異世界人はトラブルと一緒にやって来た
街道に出た。出たは良いが、さぁどっちに行こうか。枝でも倒すか?ダウジング?ん~どうするか。
これで運が良くないと変な町についても仕方ない。
まだレベルが低いから変なことに巻き込まれるのはごめんだ。レベルが上がって守るものも守れるだけの力があれば巻き込まれるのもやぶさかではない。だけど今はその時じゃない。
ん?なんだ?
マップに黄色の反応がでる。移動速度がやけに速い。徒歩では無さそうだし街道沿いにこちらに向かってくる。
マップはどうやら黄色は中立、赤は敵を表しているみたいだ。仲間はまだ人に会っていないのでわからない。
とりあえずマップで【鑑定】【解析】スキルを使用して確認する。
名前:リズミット・アストン
種族:人族
性別:女
年齢:18
レベル:10
HP:678
MP:418
力 :57
守備:69
俊敏:85
器用:70
スキル
【火魔法:Lv5】【火魔法耐性:Lv4】【風魔法:Lv2】【風魔法耐性:Lv2】【詠唱:Lv2】【剣術:Lv2】【馬術:Lv2】【舞踏Lv2】【礼儀作法】
女の子か。ステータスの割合が魔法特化って感じだな。レベルの割にはMPの数値が高いし、火魔法と風魔法の使い手か。
やっぱり魔法はあるんだな。火魔法のレベルが高いからメイン魔法は火か。攻撃特化ってイメージだな。
それにしても火魔法のレベルが5とは凄い。スキルの最大レベルが10なのにもう半分のレベルになっている。天才か。
ステータスの中でも魔力値が高い。ほぼ最大値で上昇してるし、他のステータスも伸びが良い。
リズミットの後ろから5人やって来て同じ様な速度で走ってるのをマップが感知する。全員男でレベルは6~7追われてるのか、何か用事かわからないけど厄介事の臭いがプンプンする。
隠れようと思ったが街道沿いは周りを見やすいようにするためか障害物がない。
とりあえず街道からそれて歩くか。
5分後、馬に乗ったリズミットと男達が徐々に見えてくるが砂ぼこりが断つほど駆けているためかよく見えない。
目を凝らして確認する。リズミットが赤い髪をしているのは確認できる。
スキル【遠目:Lv1】を習得しましたと出てくる。スキルをONにしてもう一度目を凝らすと先程よりもよく見える。だが、レベルが低いせいで顔までははっきり見えない。
スキル習得は速いし、スキルレベルが上がるのも他の人より速いのだろうが、習得した分レベルが低いのにやきもきするな。
目を凝らしているとスキル【遠目】がレベル2に上がりましたと出てくる。
リズミットとの距離も縮まってさらにスキルレベルが上がったお陰で顔がはっきり見える。かなりの美人だ。だけどなにやら焦った顔をしてるせいで美人が台無しだな。
「あなた退いて逃げなさい!!」
「おら小僧どけごら!!」
リズミットの後ろから男がリズミットの馬に向かって槍を投げる。槍が馬の足に絡んで転倒する。
リズミットは前方に投げ出されるが上手く受け身をとり、そのまま立ち上がって俺の前まで来た。
ずいぶん器用な子だな。
「何で逃げないの!!」
リズミットは俺を庇うように立ったので俺を守ろうとしているようだ。
「あいつらは何者です?」
自然と話していたけどリズミットと同じ言語を話せている。
流石転生補正?それともスキル【異世界難易度『easy』】のお陰か?
