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友達四人で肝試し

ホラーは初めてです。とりあえず書いたという感じなので、あまり期待せずにお読みください。章の分け方が不自然な気もしますが、気にせず読んでいただけたらと思います。夏のホラー2017参加作品です。

断ればよかったんだ。こんなとこ、来るんじゃなかった。僕の人生はいつだって後悔ばっかりだよ。


僕は今、遊園地にいる。廃園になった遊園地、裏野ドリームランドなんていう、なんというかありがちな名前の遊園地。そんなところに一体何の用があったのかと言われれば、肝試しに来たとしか言いようがない。この遊園地は廃園になる前から何かと妙な噂が囁かれていたらしいんだ。もちろん僕はそんな噂は知らないよ。でも、僕の友達はそういうわけでもなかったようなんだ。


言い出したのはアキラだった。放課後にいきなり、週末に裏野ドリームランドに行こう、なんて言われても、僕はさっぱりだったけど、仲良しグループのシュウヤとカズヒロは一瞬で乗り気になってしまった。僕はめんどくさいな、と思いながらも、半ば押し切られる形で三人に同行することになってしまったんだ。


それで、いざ到着して、何を見て回るのかといえば、それすら決めていないって言いだした。アキラのいい加減さには毎回呆れるばかりだよ。


でも、ここまではいい。こんなこと、アキラと一緒にいればよくあることだから。こういう時はいつもカズヒロが計画を立ててくれる。だけど、その計画というのが珍しくテキトーだった。僕の今の不幸はその計画性の無さからきたと言っても過言じゃない。


カズヒロは、バラバラに散って各自が自由行動で園内を見て回ろうと言い出したんだ。それじゃあ肝試しに集団で来た意味が無いじゃないかって、僕はそう言ったけど、この意見は通らなかった。仕方なく、四人でバラバラになって自由に見て回ることになった。幸いなことにみんな時計は持って来ていたから、集合場所と集合時間だけ決めてね。


それで、途中でばったり会っちゃうとつまらない、ってことで、それぞれがどこに行くかっていうのを決めることになった。


アキラはジェットコースターやらフリーフォールといった、いわゆる絶叫マシンがあるエリアに行くと言った。シュウヤは人がたくさん集まっていただろう売店の辺り。カズヒロは怖い方がいいと言ってお化け屋敷に行くことになった。僕はあまり怖いものは見たくなかったから、コーヒーカップとか観覧車とかそんな感じの、カップルとか子供が喜びそうなエリアに行くことにした。


というわけで、僕は一人で園内を散策した。やっぱり一人だと怖かったよ。懐中電灯も一応持って来ていたけど、少し古いやつで、明かりが弱くてね。暗闇に飲み込まれているみたいで、真っ暗なことに違いはなかった。こんなことならもっと新しいやつを持って来れば良かったよ。


人気のない遊園地は怖い。本来なら人が集まってワイワイ騒いでいるはずの場所だから、違和感を感じて仕方がないんだ。歩き回るのも疲れるし、その辺のベンチで時間になるまで待っていようかと思った。


そんな時だった。僕は光を見つけたんだ。初めはとても驚いたけど、よく見てみればそれはメリーゴーランドだったよ。なんで明かりが灯っているのかは、僕には分からなかったけど。


遠くからでも分かる。メリーゴーランドには誰もいないはずなのに、オレンジ色の温かい色の電気がチカチカと瞬きながら、ゆっくりと回っていたんだ。それは少しだけ不気味だったけど、それでもすごく綺麗だったよ。


その明かりを見て、僕はなんだか安心した。その光が明るい色をしていたからかもしれないし、僕自身が暗闇にうんざりしていたからかもしれない。とにかく僕は、その近くに行こうと決めた。


いくつかあるアトラクションの脇を通り抜けて、僕はまっすぐメリーゴーランドに向かった。その途中で、僕はメリーゴーランドという遊具の名前について考えてみた。


メリーゴーランド。メリー、ゴー、ランドかな。メリーがランドに行く。メリーが大陸へ行くってこと?でも、ランドには確か遊園地や娯楽施設という意味もあったはずだから、メリーが遊園地へ行く、という意味合いかもね。メリーゴーランドはそもそも遊園地にある遊具だから、たんだかか意味がダブっているような気がしないわけでもないんだけど…なんだか不思議なネーミングだよね。


それで、気がつけば僕はメリーゴーランドのすぐそばまで来ていて、ゆっくりと回るそれに見入っていたんだ。題名は分からないけど、眠たくなるようなテンポの遅い曲が流れていたのをよく覚えてるよ。回るのに合わせて馬が少しずつ上下に動くのもね。もしかして、昔メリーという子が馬に乗って遊園地に来たことがあったのかもね。馬で遊園地に来るなんて、一体いつの時代の話だよ、っていう感じがするけど。


しばらくその動きを見ていると、馬が不意に止まった。そしたら、ちょうど僕の正面にあった馬の上に、誰かが乗っていたのが分かったんだ。てっきり誰もいないと思っていたのにね。きっと回っていたから気づけなかったんだろうけど。


その子は僕とほぼ同年代に見えた。僕と同じ高校生くらいの子だったから、メリーゴーランドに乗っている姿はなんだか笑えたよ。どこかの物語にありそうな、体は成長しても心は子供のまま、っていうのを演じているように見えたんだ。


その子はメリーゴーランドに乗ったまま、僕に向かって微笑んだ。そして、何も言わずに、隣の馬の頭をポンポンと叩いてみせた。そこに乗ってほしいという意味だってことはすぐに分かったよ。だから僕はメリーゴーランドにもっと近づいて、その馬にまたがった。不思議に思うかな?僕はこの時、別に何の恐怖も感じていなかったんだ。


君、何でこんなところに来たの?


彼は僕にそう尋ねたよ。そしたら、メリーゴーランドがゆっくりと回りだした。あの眠たくなるような曲もまた流れ始めた。

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