458列車 梓萌+ワン
「いやぁ・・・。おとといは歳も考えずに楽しんだよ。」
そう言い、私はスマホで撮った写真を梓に見せた。
「列車の運転台の中よね、これ。どうやって撮ったのよ。」
「米原に鉄道技術研究所の施設があっておとといはちょうど一般公開日だったのよ。」
梓の頭の上にはたくさんのはてなマークができている感じだ。
「良いよなぁ・・・。僕も行きたかったなぁ・・・。」
「ナガシィは仕事だったでしょ。」
「・・・そうだけどさぁ・・・。うーん。休み希望出しとけば良かったかなぁ・・・。」
「・・・。」
「ナガシィ君連れて行けなかったんだ・・・。残念だったね・・・。」
「残念じゃないよ。残念すぎるから。」
ナガシィは体を起こすと、
「米原の実験施設にあるWIN350、STAR21、300Xが間近で見れるチャンスだったんだよ。なかなか間近で見れるものじゃないんだから。」
そろそろ止めておかないとなぁ。
「ナガシィ・・・。梓分かってないから。」
「・・・ごめんね。話題について行けなくて。」
「あっ、こちらこそごめん。」
「・・・陽斗君たち連れてっても良かったんじゃない。」
そう萌が言う。
「ああ。連れてっても良かったかもしれないけどね・・・。陽君今反抗期だから「行くかよ、クソババア」とか言いそう。」
「反抗期かぁ・・・。陽斗君今何歳だっけ。」
「陽君今年で16ね。高1だし。ハァ・・・。昔はママっ子だったんだけどなぁ・・・。今なんかクソババアよ。クソババア。」
「・・・アドバイスできないわね。」
「光も智萌も反抗期無いもんね。」
「反抗期がないとは言い切れないんじゃない。陽君だって今発祥よ。遅い反抗期が来るかもしれないわね。」
梓がそう言うと、私は頭の中でそれを想像した。光が反抗期になったときかぁ・・・。
「うるせぇんだよ。ババア。」
「そんな光はヤダ。」
「萌、何想像したの。」
「あっ、変な想像したから何かのもう。ナガシィも梓も何か飲むよね。」
「別にそこまで気遣わなくても・・・。」
ナガシィがそう言ったので、ちょっとくすぐって「飲み物出した方が良いんじゃない」と言わせておく。
「もう、気を遣わなくて良いのは私の時だけだって。」
「は・・・はぁい・・・。」
「ナガシィ君。萌ちゃんのおもちゃにされてない。」
梓がナガシィに話しかける声を聞きながら、私は冷蔵庫を開いた。あるのはジュースと牛乳かぁ・・・。お酒はないわよ。私達お酒あっても飲まないから。
「梓はお酒で良いわよね。」
「えっ・・・。お酒。」
「・・・アレ、梓ちゃんにお酒出して良いの。鳥峨家から梓ちゃん禁酒してるって聞いたけど。ていうか家お酒あったっけ。」
お酒が家にないのも知ってるし、梓にお酒出すのが御法度なのも知ってるわよ。
「ちょっと待ってナガシィ君。えっ、大希からなんて聞いてるの。」
梓は慌てている。そりゃお酒1杯も飲みきらないうちにベロベロになっちゃう人だからなぁ。もちろん、1杯飲みきらないうちにベロベロになる分には誰も慌てないだろう。そこまでお酒が弱い人だって1億もいれば普通にいるはずだからな。問題は酔った後だ。飲むと記憶はきれいさっぱりなくなる上に、飲ませないともっと飲ませろといろいろするらしいから・・・。
「んっ。もっと飲ませてくれたって良いじゃんって言いながら服脱ぐって。」
「大希ッ・・・。帰ったら覚えてろっ。」
あっ、言っちゃった・・・。梓は顔を真っ赤にしながら、自分の家の方向を見ている。
「ナガシィ、人のえっちぃ話するんじゃないの。しかも本人の前で。」
「・・・マズかった。」
(意識無い・・・。)
「エッチなら後でいくらでもつきあうわよ。明日ナガシィお休みでしょ。」
「そうだけど・・・。して良いの。」
「アラフォーの体にはナガシィも興味ない。」
「・・・。」
どう思ってるのかな・・・。
3人の話はまだまだ続く。




