368列車 洒落た服の女の子
(お母さん、怒ってるかなぁ・・・。)
そう思いながら、自転車を降りた。あたりはだんだんと暗くなり始めているころだ。えっ、さっきもらったのはどこに行ったのかって。ちょっとお腹にしまっているだけだ。
「た・・・ただいま・・・。」
恐る恐る玄関のドアを開いた。
「わっ、光。」
ちょうどお父さんが出ていく時だったらしい。ああ、てことは・・・。
「お帰り、光。」
やっぱり、お母さんお父さんを見送るのは欠かさないんだよなぁ・・・。
「光、卒業おめでとう。まだ言ってなかったね。」
そう言ってくれた。ていうか、お父さんは今日も仕事だった。帰ってきたのはウチらが卒業式に参加しているとき、その後ずっとお昼寝していた。いや、仕事の関係上そうなるのは仕方がない。
「ありがとう。」
「お父さん、そろそろ行かないと。」
「うん、行ってくるね。」
そういいお父さんは家を出た。それから少し経った後お母さんが晩御飯を持たせるの忘れたといって、ウチに追わせるのはこの後すぐである。
「ところで、光。5時には帰ってきなさいって言ったわよね、私。」
「ご・・・ごめんなさい。」
「はぁ、これは本当に今日だけだからね。次からは気をつけなさいよ。」
それで許してもらえたのかな・・・。なんかそれに拍子抜けしそうだ。どうやら許してもらえたみたいだし、ほっとしてウチは自分の部屋に行った。部屋は2階にある。
「なになに。光もたまにはお母さんに反抗してみたくなった。」
智萌・・・。
「違うって・・・。」
「ふぅん。じゃあそのお腹に隠してるものはなぁに。」
ギクッ・・・。
「えっ、何で。」
「わかりやすいもん。多分お母さんも気づいてるんじゃない。誰にもらったとかそういうことははっきりさせとかないと、いろいろと後で大変なことになるわよ。」
そういうと智萌は内に顔を近づけて小さい声で、
「だってそれ、光のライバルから貰ったんでしょ。」
「えっ、どうしてそれ・・・。」
「私に隠し事はできないと思いなさい。って言いたいところだけど、どうやら私の勘は当たったみたいね。だって光シャツをインしてなかったでしょ。」
そんなところでわかるんだ・・・。観察力すごいなぁ・・・。
「あの・・・これはお母さんには内緒で・・・。」
「無理っ。それは私たちがよく分かってるでしょ。」
「・・・だよねぇ・・・。」
「でも話す気はないのね。」
「・・・。」
何でそこまで見透かしたようにわかるかなぁ・・・。話せない事情っていうのはウチには無いんだけど・・・。主にあっちが話してほしくないって言ってることだし・・・。ウチからベラベラしゃべっちゃうのもなぁ・・・。
「話すのは早くなるか、遅いかだけの話だよ。それでも今は黙ってる。」
「今はね・・・。」
「そう。」
智萌はそう言って自分の部屋に入っていった。ウチもすぐに自分の部屋に入った。お腹のところに忍ばせてたものは既にばれてたとはなぁ・・・。ああいう所、お母さんの血をよく受け継いでいると思う。
(亜美、もうバレそうなんですけど・・・。)
守山駅。JR西日本が運転する無料特急新快速はこの駅にも停車する。光ちゃんの家に行くには最寄であるから、これはとても助かっている。駅のアナウンスが流れ、東海道線の米原方に目を向けるとそれは来た。来た電車は229系・・・。新快速としては7代目火・・・違う7代目だ。
223系は製造から30年以上の月日が流れているものもある。これまで機器更新や車体更新で切り抜けてきたが、そろそろ日常的に130キロで走る新快速運用に就かせるには老いすぎてしまったようである。今まで、新快速といえば223系であったが、ついにそれにも世代交代の嵐が来たのだ。
229系は223系の老朽置き換え用の車両。つい最近、基本8両編成のE編成と4両付属のO編成が網干所属で投入された。先頭部は225系、227系、323系、325系で採用された安全装置を車両先頭部に配置、またJ西仕様の全電動0.5M方式を採用している。車内にはLCDをこれまでのドア付近天井からドア上千鳥配置に変更している。パンタグラフはシングルアーム式で、モハ228形0番台、モハ228形500番台には予備パンタを搭載し万が一の故障にも対応している。そして、225系譲りの絶壁な顔と先頭の転落防止幌はそのまま受け継がれた。
「運がいいわね・・・。」
その時私はこういったが、この後の運の悪さは予想だにしなかった。
鉄分についてはフィクションだということで大目に見てください。お願いします。




