459列車 言いたい放題
私は学校から貰ったパンフレットを見ていた。見ながら考えていることは光のことだった。仮に光が岩槻に進学した場合、家から通うというのは当然のことながら困難だ。学校が案内してくれる、もしくは指定した寮に入る必要がある。
「何見てるの。」
何も考えていなさそうなナガシィが話しかけてきた。
「これよ。」
そう言い、寮のページを指さした。
「寮かぁ・・・。岩槻に行くことになったらそう言うところに済まなきゃいけないからね。」
「・・・。」
ちゃんと分かってるじゃん。そんなことを思っていたが、
「でも、どうして。学校が指定したところに入るんだろうから。別にそんなの見なくても良いんじゃない。」
やっぱり、そっちまでは分かってないんだ・・・。
「引っ越しよ。引っ越し。進学になれば、学校が寮を案内してくれるのかもしれないけど、そこに入る準備は必要でしょ。」
「引っ越し業者に頼むんだから、別に僕らは何にもしなくても・・・。」
「もちろん、業者に頼むわよ。ただ、業者に頼むにしてもなんにしてもちゃんと調べとかないとダメでしょ。こっちだって光が持って雲のまとめたりしなきゃいけないんだから。」
「怒んなくたっていいじゃん・・・。」
そう言いながら、ナガシィはちょっとすねた。
「ごめん。でも、業者に頼むにも早くしないと。光が向こうに行くのはモロに引っ越しシーズンなんだからね。」
「そうか。そうだね。」
ようやっと理解したみたいだ。ナガシィって本当に人から話聞いてる時はちんぷんかんぷんのようだから二つ返事しかしないからなぁ。そう言うところ私はかなり疲れる・・・けど、もう慣れた。
ナガシィは私の右隣に来て、見ているパンフレットをのぞき込む。
「金町・・・。寮って常磐緩行のほうにいっぱいあるね。」
寮それぞれの最寄りの駅で多く出ているのは金町という駅だ。それはナガシィの言うとおり常磐緩行線に存在する駅で、上野かららほど近いところにある。途中東京メトロ千代田線・日暮里を経由していく必要があるが、たいしたことではない。
「金町って常磐線に駅無かったよなぁ。」
「そうね。常磐緩行だけだったわね。」
「光に会いに行くには面倒くさいね・・・。お金別にかかるし・・・。」
「今はそういうこと話さなくていいから。」
「・・・。」
「引っ越しで持ってくものは今からだいたい絞り込んでおかないとね。」
私はナガシィにも聞こえるように言った。ここから話が変わるからね。
「服はまず持ってかないとダメでしょ。」
私が持ってくものをメモに書き留めていると、
「自転車は持ってかないの。」
ナガシィが言う。
「自転車って・・・。自転車は向こうで買えばいいでしょ。こっちからわざわざ持ってくの。」
「持ってった方がいいんじゃないの。」
「・・・。」
私はちょっと考えた。どっちが安いんだろう。買った方がいいのか、持ってった方がいいのか・・・。ほんのちょっと走るだけなら安物でもいいんだろうけど、光は免許持ってるわけじゃないしなぁ・・・。
「それは金額見て考えよう。どっちが安くなるかわかんないし。」
「安くって・・・。別に気にしなくても・・・。」
「ナガシィ。」
私は隣にいるナガシィの左耳をつかみ、
「ウチはねぇ、家計厳しいの。生活費、貯金、お小遣い全部ナガシィが稼いだお金でなんとかやりくりしてるのよ。そりゃ、私達の貯蓄もあるけど、それはなるべく使わないようにしてるの。分かる。ちょっとはそう言うところ気にしなさい。」
「痛いなぁ・・・。何するのさ。」
上では光が勉強している。ちょっとうるさかったかな。そんなことを気にしながらもナガシィと話すのは楽しい・・・。
「痛かった・・・。」
「もう・・・。つねんないでよ。」
「フフフ。ごめん。」
「フン。・・・今回だけだからね。」
(・・・そっか・・・。光は高校合格したら東京行っちゃうんだ・・・。)




