Forever
それは、深い森の奥にひっそりとある湖の様だった。
澄み切った湖面には、いくつも様々な色の光が灯っている。
──あれは一体何だろう?
どうやら私は遙か上空から覗き込んでいるみたいで、視界一面が黒々とした森でその真ん中に光る真円であろう水面だけが映っていた。
もう少し近付きたいと思った途端、まるでカメラのズームの如く、湖面が近付いてくる。
全くの無風であるらしく、水面は静まり返り、さざ波の一つも立っていない。周囲を取り囲んでいる黒々とした樹々達も、ピクリとも動くものかと決め込んでいる様で、葉擦れの囁きも枝のきしむ音も聞こえてこない。
そこにあるのは、ただひたすらに静謐な空間。私自身も少しの音を立ててなるものかと息を凝らす。
──いや、待てよ? ひょっとしたら、ただ単に音の無い映像しか見れないのかもしれない。
そんな事をふと思った時だった。
凛とした澄んだ音が微かに私の耳に飛び込んできた。
ますます好奇心を刺激された私は、もっと近付いてみたくなった。そうして視界全てが湖だけになった時私の下降が唐突に終わってしまった。私がいくら願っても、手足を動かしてみようと、ピクリとも下がらないし、視点も同様に動かなかった。
諦めて湖面を凝視してみると、色とりどりの光は大小様々な大きさの花の様だった。不思議なことに、そこに緑は見えない。つまり光る花だけが湖面を埋め尽くしているのだ。
一つ一つの花は、蕾から大きく開いているものまであるようだった。その一つ一つが優しい光を発している。決してまばゆい光ではない。ほんのりと光るその光は、他の光を妨げることなくただただ優しくその身を照らしている。
──まるでパステル画の様なこの光景をいつまでも眺めていたい。私の中の何かをこの光は満たしてくれるようだった。
とても満たされた気持ちで眺めていた私の耳に、先程聴こえてきた澄んだ音色が響いた。透明なその音色は反響することなく、それでも耳に心地好く残る音だった。まるで慶びを表している様だと思ったら、先程にはなかった光が一つ増えているではないか。
──嗚呼、これは誕生の音なのだ!
幸せな気分で眺めている私の耳に、たった今聴いた音色とは違う重い音色が響いた。何処までも静けさを伴ったその音色はやはり反響することなく、それでも心にいつまでも残る音だった。まるで哀しみを表している様だと思ったら、先程まで優しく照らしていた光が一つ消えているではないか。
──嗚呼、嗚呼。これは別離の音なのだ!
そこかしこで、慶びの、そして哀しみの音が響く。
そこかしこで、光が一つ増え、一つ消えていく。
命の営みは続いていく。
慶びと哀しみは決して切り離す事は出来ない。
それでもこの光景は何処までも優しく、ただただひたすらに優しくて。
──現実に帰ってきた今も、私を優しく癒してくれるのだ。
Special thanks Queen
MとFが安らかであります様に。




