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孤独なセカイ  作者: 絢乃 ツキウサ
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[第4話]エルフ族の集落

人間に魔物扱いされ、逃げるように森へ逃げたラーミアはそこでロネリィというエルフ族の少女に出逢う。

ロネリィは意外にもラーミアに興味を持ったようで、エルフ族の集落に案内するが‥‥。

木々が生い茂りつつも、葉と葉の間から眩しい木漏れ日が降り注ぐ森の中をエルフの少女がふわふわと、竜の少女がいそいそと進む。


「では、まずそのどこからどう見ても怪しい姿のことから聞きましょうか。」


その道中、エルフの少女ロネリィが口を開いた。


竜族の少女ラーミアは、近くの樹木に付いていたかなり大きめの葉をタオル代わりに体に巻いていた。


この森は大森林というだけあって、樹木一本一本が相当高い。

それに比例するように、葉の大きさもかなり大きいようだ。

心なしか虫も標準の大きさをかなり上回っているように見える‥‥。


ラーミアも以前はこの森の洞窟を寝床とし、生活していたが、場所によっては樹木の種類も違うのだろうか。ここまで大きな木々は見たことがない。


ラーミアは大きな虫にびくびくしながら答えようとした。


「う、うん‥‥それがね‥‥。」


と、ここから先を言おうとしてラーミアは躊躇った。


信じてくれるだろうか。朝起きたら知らないうちに人間の姿になっていたということを。


今になってもまるでわけが分かっていない、信じてもらえるどころか馬鹿にされてもおかしくはない。


しかし、隠していても仕方ないし他に誤魔化せそうな理由も見つからないので、とりあえず正直に言ってみる。


「えっと‥‥私、元々竜の姿にだったんだけど‥‥、朝起きたら急にこんな格好になってて‥‥。」


自信なさげにラーミアが言うと、ロネリィは一瞬だけ目を見開き、ラーミアの方を見た。


それからまたラーミアの体をまじまじと見つめた。

ラーミアは少し顔を赤くし、体を強ばらせた。


葉を一枚、体に巻いていただけなので恥ずかしさを感じつつも、やはり怪しまれているのか‥‥と思い、少し顔を俯かせていると、


「なるほど‥‥、にわかに信じ難くもありますが‥‥。嘘を言っているようにも見えません、ボクは信じるであります。」

「えっ‥‥!?」


意外だった。

見たところかなり堅苦しそうな性格をしている少女があっさりと話を信じてくれた。

それどころかなんだかロネリィの目が心なしか輝いているようにも見える。


「ほ、ほんとに‥‥?ほんとに信じてくれるの‥‥?」

「はい、というより‥‥。」


ロネリィはずいっとラーミアに接近して続けた。


「ラーミア、ボクはあなたにとても興味が湧いてきました。もっとあなたのことが知りたいでありますな。」

「ロネリィ‥‥ちゃん。」


嬉しかった。誰からも魔物のような扱いを受けてきたこの体に興味を示してくれただけでも。


「さぁ、もうすぐボクが住む集落に着きますが‥‥、まずは服でありますな。そんな格好で集落に行けばボクまで変質者みたいな扱いを受けるであります。それはごめんであります。」


言うとロネリィは、一際生い茂った茂みに向けて手をかざす。


すると、生い茂っていた茂みが次第にかき分けられ、道が出来上がった。


「わ、すごい‥‥!」

「我々エルフ族はこのように自然をある程度操る力を持つであります。それゆえ、こうして住処のカモフラージュが出来るであります。」


得意げにロネリィが言うと、かき分けられた茂みの間をふわふわと進んでいった。

ラーミアもそれに続いた。


~~~~~~~~~~


着いた先はロネリィの家だった。

どうやらエルフ族の集落から少し外れた場所にあったようだ。


ラーミアはロネリィから服を貰った。

服の真ん中で白と黒で分けられた変わった服だった。ワンピースのような服で、下半身の衣服や靴は貰わなかった。

ズボンやスカートを履くと尻尾が邪魔だし、あえて靴を貰わなかったのは、元々が竜なので裸足の方が慣れているだろうというロネリィの気遣いだった。


ラーミアは母親以外からこんなに親切にされたのは初めてのことだったので、とても嬉しかった。

なんだかロネリィに母親のような温もりを感じた。


一通りの準備を終え、ラーミアはエルフ族の集落に案内された。


「ここが我々の集落であります。我々はここを『エルフィリア』と呼んでいるであります。」


エルフィリアと呼ばれるその集落には、建築物のようなものは存在しなかった。

その代わりにツリーハウスや、茂みに囲まれたような住処がところどころに存在していた。


先程説明された、エルフ族に備わる力を使って、自然を利用した造りが主流のようだ。


ラーミアが興味津々で辺りを見回していると、ロネリィがラーミアの方に寄ってきて耳打ちした。


「先に言っておくであります。ボクはラーミアのことをある程度は信用しましたが、他の仲間からもそう上手く信じられるとは思いません。あまりはしゃぎすぎないように‥‥。」

「あ‥‥う、うん、分かった。」


ラーミアは今度は申し訳なさげに辺りを見回した。


すると、こちらに慌ただしく駆け寄ってくる男を見つけた。どうやらここの住人のようだ。

その男は必死の形相でまくし立てた。


「ロネリィ様!!随分と遅いお帰りで‥‥!ん?隣にいるのは何者‥‥?い、いや!今はそれどころではありません!!」


男はラーミアに目もくれず、ロネリィに言い寄った。どうやらその焦りようから見てかなりの大事のようだ。

念のため、ラーミアは口を挟まないようにする。


「フシル、どうしましたかそんなに慌てて。‥‥!、まさか集落に何か異常が?」


フシルと呼ばれた男はまだ落ち着きを取り戻していない様子でロネリィに言った。


「え、えぇ‥‥!我が集落に侵入者です!!数は二名‥‥!現在、兵士が応戦中です!!」


途端にロネリィの顔が一瞬引きつった。


「まさか‥‥、エルフ族の力がないと容易に侵入できないはずなのに‥‥。何者ですか?」

「それが‥‥どうやらある程度我々の集落の位置を割り出したあと、森の一部を強引に切り倒して来たようです‥‥!種族はおそらく人間‥‥!!」


今度はラーミアの顔が引きつった。

もしかして自分を追い掛けてここを嗅ぎつけてしまったのでは‥‥。


「と、とにかく早く!こちらです!!」


エルフ族の男、フシルは振り返り、翅を使って飛び出した。


「ラーミア、行きましょう。念のため、着いてきてください。ボクの傍を離れないで‥‥!」


言うとロネリィも翅を使い、フシルの後を追うように飛び出した。


「あっ‥‥!ま、待って‥‥!」


凄まじいスピードだ。今までふわふわ浮いていたのが嘘のように。


ラーミアは慣れない足で走り、二人の後を追いかけた。

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