、勿論です国王様」




『陛下』の孫に何かあったらいけないからな。しっかりと見守る事にしよう。










ト「なんだかんだでお前もアイツの事気に入ってるよな」

陛「ん〜そうだねぇ、面白そうな子ではあるよね」

ト「アイツは『冒険者』になりたいんだとよ」

陛「(クスクス)…僕はねぇ天邪鬼なんだよ」

ト「ああ、知ってる」

陛「欲しいって人にはあげたく無いけど、ああも全力で要らないって態度取られると…逆に押し付けたくなるんだよね〜」

ト「……はぁ…アイツも可哀想に。こんな面倒くせえ奴に気に入られてよ」

陛「それは嫉妬かい?安心してよ、君が僕の一番のお気に入りだよ」

ト「それのどこに安心しろと?!寧ろ全くもって安心できる要素がないんだが!?」

陛「……僕に取り入りたい人間は山程いるのにねぇ…君は相変わらず変わり者だ」

ト「はっ…別にお前が国王だから友達な訳じゃねーからな。寧ろ面倒くせえから早く辞めろよ」

陛「……………君って」

ト「あ?」

陛「馬鹿だよねぇ」

ト「はぁ!?んだとコラァ!!何をもってその結論になるんだよ!?」

陛「さぁ?何でだろうね?(…ちょっと感動したのは、悔しいから内緒)」




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