15
まだシリアス回です
あれから10日程経過したが、子爵は中々忙しい人物らしく5日の内、2日位は視察やらで帰って来ない。
しかし、帰ってきた日は必ず夕食を共にする事になっている(毎回毒入りだが)。
毎日ではないにしろ毒を飲み続けている俺は、徐々に毒の抜けが悪くなっているのを感じていた。
もしかしたら、毒の量も増やされているのかもしれない。俺の顔が苦しげに歪む度、子爵の瞳の奥が暗い悦びに満ちるのが分かる。
初めの内は上手く隠しきれていたが、最近では熱を出す事も増えて子爵には唯のやせ我慢だという事がバレてしまった。
セバスは俺が元々虚弱なのを把握している為、少し疑問に思いつつもまだ気付かれていない。
……………まあ、この分だとその内にバレてしまいそうなのだが。
食欲も落ちてきているのだが、食べた夕食を全部戻す分、朝と昼を少し多めに食べているので寧ろ食欲が増えたと思われている様だ。
「…どうかしたのかね?先程から随分汗をかいている様だが」
薄く微笑みながら子爵が言う。
……まったく、楽しそうで何よりだ。
「若いので代謝が良いのでしょう」
「……………」
子爵は最初こそ毒が効いていないのかと苛立ちを露わにしていたが、ちゃんと効いていた事が分かると満足した様だった。
しかし…それも数日経つと、今度は何故毒だと分かっていて毎回拒否もせずに食べるのかが疑問になった様だ。
「………君のソレは…贖罪のつもりか」
「何の事でしょう……?」
とりあえず、ソレが何かを知らないので素直に答えておく。
しかし、子爵は俺が敢えて濁したのだと思った様だ。実際は本当に知らないのでそう言っただけなのだが。
子爵の誤解はそのまま加速していく。
「君が…私の娘をッ……取り巻き達を使って慰み者にしたのは知っているッ」
思わず俺の眉が不快気に歪む。
『コイツ』そんな事しやがったのか……………マジで最低だな。
「……………」
「何か言ったらどうなんだ!」
ガシャンッ……
何も答えない俺に、子爵が興奮して拳をテーブルに叩きつけた。
その拍子に食器が大きく跳ねテーブルを汚してしまう。そしてグラスも落ちて割れてしまい、更に大きな音を立てた。
「旦那様!何か御座いましたか!?」
いつも、俺との食事の時は給仕をする時以外全員部屋の外で待機する様命令されている為、この時も側には誰もいなかった。
音に驚いた召使い達が慌てて部屋の中に入り、部屋の惨状に再び驚愕する。
「旦那様!一体何があったのですか!?」
しかし子爵は、急いで駆け寄ろうとする召使い達に目もくれず俺を睨み続けていた。
「君の所為で、決まりかけていた縁談は破談になり、噂が広がってしまった為に学園にも居られなくなった娘は、下男に払い下げる様にして貰われていったのだ。娘はごめんなさい、と泣いていたよ。…………君にその時の私の気持ちが分かるか!?」
いつの間にか俺の側に詰め寄った子爵は俺の胸ぐらを掴み無理やり立たせる。
毒が回りまともに動けない俺はされるがままだった。そしてその勢いのまま前後に揺さぶられ一気に意識が遠のく。
そうして俺は、そのまま朦朧とした意識の隅に召使いの悲鳴を聞きながら意識を手放した。
もう少ししたら色々事態が好転しますので、皆さんここは耐えて下さいませ。