428列車 「グランクラス」
1月3日。私たちの旅行も今日で終了する。終わりを告げる列車に乗るのは「はつかり18号」東京行きである。札幌の発車は9時48分。途中の停車駅は新函館北斗、新青森、八戸、盛岡、仙台、大宮、上野と最速達便に引けを取らない俊足ぶりを発揮する列車だ。しかし、所要時間は最速達からは遅く5時間16分(最速4時間43分)。これは青函トンネルを含む在来線との供用区間で、減速運転をすることと盛岡で秋田新幹線「こまち18号」を連結するために発生する差である。本当なら、最速タイムで走る「はつかり34号」に乗りたいところであるが、「はつかり34号」で行くと東京駅では最終の新大阪行き「のぞみ265号」に間に合わない。リニアも22時00分品川発の「ふじ267号」に間に合うが、名古屋到着は22時50分。8分後に出発する「のぞみ265号」に間に合わせるのはかなり厳しい。そういうこともあり、今回青函トンネルの通過は260キロで通過することは諦めている。
「お嬢様。寒くないですか。」
瑞西がそう聞いてきた。
「私は大丈夫よ。ありがとう、瑞西。」
そう言うと私は12番線の方を見た。12番線の在来線側はクリアガラスで仕切られており、ガラスの向こう側では在来線の札幌駅が見える。手前のホームでは733系が止まっている。4号車に指定席uシートを連結しているからおそらく快速「エアポート」だったのだろう。しかし、「エアポート」はすぐに札幌駅を離れ、その先の車両も見えるようになる。その隣には萌黄色の先頭部をもった789系0番台が止まっている。旭川からの「ライラック」だな・・・。
「まもなく11番線に9時48分発「はつかり18号」が到着いたします。この列車は全部の車両が指定席です。「グランクラス」は10号車です。グリーン車は9号車です。」
そのアナウンスがホームに流れた。小樽方面からは白いヘッドライトを付けた常磐グリーンの車両が入ってきている。E5系に似たロングノーズのこの車両はE10系。やがて大きいブレーキ音を立てて、止まった。
「ポーン、ポーン。」
列車のドアが開くと警告音とともに黄色のホームドアが開く。車体の番号を見るとE1014-6となっている。
「ご乗車ありがとうございます。」
10号車のドアから乗り込むとアテンダントがそう挨拶する。「グランクラス」には専属アテンダントがおり、このように出迎えてくれるのだ。ああ、アテンダントサービスがない列車もかなり設定されているので、「グランクラス」で威張りたい人は高い料金をJRに落として欲しい。
「本日もよろしくお願いします。」
瑞西はアテンダントにそう声をかけた。
「こちらこそよろしくお願いいたします。どうぞ「はつかり号」の快適なひとときをお楽しみください。ご利用ありがとうございます。」
返しも秀逸だ。
「グランクラス」の車内に入ると白い大きな座席が18席並んでいる。3列の席が整然と並ぶ社内は普通席やグリーン席とも違う。それを出口から入った時から放っているのだが・・・見慣れすぎたせいかそんな感じは一切抱かない。Y○Tubeとかで投稿するとそういうコメント多いのだけどなぁ・・・。
私は一番手前の窓側の席に座る。
「お嬢様、お荷物を預かります。」
「そう。お願い。」
瑞西にいい荷物を渡すと、上にある荷物棚に私たちの荷物を入れてくれた。荷物棚はグリーン車の開放型とは違い、それぞれの席様に扉付きの荷物棚がある。こういうところは飛行機そのものだ。
9時48分、「はつかり18号」は札幌駅から離れ始める。発車後しばらくするとアテンダントが軽食をもってきてくれた。私が頼んだのは和食。瑞西にもってきてくれたものは洋食だ。
「お嬢様は和食がお好きですね。」
「日本人よ。サンドイッチに済ませるなんて邪道よ。」
「・・・。」
「まぁ、食べたければ食べていいわ。さすがにそこまで外道じゃないもの。」
「はい・・・。」
「瑞西、今度鉄道で行く時は四国にしましょう。」
「また、鉄道で行かれるのですか。関西からでしたら、高速道路を使って行かれた方が便利ではありませんか。」
「高速で行くことをするのは車好きのやる事よ。鉄道好きに高速で移動するという選択は最初から無いと言うことを知りなさい。あなたも勉強が足りないようね。」
(私は鉄道が好きなわけじゃないんだけど・・・。)
「申し訳ありません。」
「別に、謝る必要は無いわ。あなたが鉄道好きじゃないのは知っているから安心なさい。・・・うん、おいしい・・・。」
この軽食、少ないのは残念だなぁ・・・。まっ、足りない分は札幌で買った駅弁食べて補おう。




