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 ふむ、夕食まではまだまだたっぷりと時間があるし、今日は何をしようかな。


「本…は、とりあえず今日はもういいかな」


 これは決して逃げではない。

 戦略的撤退というやつだ。この事案はしっかりと態勢を整えてから進まないと、危うく命の危機に陥りそうだ。(主に精神の)


 こういう時は鍛練するのが一番だよな。


 といっても前回の事があるから、今日は柔軟体操位にしておいた方が無難だな。








 _______________________…






「ルーベンス様」


 只管柔軟体操に没頭していたら、いつの間に部屋に入ってきたのかセバスに声を掛けられる。


「ん?何か用か?」


「いえ、そうではなく……ルーベンス様はいつからこれをなさっていたのですか?」


「む?朝食後からだが?」


「もうお昼ですが」


「ああ、だからか。少しお腹が空いてきた様な気がしていたんだ」


 俺の言葉に、セバスの眉がピクリと上がる。


「そういう事ではありません。あれから何刻過ぎたとお思いですか?…何事もやり過ぎは良くないと申し上げた筈ですよ」


「いや…しかし、これは別に身体の負担になる訳ではないし…」


 此方の分が悪いは分かっているので、ぽりぽりと頬を掻きつつ視線を逸らす。


「ほう…では何故その様に顔色が悪くなっているのでしょうか?」


「いや、それはセバスが恐い所為じゃ…」


 思わずそう言い掛けて、あ。これダメな『言い訳』だ、と思って止めたが遅かった様だ。セバスの顔が恐い。


「ほうほう…わたくしが悪いと…?」


「いや!そういう訳ではないのだが…」


 (でもたかが柔軟だし……うっ…ナンデモないデス)


「では何が悪いとお思いですか?」


「……………俺だ。すまない」


 謝ってはいるが俺の若干の不満を感じ取ったのだろう、セバスは軽く息を吐くと静かな声でこう続けた。


「………身体を動かす事が悪いと言っている訳ではないのです。この数日側で見させて貰っただけでも、ルーベンス様のお身体が丈夫でない事は分かります。無理をして寝込んでしまう事の方が結局は無駄な時間を過ごす事になると思いませんか?」


「…………………すまない。楽しくてついやり過ぎた様だ。…これからはなるべく気をつける」


 俺は今度こそ、心の底から謝罪した。それがセバスにも伝わったのだろう、漸く肩の力を抜き謝ってきた。


「分かって頂ければ良いのです。差し出がましい事を申しました」


「いや、言ってくれて助かった。昔から俺は考えずに行動して良く怒られていた。今度の事もセバスが怒ってくれなかったら同じ事を繰り返していたかもしれない」


「怒られる、とはご当主様がですか?…あの方が子供の教育にそれ程熱血だったとは…いやはや意外で御座いますな」


「あ。…(やべ)いや、父様ではないんだ、その…友人で」


「それは…良い友人を持ちましたね」


「…ああ、彼に見合う様に努力しなければと思っている」


「けれど、やり過ぎはいけません」


「…分かっている。案外しつこいなセバス」


「ふふ…年寄りは得てしてしつこいものです」



 こうして、少し打ち解ける事ができた二人の笑い声は、昼食はどうするのか聞きに来た召使がドアをノックするまで、朗らかに部屋に木霊したのであった。








 セバスがデレたーセバスがデレたー!

 怒ってからのデレ。これぞ、おこデレ!

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