444列車 知る為
「ただいま。」
そう言いながら、戻ってきた。玄関先ではお母さんと梓お母さんが立ち話をしているのが見える。
「あっ、お帰り。光。」
「久しぶり、光君。」
その後梓お母さんは「見ないうちに大きくなったね。」と続けた。そんなに背が伸びた感覚無いんだけどなぁ・・・。ウチとしては未だに150cmを超えない身長どうにかしたいんだけどなぁ・・・。
「こんにちは。梓お母さん。」
そう言うと、ウチは梓お母さんとお母さんのわきを通り抜けて、家の中に入った。後ろでは会話の弾むお母さんたちの声が聞こえてくる。
「えっと、どこまで話したっけ・・・。あっ、そうそう思い出した。今度、家族で白浜のアドベンチャーワールドに行くことにしたの。久しぶりにパンダ見てこようと思ってね。」
「へぇ、いいなぁ・・・。私もナガシィほったらかして白浜遊びに行ってこようかな。」
「そんなことしたら、ナガシィ君泣くわよ。「どうして連れてってくれなかったのさ」って。」
「いいじゃん。ナガシィだって一人で鉄道旅よくするんだし。私だって本当は連れて行って欲しいのよ。近場で行ったら城崎温泉とか。」
「城崎かぁ・・・。」
「梓、大希君との新婚旅行で城崎行ってたでしょ。」
「うん、いったわ。でも、大希に体いっぱい弄られたぐらいしか重い出ないかな・・・。」
「さらっと酷いこと言うね。」
「冗談よ。弄られたのは本当だけど、いろいろ楽しかったし。」
「弄られたことが楽しかった。」
「勝手に思い出を改悪するな。」
「フフフ。」
「新婚旅行だったら萌のほうが新婚旅行らしいところまでいってるじゃない。」
「稚内かぁ・・・。懐かしいなぁ・・・。あれ以来一度も稚内には行かなかったけど。って、もう話し始めて30分経つじゃん。どうする梓。中入る。」
梓お母さん結構近いところに住んでるし、お母さんと同じで仕事もしてないみたいだからよくあって話しているけど、話題って言うのは本当につきないものなのだなぁ・・・。
階段を上がり、自分の部屋に入る。すると智萌がウチの机のイスに座っているのが見えた。
「智萌。」
「あっ、光お帰り。」
「あっ、お帰りじゃないでしょ。人の部屋で何してたのさ。」
「ああ・・・。ちょっと問題集を・・・。」
ああ。それでおおかた察しが付いた。ウチがやった学校の問題集丸写ししてたな・・・。そんなことしても力にはならないとはよく言ってるけど、全く改めようとはしないんだな・・・。
「・・・違うからね。光の解いた問題集を丸写ししようなんてこれっぽっちもしてないんだからね。ただちょっと参考にしようと思っただけで、丸写ししようとはしてないからね。本当に丸写ししてないからね。丸写しは・・・。」
「智萌。・・・もうバレてるから言い訳するのはやめようか。」
「はい・・・。お願いだから怖い顔しないで。」
「ったく・・・。」
智萌は問題集と筆記用具を片付けて、自分の部屋へと戻る準備をする。
「あっ、そういえば光。さっき亜美ちゃんからLINE来てたよ。」
「亜美から。」
「うん。光はいないよってLINE送ったら、帰ってきた後でもいいから連絡ちょうだいって言ってたよ。」
「分かった・・・。」
そう返事はしたが、亜美からウチに連絡って何か重要なことあったかな・・・。ちょっとだけ考えてみたが、亜美に聞いたほうが早そうだな。ウチは引き出しの中に・・・机の家に置きっ放しになっているタブレットを手に取った。ロール状になったタブレットを広げて、LINEを開いた。
ふと何を話していたのかがウチの目に入った。まぁ、そんなに変なこと話してないからいいか・・・。と言うか・・・亜美智萌の返し1回目で返しているのがウチじゃないって分かったなぁ・・・。「書き方で分かるわ。」との返事が返ってきている。
「姉さんから聞いたよ。何。」
と送った。少し時間が経つと通知音が鳴った。
「光ちゃん、今度、岩槻のオープンスクールがあるわ。行く?(私としては行っとくことを勧めるわ)」
と返ってきた。
「オープンスクールかぁ・・・。行っとこうかな。」
「行くなら、早めに決めろ。オープンスクールは予約不要だけど、その後の学校説明会は予約が要るから。一応URL送っとくわ。」
すぐにURLが送られてくる。
とは言うけど、これって学校説明会とかは全部東京でやるんだよなぁ・・・。東京って事はそこまで新幹線で行かないとダメかぁ・・・。あっ、それにお母さんも行った方がいいよなぁ。特に学校説明会のほうは・・・。
「・・・話さなきゃ始まらないよね。」
ウチはお母さんのところに行ってみたが、お母さんはまだ梓お母さんと話の真っ最中だった・・・。会話に入りづらいから夜にするか・・・。