「あいつらはここら辺を荒らしてる盗賊団よ。レベルが高くて軍も中々手が出せないの」
へ~6、7レベルでレベルが高いって言われるのか。なら今本気でやったら化け物じみてるのか?手加減が必要かぁ。簡単に手加減が出来るスキルでもあれば楽なのにな。
「観念しなリズミット・アストン。ここでお前は終わりだ」
「ヒャヒャヒャ。その身体犯し尽くしてヒィヒィ言わせてやらぁ」
リーダーらしき男はまだ良いが、他の男どもは俗悪な目をしている。この後の事を考えているのか全員下半身を膨らませている。
飢え過ぎだし気持ち悪い。
リズミットは赤よりも紅と言って良い綺麗な赤い髪をしている。背は160位でスタイルも良い。グラビアモデルみたいなスタイルだ。鉄の胸当てをしていてもしっかり主張している。
リズミットの装備は細身の両刃の剣と鉄の胸当てと革の籠手と脛当てを付けている。
男達は全員手に槍と鉈の様な物を腰に指している。防具はリズミットと同じ様な感じだが、ボロボロで手入れされてなさそうなので一突きで破れてしまいそうだ。リーダーと思わしき男だけは防具も手入れされている。
槍と剣じゃ間合いが違うのでやりにくいし、余程の技量の差がないと勝てないが、レベル差と魔法でリズミットでも殲滅出来そうなものだけど。やってないってことは理由があるか。
男達を【鑑定】すると後ろに立つ二人が【水魔法】のスキル持ちだった。魔法を使ったことがなくてもリズミットの【火魔法】じゃ【水魔法】に相性が悪い【風魔法】じゃレベルが低い。
リーダーの男も【火魔法】のスキルを持ってるし、【槍術】に【体術】スキルを持ってる。レベルが3、4しか変わらない男達相手じゃ魔法の相性が重要だろうし、リズミットのステータスはどちらかといったら魔法に特化してるから集団相手の接近戦じゃ分が悪いか。
「共闘しましょう。ここで死ぬなんてまっぴらごめんだ」
「貴方・・・良いわ。こうなったらやってやりましょう」
共闘が決まる。リズミットの判断が早くて助かる。リズミットは直ぐに剣を抜いて構える。
男達は相変わらずこっちを見下している。人数差があるから仕方ないが、レベル差を思い知らせてやろう。
さぁ初の対人戦だ。ここまでのレベル差があれば生殺与奪はこっちの自由だろう。
人数の多い男達は余裕の表情をしている。リズミットの名前を知っている程だしある程度のレベルやスキルは把握済みだろう。
それに俺はろくな防具も着けてないただの胴着姿だ。着崩れると直ぐに胸元が見えるから早く町で服を調達したい。
それに武器は刀だけ。槍と比べれば間合いが違う。
まぁ神成流剣術は多種多様な武器相手に技を磨いてきた殺人剣術だけあって槍も特に苦手ではない。それに相手をする前にまずは武器を知れって家訓もあるせいか様々な武器も教え込まれてる。
「お前らやっちまえ」
思案してるうちにリーダーっぽい男の合図で二人の男が攻めてくる。一番後ろにいる男は魔法の発動をしようとしているのか直径1メートルの青い魔方陣が足元に浮かび、聞いたことが無い言語で詠唱をしている。
「来るわよ!右の男は頼んだわよ!後ろの男は水魔法を発動使用としてるから気を付けて!」
矢継ぎ早に話すと剣を抜き男と対峙している。
「おら小僧!お前から先に殺ってやるから覚悟しろ!」
「そんな趣味はないので先に倒されてください」
男が突き出す槍を抜刀した刀で絡めとり上に跳ね上げる。
玄人なら槍を回して反撃してきそうだが、雑魚は雑魚だ。回す筋力もなさそうで槍を離さないようにしてるので精一杯に見える。
間合いを詰めて刀の峰で腹部を殴打。
ちょっとしか力を入れなかったのに5メートルは後方に吹き飛んでった。
うん、もっと手加減しよう。
「この!ザバに何しやがる。■■■■■【水弾】」
後ろの男が詠唱を完成させたのか水の弾を打ち出してくる。そこそこの早さだがよけれない程じゃない。
威力も知りたいので刀を水弾に振り下ろす。
結果は簡単に斬れた。だけど全身水浸しだ。
斬った感触は圧縮された水の塊だ。当たったらかなり強めに殴られた位の痛さかな?斬るのも初めは抵抗はあったが刃が通った所ろからあまり抵抗を感じなくなった。
【水魔法耐性:Lv1】【水魔法:Lv1】【魔断:Lv1】スキルを習得しましたと出ている。とりあえず全部ONにしておく。
「糞が!!連携して奴を倒せ!!魔法は撃ちまくれ!」
リーダーと思わしき男が怒鳴り散らす。
リーダー抜かして後3人か。ま、なんとかなるか。リーダーも単体ならレベル的にはリズミットの敵でもないしな。
「そうわさせないわ!【炎剣】」
お、詠唱しないで剣に炎が現れたぞ!!やっぱ異世界スゲェな!
「あれと剣を交えるなよ!!」
リーダーが声を荒げるが一歩遅く、リズミットは相手の槍と刃を合わせる。刃を合わせた瞬間敵の槍はドロッと溶けて刃が無くなる。
その後も数合刃を交えているうちに槍が半分以下まで溶かされてしまう。
刃を交えている際に【水弾】がリズミットに向かって飛んで行くが全て斬り落とした。
例によってさっきよりも水浸しだ。お日様が出てる日中で良かった。夜なら風邪引いちゃうよこれ。
「この餓鬼共が調子に乗りやがって」
お、怒り心頭だなおっさん。
「観念しなおっーー」
「逃げるぞお前らーー!!!」
えー。今俺決めるとこー。
おっさん達は踵を返してそそくさと逃亡を開始する。
な、なんて手際の良さ。強さより逃げ足で捕まえれないのか?
リズミットも呆気にとられたのか呆然としている。