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放課後の幻燈と心の歌(1)

 ある日の午後、二人で部室を開けて自習をしていた時のこと。

 はるかが回転椅子で二回転半してからぼやいた。


「最終回を迎えたい」

「はっや。その心は?」

「退屈」

「いやいや、部員募集中にして一日しか経ってないし、そう簡単に新入部員も新キャラも増えないでしょーが」

「でぇーもぉー」


 はるかはぼやいて、何故か部室内に敷いてある畳の上をしばらくゴロゴロしたあと、ガバッと起き上がって言う。


「そうだ! つばさくんとバトればよいのでは!??」

「ことわる」

「なんでー」

「俺の専門、癒術いじゅつなんだけど」


 癒術いじゅつとは、魔術の一種で、魔力を使って傷や痛みを癒すこと。ゲーム的に言うと「白魔術」「ヒーラー」みたいなものだ。

 つまり、初歩的な魔術は一通り使えるが、それ以外はからっきし。はるか相手なら、――言葉は悪いが――たぶん殴った方が早い。


「進路分岐はまだ先でしょー、我が弟子よ」

「俺は戦闘要員ではありませんヨ、お師匠」

「そも、魔術も戦闘向きの能力じゃないけどねー」


 魔術の原則その一(再掲)。魔術は人を傷つけるのには使えない。


「や、お前の使う幻術はかなり例外だろ」

「そう! おかげで最近全然披露する機会ないからつーまーんーなーいーー!」

「俺相手なら使うんかいっ」

「臨死系は使わないから! お願いー」


 臨死……今にも死にそうな幻覚を見せる……頭を撃ち抜かれるとか、血がいっぱい出るとか、そういうの……。いくら使わないと言われても。逆に言うとそれ以外はやるということで。

 俺はしばらく考えてしぶしぶ応える。


「……一回だけだぞ」

「やた」

復元装置セーブクリスタル借りられないんだから、ガチでダメージ残るやつはやめてね」


 復元装置セーブクリスタルというのは、決闘や危険な戦闘任務の時に使われる安全装置のことだ。魔術的に加工された水晶で、一時的に個人の肉体と精神の状態を保存することができる。万一の重傷を負った際に、水晶に保存された情報を癒術を使って肉体に戻すことで、一瞬で治療が完了する。

 ちなみに、先日の決闘でも使われていたが、話をするテンポの関係で書いていなかった。でもって、高級品なので簡単には借りられない。


「おっけー」


 俺の提案をはるかは軽く引き受けて、空き教室を探しに部室を出ようとする。

 彼女はドアを開けて、廊下に出る直前に、思い出したようにこちらへ振り返り、サディスティックな声でこう言った。


「あ、でも自分の道具は持ってきてねー。今回ガチンコ勝負だから」

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