429列車 大阪での一悶着
ウチは久しぶりに大阪駅に来た。いつも自分が持ち歩いているカメラをもってきていないが、亜美から貰ったタブレット端末だけはもっている。久しぶりに亜美と会う約束をしている。
「光ちゃん。」
その声にウチは顔を上げた。
「亜美。」
「久しぶりね。」
「うん、久しぶり。」
今日あったのはお正月の報告会とでも言うのだろうか・・・。キラとは報告会をやったが亜美とは報告会してなかったしなぁ・・・。あっ、今日キラは家の都合でこれていない。それにしても・・・。
「9・10番乗り場なんか人多いけど、今日何か来るかな。」
ウチは亜美にそう聞いてみた。新快速を降りた時からあの人盛りが気になるのだ。あの場所にいる人はほとんどがカメラを手にしている人たちだ。大きく手を伸ばして、今か今かと来る列車を待ちわびている。あの光景からして珍しい車両が大阪駅にやってくるのは確定している。
「・・・。」
亜美は少し考えてから、
「「瑞風」じゃない。あれだけ人がいるんだもん。」
「ああ、タイミング悪いなぁ・・・。カメラもってないよ・・・。」
「よくある話ねぇ・・・。」
鉄ちゃんあるある・・・と言うかカメラマンあるあるかな・・・。珍しいカットって自分が気を抜いている時によく訪れるって言うの。
しばらく待っていると9・10番線では数多くのフラッシュが光った。おいおい、運行中の列車にフラッシュ撮影はダメだぞ・・・。まぁ、アレが示すのは11番線にでも「瑞風」が入線したと言うことだ。
「キハ87系・・・。一度でいいから乗ってみたいわね。」
「亜美は乗ったことないの、「瑞風」。」
「私は別に超豪華列車に興味は無いわ。「瑞風」は違ったと思ったけど、「四季島」は最低でも平服で過ごさなきゃ行けないからね。旅を楽しむ割に服装が窮屈だわ・・・。」
「・・・平服って・・・。これじゃダメなの。」
ウチは今自分が着ている服を指しながら、そう聞いた。
「ああ、恥かかないためにも言っとくわ。平服って普段着って意味じゃないから。今の光ちゃんで言う平服は学生服のことだから。学生服で列車の中で過ごしたいと思う。私は思わないわよ。」
亜美の言ってた「服装が窮屈」ってそういう意味か・・・。確かに、学校でもないところで学生服で過ごすって事はしたくはないなぁ・・・。下手したら修学旅行よりも窮屈なんじゃ・・・。
「そういえば、「四季島」って上野でリムジンサービスあったよねぇ。」
「あるわよ。大丈夫よ、光ちゃん。私たちで手の届く様な場所ではないから。95万円払わなきゃ乗れない列車は時間とお金に余裕のある御爺様と御婆様のためのものなのだから。」
亜美はそう言った。
でも、そういう亜美だって東北・北海道新幹線や北陸新幹線に乗った時は「グランクラス」に乗ってるし・・・。「グランクラス」じゃないとしてもグリーン車には乗っているし・・・。亜美って大きい家に住んでいるし・・・。お金に余裕があるって言うのは亜美にも当てはまることじゃないかな。
「「瑞風」のことはほっといて、私たちは家に行きましょう。」
「あっ、うん。」
亜美に促され、ウチらは改札口へ向かっていった。
亜美の家に着いた。
(相変わらず大きい家・・・。)
「光ちゃん、早く。」
そう呼ばれ、ウチは亜美の家に入った。
「お帰りなさいませ、お嬢様。いらっしゃいませ、永島光様。」
「・・・お邪魔します・・・。」
本当に邪魔してる気分だ・・・。出迎えをする人がメイド服着てるんだもん。ウチのお父さんの実家にも世話係みたいな人はいるけど、メイド服は着てないよ。
「・・・ええ・・・。瑞西・・・。」
「お帰りなさい、亜美・・・。」
小さい声だ。ふと顔を上げるとメイド服を着ている人の後ろに亜美にそっくりな人が出てきた。美しい白い服に身を包んだ女性・・・。誰かな・・・。
「あんた・・・。」




