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『お前には心底失望した。…いや、最初からお前に何も期待などしていなかったが…今度の事ではっきりと分かった。お前は私にとって有害でしか無い』




 陛下!お待ちください!理由をッ…理由をお聞かせ下さい!




『そんなもの、自分の胸に聞いてみるがいい』




 そんな……何故ッ




『私がお前を許す事はない。二度と私の前に姿を現わすな』











「へいか!」


 俺は自分の叫び声で目を覚ました。


 いつの間にか俺はベッドに移されていたらしい。


 額の上のひんやりとしたモノは、濡らした布だろうか…今の火照った体にはなんとも心地良い。


「目が、覚めましたか?」


「セバス…」


 一人だと思っていたがベッドの傍らにはセバスが座って、こちらを心配そうに見つめている。


「熱が大分高くなっております。水は飲めそうですか?」


「……ああ、問題ない」


「……………」


 セバスはそれきり黙ってしまったので、俺も黙々と水を飲む事に集中した。


「……………」


 ごくごく…


「……………」


 ごくごく……


「貴方は……」


 お、喋った。


「…………?何だ?」


 ごくごく……


「何故本当の事を話さないのですか?」


 ブッー……!!


「な、何をだ?」


 何に気付かれたんだ!?


「本当は、貴方がお嬢様を襲わせた訳では無いのでしょう…?」


 なんだ…良かった!毒の事ばれたのかと思った…………………………………って、え!?今何て言った?


「何故そんなに驚いているのですか?わたくしはそんなに人を見る目が無い訳ではありませんよ。貴方が噂通りの方では無い事は、以前から気づいておりました」


「いや……」


 それは………まあ………別人だしな。


「その事に気付いてから私は貴方の噂を色々とを調べ直しました。すると驚くべき事に噂の半分以上は貴方とは無関係だという事が分かりました」


 何!マジか!?


「けど、それだと約半分は俺がやったって事なんだろう?だったら俺がその『お嬢様』の件に関わってないと言い切るには弱いんじゃないのか?」


「いえ残りの噂は、ほぼ出処自体不明なモノばかりでした」



 出処不明……



 俺はその言葉にスゥ…と目を細め、微かに笑った。



 セバスは突然変わった雰囲気に、思わず息を止める。



「出処不明……セバスは貴族の間でのソレの示すものが何か知っているか?」


「い、いえ……」


「だったら、それ以上関わらない方がいい、消されるぞ」


 元の雰囲気に戻りそう言うと、セバスはホッとした様に力を抜く。


「……わたくしでは力不足という事ですね」


 セバスが少し悔しそうな事に、俺は少なからず驚いた。



 もしかして俺、意外と好かれてるのか……?



 そう思いつつ、これ以上関わら無い様に忠告しておく。



「ああ。無駄に死ぬ事は無い」



 セバスは一瞬何かを言いかけ………飲み込んだ。




 そして、深く息を吐いてから、例の『お嬢様』の事件について話し始めた……







 _________________________________







 俺は今、非常に困惑している。


 俺の手にはゼリーの様なものが入った籠。


 ちなみにこれはどうしたのかというと、つい先程俺の部屋をノックする音が聞こえたので、ドアを開けてみるとそこには誰もおらず、コレが残されていたのだ。


 む。多分…毒ではなさそうだが……


 籠の中にはメッセージカードで『良かったらデザートとしてお食べ下さいませ:使用人一同』と書かれている。

(子爵は除外するとして)正直セバス以外の人間に殆ど会った事も話した事もない。

 これをこのまま信じるには相手を知らなさ過ぎる。


「う〜む…」


 捨てるのは勿体ないしなぁ…


 となると結果堂々巡りで、また唸る事になってしまう。


「ルーベンス様、どうかされましたか…?」


「む、いやノックと共にこれが置かれていてだな。置いた者の姿は見ていないのだが…」


「…ああ、これは先程皆が作っていたゼリーですね。ふふ、ご安心下さい、これには毒など入っておりませんよ?」


 セバスの少しタイムリー過ぎる冗談に思わず顔が引きつる。


 本当に毒の事バレてないよな……?いや、セバスの事だからもしかして…


「ルーベンス様?」


「ハイ!」


「……ルーベンス様?」


 うわ、何かヤバイ何かヤバイ。


「何か、私に言う事はありますか……?」


「いや?特には何もないな」


 何にもないから!ほんとは色々あるけど、何もないから!


「…………………。はぁ…、分かりました。けれど身体に無理が掛かるような事は厳禁ですよ?」


 俺が絶対に口を割らないと察したのだろう。溜息と共に引いてくれた。


「ああ、大丈夫だ」


「………。はぁ…貴方の大丈夫程、信用ならないものはありませんね。次守れなかったら、お仕置きですよ?」


「(ええぇぇ…そんな…それはちょっと)…ああ。分かった」











「…ところでこのゼリーは今から食べられますか?」


「……そうだな、頂こうか」








さて、そろそろ味方が増えてきます。


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