438列車 まずない
僕は前に並べられているご飯を見た。その後にも絵を見る。萌はニコニコ笑っているけど、前に置いてあるご飯をごまかすことにはなってないよ・・・。
「エヘヘヘ。許してね。」
僕と目線が合うとすかさずそう言った。
「・・・許してねって・・・。」
「許してね。」
「・・・分かったよ、今回だけだよ。いただきます。」
そう言い、僕はおかれたご飯を食べ始めた。萌の手料理はおいしいんだよねぇ・・・。
「そういえば・・・今日は光も手伝ったんだよね。光が作ったのってどれなの。」
並べられた料理を見回しながら、聞いた。
「ほうれん草の卵とじ。まずいって事は無いから安心して。私も食べたから。」
「ふぅん・・・。」
食べてみた。・・・うーん。
「ちょっと微妙・・・。」
「・・・微妙かぁ・・・。でも、私が作ってるのと同じ作り方したんだけどなぁ。やっぱり慣れてないからかな。」
「まぁ、おいしいし、これはこれでいいよ。」
僕はご飯を口に運ぶ。光って今まで料理作ったことなかったよなぁ・・・。初めてにしては結構頑張ったほうかな。そう考えながら、ちらっと萌を見ると何か言いたそうな表情が目に入る。
「なぁに。」
「あっ、分かった。」
「萌のことちょっとは分かるよ。」
「えっとねぇ、今度ゴールデンウィークに実家に帰るでしょ。」
「うん、まぁそうね。ゴールデンウィークには帰らないけど。」
「それでね、帰省する時はレヴォちゃんでかえって欲しいんだよ。今回というかここしばらく「ひかり」の切符取れないからさ。」
「・・・な・・・何で。」
「「何で」じゃない。お正月に元日乗り放題切符で旅したでしょ。それにその後に「ひかり」で帰省もしたでしょ。そのせいでしばらく新幹線に回せるお金がないのよ。これから向こう1年は電車で旅するのはやめて欲しいのよ。家計のためにもね。」
「・・・家計のためにも・・・。」
「ナガシィ、私は別にレヴォちゃん運転してって頼んでるわけじゃないわよ。運転したくないなら、私が運転するしさ。・・・あっ、それだけじゃ満足できないなら、私でもいいのよ。久しぶりに。・・・まっ、私を食べるかどうかはおいといてナガシィ、オ・ネ・ガ・イ。」
「・・・分かったよ。今回だけだからね。」
「ありがとう。」
ああ、また「今回だけ」って言っちゃった・・・。そう言いつつ百恵の言うことは結構聞いてるんだけどね。萌も僕のことよく分かってるなぁ・・・。
「・・・。」
「んっ。」
「今日出たら明日からお休みなんだよね2日間。」
「うん。」
萌はちらっと近くに下がっているカレンダーを見た。そのカレンダーには日付の隣に白抜きの記号と黒塗りの記号が書かれている。今日の日付の隣には黒塗りの記号が入っている。そして、明日の日付にはただの横棒が入り、明後日と明明後日には休の字が書かれている。
「久しぶりの連休よね。休み希望出したりした。」
「してないよ。って、本題。明日お昼に萌のこと・・・。」
「・・・はいはい。いいよ。だから、それ以上その話はしない。でも、珍しいね。ナガシィからそういうこと言うって。」
「いいでしょ。僕だって男なんだし。」
「そうね・・・。そうよね。あっ、でもこの歳になっちゃった私でもいいの。。」
「さすがにお婆ちゃんとかになったら考えるけどね・・・。」
「・・・大希君みたいなこと言っちゃって。」
「ハハハ。」
「・・・早く食べなよ。出ないと明日の私も亡くなっちゃうわよ。」
「あっ、そうだね。」
まずない萌とのやりとりでした。




