446列車 ベール
東京駅から上野駅に向かう京浜東北線の車内からはビル群が見える。数多くのビルが建ち並ぶ中を縫うように走って行く。神田、秋葉原、御徒町と停車し、上野駅に到着。上野駅で下車した。
「まもなく7番線に10時02分発上野東京ライン東海道線直通、普通小田原行きが到着いたします。列車は4つドア15両です。」
通路を歩いているとそのようなアナウンスが耳に入る。大阪圏を走る新快速も12両編成が最大だ。それをしのぐ編成が走っている。しかも、電光掲示板を見れば一発で分かることなのだが、表示が出ているほとんどの列車は4つドア15両の表示が出ている。たまに見る10両編成の表示が珍しく感じるほどだ。
「学校ってこの近くなんだよね。」
ウチは亜美にそう聞いた。
「そうよ。時間内から列車見るのは説明会終わってからね。」
「いや、別にそれはいいんだけど・・・。」
今まで見たことない列車なら京浜東北線の中からも見ることができた。家に置いてある本でしか見たことのないJR東日本の列車がたくさん走っていた。目を引くのはやはり新幹線・・・では無く大量に敷かれた線路を走る通勤電車の群れだろう。関西から来た人にとって目が行くのは2階建てのグリーン車を連結した普通列車の存在だろう。あんなの関西のどこを見ても走ってないからな。
「・・・短い10両編成で到着します。」
(10両が短いって・・・。)
東京って本当にすごいところだな。J編成単体でやってくる高槻から快速が短いとは言っていられないな・・・。
学校は上野駅前にあった。10階建てぐらいになる学校もまた初めて見る。
「驚いてんじゃないわよ。東京なんだから。」
亜美はそう言いながら、係員のいる方へとすたすた歩いて行く。そんなこと言われても・・・。
「説明会にご参加の方ですか。」
と聞かれた。見るからにウチらよりちょっとだけ年上なだけだ。在校生かな。
「あっ、はい。」
「では、あちらで受付をお済ませください。後は係の者が説明会会場までご案内しますので、指示に従ってください。」
「はい・・・。」
受付を済ませるとゲストカードを渡された。それを持って、説明会会場に入る。ずらりと並んだ机には整然と説明会を受けに来た人たちが並んでいる。その中には亜美の姿もある。
「光ちゃん、こっち、こっち。」
ただ説明会に来ている人のほとんどは男だな・・・。亜美の洒落た服が普段以上に浮いている。
10時30分を少し過ぎたぐらいに全体の説明に入った。学校のこと、どういう教育をするのか簡単にそう言うことをいってくれた。ウチも亜美もそれに真剣な眼差しを向け聞き入った。全体の説明が終わると教員によるツアー方式で学校内を回った。
「こちらが普段在校生の方が授業を受けている教室になります。」
「へぇ。」
教室には普段見る机が並んでいるが、よく見る黒板がない。黒板無いけど授業はどうしてるんだろう。そんな心配もわいてきた。いや、心配すること無いと思うんだけど。
体育館などを回って通されたのは・・・、
「こちらが鉄道シミュレーター室です。こちらでは本物の鉄道運行に即した形での実習が可能となっております。」
鉄道高校だったという名残なのだろうか。教員の説明にも力が入っているように感じる。シミュレーターは運転台が再現されている。ワンハンドルマスコン、速度計、圧力計。いろんなものがずらりと並ぶ運転台は本物そのままだ。
それに実入り言っていたが、ウチは首を横に振った。見入るのはかってだけど、ここに来るのはこれやる為じゃないからだ。
学校内を回り終わると全体説明を受けた部屋に戻ってきた。終わり際、
「皆さん。本日は岩槻高校の学校説明会にご参加いただきまして誠にありがとうございます。皆さんが当校を一進路として考えていただけましたら、幸いでございます。」
そう言い、学校内を案内してくれた教員は頭を下げた。会場は一人から始まった拍手が部屋全体へと広がって行っていた。
学校の外に出てくると、ウチは振り返った。そこには志望校である岩槻高校が見える。
「どう光ちゃん。今日ので行きたい気は更に高まったかしら。」
「そうだね。高まったどころじゃないよ。」
「良かったわ。本気で鉄道員目指すならそうで無きゃね。でも、本題はここに入ることじゃないって言うのはしっかり頭に入れておきなさい。ここに来るのはあくまで手段でしかないんだから。」
「手段ね・・・。」
「そう、手段よ。」
「・・・。」
「さて、まだお昼だしどうする。ここら辺で済ますなら、食べに行きましょう。」
「ああ・・・。ウチあんまりお金持ってきてないから。」
「ああ、そうなの。一緒に食べるなら私がお金出すわよ。」
「ええ。悪いよ。」
「悪いなんて思わなくてもいいの。」
この後上野駅で昼食を済ませ、東京から「のぞみ231号」で京都に戻り、守山へと帰った。




