433列車 打ち明け
しばらくすると買い物からお父さんとお母さんが帰ってきた。
「ふぅ・・・。ナガシィ、ありがとう。」
「はいはい・・・。」
お父さんはそう言うとさっさと奥の自分たちの部屋に消えていった。お父さん今日仕事なんだろうなぁ・・・。
「光。」
「んっ。」
「これ台所に持って行ってくれないかな。」
そう言い、お母さんは玄関に置かれたエコバッグを指さした。中には食材はたくさん入っている。野菜、卵、お豆腐、牛乳・・・他いろいろ・・・。相当重そうだ。
「あっ、うん。」
ウチはエコバッグを持ち上げると、
「あっ、お母さん、相談したいことがあるんだけど。」
「相談・・・進路の話だったりするのかな・・・。」
「うん、ああ。お父さんも・・・。」
「分かったわ。ちょっと待っててね。」
そう言うとお母さんも奥の部屋に消えていった。しばらくするとパジャマに着替えたお父さんと一緒に部屋から出てきた。
「もう、着替えてる時に入ってこなくてもいいじゃん。」
「次の休みはナガシィのわがままにもつきあってあげるから、それでゆ・る・し・て・ね。」
「・・・分かったよ。ところで、相談したい事ってなんなの、光。」
「次高校生の光が相談したい事って言ったら、あれだけでしょ。」
お母さん、いろいろ代弁してくれるなぁ・・・。
「光、おいで。」
お母さんはそう言うと、お父さんの背中を押してリビングに入った。それに続いてウチもリビングに入った。
ウチがイスに座るのを見てから、
「進路ねぇ・・・。光はどこに行くつもりなの。」
お父さんがそう聞いてきた。間髪入れずに聞いてくるところを見るとお父さんはウチの相談事をさっさと終わらせたいらしい。まぁ、今日の夜仕事に出なきゃいけないなら、早く寝たいだろうしなぁ・・・。
「うん・・・それなんだけど・・・。」
「・・・。」
言いづらい・・・。東京に行くって言いづらいなぁ・・・。だが、そんなウチを見てもどっちも答えをせかそうとはしない。ただただ、ウチが言うのを待っている。
「・・・ウチ、東京の高校に行きたい。」
「東京ねぇ。」
「東京かぁ。」
お父さんとお母さんはそう言いながら顔を見合わせた。それよりもウチはその反応の薄さの方が怖いのだけど・・・。自分の子供が滋賀県から東京に行こうというのにそんなに薄い反応でいいのだろうか。
「岩槻高校って言うんだ。」
「岩槻かぁ・・・。鉄道高校でしょ。」
お父さんはそう言った。
「えっ。」
「行きたいなら、行ってらっしゃい。別に反対とかしないし、お金はどうにかするし。」
お母さんがお父さんに続けていった。
「まっ、そんな気はしてたしね。」
「行ってきなよ。光の夢でしょ。」
「あっ、ありがとう。でも、どうして・・・。」
気になるところだ。ウチだったこんなに簡単にオーケイがもらえるとは思えなかったからだ。
「だって、光には夢かなえてもらいたいものね。」
「・・・僕見ながら言わないでくれるかな・・・。」
「それよりも、お母さんは娘の方が心配だわ・・・。ちゃんと考えてるのかしら。」
「智萌もちゃんと考えてると思うよ。」
ウチはそう言ったけど、後ろのソファーでゲームしながら寝転がっている姿を見るとそれも怪しくなってくる。




