445列車 ひかりが「のぞみ」で行く
ウチは京都で「のぞみ」を待った。京都には夏の強い日差しが照りつけ、肌を焼いていく。待合室から出て数分も経っていないのに、汗がじわりじわりと出てきている。
んっ、光なんだから「ひかり」に乗らないのかって。そんなギャグは東海道新幹線の「ひかり」が「ひぞみ」ぐらいに発展しないと無いな。あっ、「ひぞみ」って言うのは「のぞみ」に劣らない走りをする(停車駅が「のぞみ」並みに少ない)「ひかり」のこと。俗称だから知らなくても問題ない。
「新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく12番線に7時26分発「のぞみ106号」東京行きが到着いたします。」
と言うアナウンスが流れた。これが今回東京駅まで乗っていく新幹線だ。新大阪方面に白いライトが見え、アナウンスが終了すると列車接近を告げる「プルルルルル」という音に変わる。
「12番線ホームドアから離れてください。列車停車いたしますとホームドアが開きます。3号車付近のお客様柵から離れてください。列車接近しています。離れてください。」
駅員の注意喚起ぐらい聞いて欲しいもんだ。一人のおかげで他の1322人が迷惑することは本当に腹が立つ。
入ってきた車両はN700A。今となっては体制派のN700Sの陰に隠れがちになってきているなぁ・・・。来たのがN700Aって事は全部の席にコンセントはないのかぁ・・・。まっ、窓際だから関係ないけど。
列車が止まり、ホームドアが開くと車両のドアが開く。京都で降りる乗客数人うちが乗る扉から降り、次にウチが並ぶ列が車両の中に吸い込まれ始める。ウチが車内に入るとすぐに開いている扉の反対側に亜美が立っているのが見えた。話しかけようとしたが、すぐ後ろにも車内に入ろうとしている人が要るから、ここで立ち止まるのはやめておこう。いったん車内に入り、自分の席に荷物を置いてから、また乗り込んだデッキに戻った。
「おはよう光ちゃん。遅れずに来たわね。」
「まぁ、遅れる心配はしてなかったよ。ウチは土日も早起きできるから。」
「ふぅん・・・。私は9号車にいるけど、「106号」のグリーン券を所持しない旅客のグリーン車の通り抜け・見学は禁止だから、来ないように。」
あっ、そうなんだ・・・。グリーン車なんて乗らないからなぁ・・・。へぇ、そんなことになってるんだ。たぶん、グリーン車にただ乗りするマナーの悪い以前のがいるからだろうな。本当かどうか分からないけど、正規でグリーン車に乗ってたら席開けろとか言われたっていう話を見たことがあるし・・・。
「じゃあね。また東京駅で会いましょう。」
そう言うと亜美は11号車のほうへと消えていった。ウチもついて行こうかなと思ったけど、たった今亜美からグリーン車に来るなと言われたばかりだしな上に、N700Aのグリーン車は見たことあるからやめておくことにしよう。
自分の席に戻るといつからか寝ていらしく「のぞみ106号」は豊橋駅を通過するところだった。
浜名湖を高速で通過し、普段新幹線を降りるためにしか使わない浜松駅を通り過ぎる。高速を維持したまま天竜川橋梁を通過。掛川の手前で東海道本線を併走し、走っている313系をごぼう抜きする。
そういえば、ウチは東海道新幹線の浜松から向こうは中学校の修学旅行で乗って以来だなぁ。そんなことを思いながら外を見ていたが、またウチを睡魔が襲ってきた。次に目が覚めると列車は富士の近くを走っていた。富士川橋梁を渡る頃になってくると富士山が見えてくる・・・。と言っても今日の富士山はてっぺんが雲で隠れて見えない。見えているのは裾のだけだ・・・。あたりは晴れているのに、残念。
「のぞみ106号」は9時43分定刻で東京駅に到着した。東京駅で再び亜美と合流する。
「ここからどうするの。」
ウチは亜美に聞いた。
「ここから上野に行くわ。学校は上野駅前だから。」
「それホームページで知った時は驚いたよ。」
本当ビックリしたんだよなぁ。学校だから何か文京区にありそうな気がしてたんだよなぁ・・・。何で文京区かっていうと文字からのイメージだけだ。
ウチらは新幹線乗り換え改札口に行き、在来線ホーム京浜東北線・山手線ホームへと上がった。どちらにもホームドアが付けられているが、山手線側は黄緑色。京浜東北線は青色のラインが入るドアとなっている。山手線はE235系がちょうどドアを閉めて出発する時だったが、京浜東北線はE233系が今入ってきたところだ。
「東京は列車待たなくてもいいっていうけどさ、逃した時はなんともいえない気持ちになるのよね・・・。」
亜美は独り言を言った。
「へぇ・・・。」
でも、聞こえるようにいったって事はウチに共感して欲しいって事だったのかな。
ウチらは京浜東北線に乗り上野駅へと向かった。上野で下車し、学校へと向かった。
一方その頃、
「列車まだ・・・。」
僕は跨線橋の天井近くの壁に張り付いている忍者を見ながら萌に聞いた。ここは関西本線柘植駅・・・。
「草津線から関西線への接続悪いの忘れてたわね・・・。」
萌はちらっと僕を見ると、
「ナガシィの旅貯金から新幹線代出したのは謝ったでしょ。許してよ。」
「それはいいんだけどさ・・・。萌、この先和歌山線乗る気・・・。」
「ああ、嫌・・・。」
「別に萌と一緒だから3時間なんてあっという間なんだろうけど、何度も通しで乗る路線じゃ無いと思うんだよね。」
「・・・。」
「大都市近郊区間内だから、どういうルートでいっても一筆書きなら問題ないんだしさ、桜井線で高田とかまわりながら、おおさか東線経由で新大阪行ってそれで湖西線経由で野洲に戻ればいいでしょ。」
「そうしたい。」
「僕はそうしたい。」
「じゃあ、そうしますか・・・。」




